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ダライ・ラマの訪問目的は北京にあらず

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2001年4月3日
台北(台北タイムズ)

台湾を含む世界のメディアは、台湾で起こった全ての出来事を中国による脅迫のプリズムを通して観察することに慣れてしまっており、事実、ダライ・ラマの2回目の台湾訪問を注視するべくそのプリズムを利用している。メディアは、「中国の毒」としてダライ・ラマの意図しない役割に焦点を当てるのではなく、冷戦の名残りを捨て、惜しみなく人間としての価値を説くダライ・ラマにふさわしい尊敬の念を表す時がきたのである。

台湾と世界の両メディアは、ダライ・ラマの今回の台湾訪問がいかに中国を刺激し、チベットと中国のもろい関係がいっそう悪化するのでは、という想像による分析を巡らしている。しかし、ちょっとしたことで中国は刺激されることを忘れてはいけない。ジャーナリスト、学者や政治家が、ただ中国に神経を尖らしているというだけでダライ・ラマに僧侶をやめろというのは、確かに一般常識を超えている。

中国の敏感な面を過度に強調して、ダライ・ラマが台湾に送るメッセージや基本的人権の重要性をないがしろにしていることをメディアは心に止めておくべきだ。ノーベル平和賞受賞者ダライ・ラマは平和、社会的協調、そして思いやりを強く推進している。しかし彼のメッセージである基本的人権の価値が、中国の存続にとって脅威と見なされ、強力な政権に妨害していると発表するメディアの妄想が私たちを直撃する。

中国語メディアは、ダライ・ラマの台湾訪問を「母国」からの分離を狙う台湾とチベットの共謀合作の一部と装飾。中国推進派の学者と政治家の一部はこの訪問が台湾の国家利害関係を脅かすとさえ言い放った。 しかし中国側は、ダライ・ラマの活動を懸念する理由を持つ必要はない。ダライ・ラマは先日での台北での記者会見で、「私が、かつて今まで反中国的活動に携わったかどうか調査して下さい」と訴えた。先日の講演を聞いた人々は、ダライ・ラマが台湾の関心事になんの影響も与えていないと感じるであろう。各地から集まったおよそ3万人が講演「新世紀の倫理」に出席、宗教を持つ者、また無宗教の者も、この偉大な人の簡潔な言葉をいたく心に受けとめ、感化されて会場をあとにしたのである。台湾が現在困難に直面していることは周知のことである。しかし、会場に集まった人達(半数近くが仏教徒)がダライ・ラマの導きを必要としている。思慮分別ある学者が言うように、精神的救済はことがうまくいっていない時に必要とされるものなのである。

ジャーナリスト、学者や政治家が、ただ中国に神経を尖らしているというだけでダライ・ラマに僧侶をやめろというのは一般常識を超えている。もし政治家やメディアがもっと協調性のある社会を促進する役割を担うものであるとすれば 、誤った理由に敏感なはずである。彼ら自身の手がける政治を推進するために、ダライ・ラマの智恵を聞く機会を奪おうとしている。私たちがダライ・ラマのこの訪問に、正当で公平な報道をする潮時なのだ。

チェリン・ナムギャル
台北タイムズ経済記者