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ダライ・ラマ法王84歳の誕生日におけるチベット亡命政権内閣の声明

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2019年7月6日

ダライ・ラマ法王84歳の祝賀式典で、内閣の声明を発表するロブサン・センゲ主席大臣(撮影:テンジン・ジグメ / 中央チベット政権)

本日、私たちは偉大なるダライ・ラマ法王14世の84歳の誕生日を祝してここに集まりました。チベットの精神的最高指導者であるダライ・ラマ法王は、慈悲の仏である聖観自在菩薩の化身であり、平和と思いやりの象徴として世界中の人々から愛されています。

この喜ばしい吉祥なる機会に、私は内閣ならびにチベット内外のチベット人を代表して、法王を敬愛する世界中の何百万人もの人々とともに、衷心より感謝と崇敬の念を込めて、法王のご健康とご長寿をお祈り申し上げます。

法王は、1935年7月6日にチベットのアムドにあるタクツェル村の農家にお生まれになり、ラモ・ドンドゥブと名付けられました。まだ幼い2歳の時に偉大なるダライ・ラマ13世の転生者として認定され、5歳で正式に即位されました。24歳の時には仏教哲学博士の最高学位であるゲシェラランパの称号を取得されました。

1950年、内閣の要請により、法王はわずか16歳でチベットの政治的最高指導者としての責任を双肩に担われました。それは、中国人民解放軍が違法に東チベットを侵略したニュースがラサに流れ込んできたのと時を同じくしてのことでした。

法王は、国連や西洋諸国、その他の近隣諸国に支援を求めるとともに、チベット-中国間の調和的協調の道を模索されました。1954年から1955年にかけての北京訪問では、毛沢東主席をはじめとする中国の指導者たちにも会われました。しかしながら中国は、チベットの派遣団に強制的に調印させた17か条協定さえも順守せず、主要な条項をすべて破り、チベット人に対する弾圧をいっそう強めていきました。1959年、24歳の法王は、やむを得ずインドに亡命されました。

今年、亡命生活は60年目に入りました。亡命下において、チベット人の文化的アイデンティティは復興と存続を遂げ、中央チベット政権においては完全な民主化が確立されました。チベット内外のチベット人が強い精神力と団結力を持ち続け、チベットの大義が世界中で支持されています。チベット問題を対話で解決することを求める中道のアプローチもまた、世界中の多くの国々から広く支持されています。こうした画期的な成果はすべて、法王が不断の努力によって、あらゆる困難を乗り越えて成し遂げられたものです。

法王は常々、歴代ダライ・ラマとチベット人が歴史とカルマに基づいて特別な関係にあることを話してくださいます。こうしたダライ・ラマの系譜に、私たちチベット人は絶えず感謝しています。そしてチベット人にとって暗黒のこの時代に、ダライ・ラマ法王14世が私たちの力と希望の源となってくださっていることに、私たちは何よりも感謝しています。

法王は常々、ご自身のことを「一介の僧侶であり、70億の人間のひとりにすぎない」と語られます。そして、ひとりの人間としての使命を第一の使命として、あたたかな心や思いやり、世俗的な倫理観を培うことの大切さを説いてこられました。また法王は常々、優秀なプロフェッショナルになると同時に良き人間となるための教育プログラムを構築するよう提唱しておられます。

法王の構想と助言に基づき、今日、インドならびに37の国々において、心の教育に重きを置いた教育プログラムの導入が始まっています。21世紀がより平和な社会となるには、未来のリーダーである若い世代がこうした教育を受けることが大切であると法王は考えておられるのです。

法王は折にふれて、ナーランダー僧院の伝統から学んだ知識が、困難な状況の中で心の平和を保つうえでいかに役立ったかということを話してくださいます。そうしたご自身の経験を通して、法王は、ナーランダー僧院の伝統的叡智が今日の世界においても実際的かつ有用であることを確信しておられるのです。そして、ナーランダー僧院の伝統を「こころの科学」と呼んで、ご自身の使命として、古代インドの叡智であるナーランダー僧院の伝統の復興と促進に取り組んでおられます。

法王は、「21世紀を平和の世紀としなければならない」と繰り返し述べられ、異なる宗教間の調和を図るよう強く呼びかけてこられました。そして、すべての伝統宗教に人々を真の幸せに導く可能性があるとして、世界中のさまざまな宗教指導者に会われ、異なる宗教間の対話を重ねてこられました。先月には、法王の発案で、「イスラム教世界の多様性を称賛する会議」と題して初めて国家レベルの会議が開かれ、シーア派とスンニ派のリーダーがひとつの傘下に集いました。

こうした法王の取り組みを世界中の人々が認めていることは、1989年のノーベル平和賞をはじめ、150を超える数々の賞を受賞しておられることからも明らかです。

今年、中央チベット政権より法王にご長寿祈願法要を捧げた際、法王は、110歳を越えて生きていてくださることを約束してくださいました。私たちは、今年は法王の厄年でもあることを常に忘れないようにして、万一にも障りが生じないように、良い行ないをして良い業(カルマ)を作らねばなりません。そして、法王のアドバイスを常に忘れずに守らなければなりません。

この場をお借りして、私たちから法王に心からの感謝の念を捧げるとともに、法王ならびにチベット問題の解決に向けた取り組みを支援してくださる世界中の政府、団体、個人の皆様に御礼を申し上げたいと思います。

三宝の顕現である偉大なるダライ・ラマ法王14世が、幾劫も幾劫もこの世に留まられ、一切有情を利益してくださいますように。法王の願いがすべて叶いますように。そして一日も早くラサへ、チベットの人々のもとへお戻りになれる日が来ますように。


(翻訳:小池美和)