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ダライ・ラマ、世界の形成を生徒に促す

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2001年5月15日
シアトル・タイムズ

ポートランド発 − ダライ・ラマは、チベット民族の精神的指導者としての役割を果たすことに自己不信を抱くことがあると認めている。それでも、この世にいる限り他の人々に対して役立てることがあるかもしれないと、もっと平和な世界を作り出すために情熱と明るい励ましを差し延べられるかもしれないと考えている。

「私達には皆、貢献する潜在的な力があります」昨日の午後、彼は、オレゴンと南西のワシントンから来た7600人の高校生らに語った。「あなた達には新しい世界を創造する素晴らしい機会があるのです」

1時間以上にも亘る長い話の間、彼は繰り返し同じテーマに戻り、彼らの生活と学校に有害な影響を及ぼす、暴力の輪を断ち切ることを生徒らに力説した。

また、髪を染めたり、大きな鼻を整形しても内面的な助けにはならないと言い、外見にとらわれてはいけないと警告した。そして−生徒達が喜んだことに−仏教僧の中でも最高僧の彼は、自分の人間的な側面を豊富に見せた。大円形記念館の演台上で木製の椅子に心地よさそうに座ったまま、キャンディを口に放り込んで美味しそうに味わった。それから、キャンディのねばねばした中味と格闘しながらいたずらっぽい生徒のようににやりと笑った。

「これはとてもおいしいね−でも歯にくっついてしまうな」

ダライ・ラマの話は、「心の教育サミット」として主催者が予定したもので、今日で終了する3日間のポートランド訪問での主要イベントのひとつだった。ダライ・ラマは1959年に祖国が中国に武力で制圧されて以来、インドで亡命生活を送っている。しかし、彼は人生の大半を各国を巡りながら過ごし、非暴力による紛争解決を主張した演説活動を行っている。1989年には、ノーベル平和賞を受賞した。

ダライ・ラマのメッセージは、学校が、銃を携帯した生徒の暴力行為に警戒しなければならない時代に鳴り響く。聴衆の中にはオレゴン州サーストン校の生徒35人がいた。同校では、1998年5月、キップ・キンケルの凶行により、彼の両親と2人の生徒が殺され、24人の生徒が負傷した。

「とてもいいメッセージだと思いました」サートン校のミーガン・カミングスはダライ・ラマの話の感想を言った。「みんな立ち止まって、物質的なものにとらわれすぎると人を傷つけることがあるということに気付かなければ」

ダライ・ラマは、オレゴン州のファースト・レディー、シャロン・キッツハーバーに紹介され、ユース・サミットは公共教育の州教育長によるサポートを得た。

しかし、このイベントは、一宗教的指導者の話を傾聴しに公立の生徒を送るのは不適切ではないかと考えるワシントンの一部の政治家から疑問視する声もあがっている。結果、私的な寄付者が受け入れられ、生徒がポートランドまで行くバス代をカバーした。

ある少女はクラスメートに銃を向ける者に対してどう反応したらいいのか知りたがった。

ダライ・ラマは、暴力行為はいつまでも記憶に留められるべきだが、そのあと加害者に対して許す気持ちを向けるべきだと語った。

しかし、誰かが銃を持って自分を殺そうとしたら、自分の銃で撃ち返すことは理にかなっていると言った。それでも、致命傷を与えかねない頭にではなく、足など別の部分に向けてであるが。

別の生徒は、僧によって4歳で精神的指導者として選ばれたダライ・ラマに、自分の高貴な役割に対して疑問を持ったことがあるかと尋ねた。

「時には、責任を果たすことができないのではないかと思うときがあります」ダライ・ラマは言った。「しかし、そんな思いにとらわれた時は、ポジティブなことを考えるようにしています」

ダライ・ラマの話が終わると、生徒達は立ち上がって歓声を送った。彼は、敬意を示す別れのしるしとして額に手を当て微笑むと、演台に垂れさがった黒いカーテンの奥へと姿を消した。