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シャンデリアの中の大蛇

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(2002年5月11日 インターナショナル・ヘラルド・トリビューン )

(カリフォルニア州バークレー) 先日、カリフォルニアの学生が中国人の同級生に、「民主主義を信じる共産党メンバーはいるか」と質問した。それに対して、その中国人同級生は「それは間違った質問だ」と答えた。彼曰く、正確な質問とは「共産主義を信じる共産党メンバーはいるか」である。

「共産主義を信じる共産党メンバーはいるか」・・・この 質問に対する回答は中国専門家全員にはよく知られたもので、それは「党は改革を行っている」という主張に発展したものである。アメリカ人社会科学者らは現在、共産党学校で民主主義と法律について講義を行っている。この学校は副会長のヒュー・ジンタオによって運営されている。ヒュー・ジンタオはつい先日、ホワイトハウスを訪れており、中国の江沢民氏の跡を継ぐ次の党総書記、国家主席候補と目されている人物である。

中国の学者の中には、欧米の民主主義の国々に滞在している者もおり、海外で政治改革に関するセミナーを開催したり、専門雑誌に調査結果を掲載したりしている。村選挙は、普遍的ではないが広く知られている。中国のイデオロギーの空虚な点は、中国人や外国人の間で頻繁に討議され、なぜ中国人の多くが宗教やカルトや迷信に救いを求めるのかを説明するものとしてしばしば使用されている。

先日、エリザベス・ローゼンタルがニューヨークタイムズ紙に掲載した改革討論に関する記事では、「(中国の)党の規則に真っ向から挑む改革はまだない」、「彼らは新しい道を探すことにかなり躍起になっている、しかし常に党が権力を牛耳っていく危険がある」(外交官の発言)、という2文が人目を引いた。

どの国でも、もし改革が討議され認可されたもので あれば(基本的制度と指導者が健全な状態で機能しているということを前提としての場合だが)、こうした「改革の変化」を専門とする学者たちはそうした改革をあざ笑っているだろう。また、西洋人学者の中には、中国共産党が自身の方針を変えるであろうと主張する者もいる。しかしハーバード大学や、コロンビア大学、バークレー大学で学ぶ中国人学生の多くは、こういった主張について残念そうに否定し、悪行を重ねる党に取って代わる実行可能な唯一のものは、「慈悲深い独裁者」であると語った。

これらの悲観的な見通しには、二つの正当な理由がある。一つは、近代中国の激変、暴力そして後進性。もう一つは、中国人には「民主主義の準備が整っていない」ということである。

この暗い見通しの悲劇は、共産党が常に警告している「不安定」や「混沌状態」に対してその責任が党自身にあるということにある。中国共産党は1949年以降、さらにさかのぼると毛沢東主義のもとその残虐な行為が発覚する何年も前から、政治を牛耳ってきた。しかし、中国共産党が消滅していれば、極めて敏感な質問がオープンになされているだろう。

その質問のほんのいくつかを挙げてみよう。天安門事件の終わり頃まで中国共産党総書記を務めた趙紫陽デモの学生達に対する深い同情を見せたために口を閉ざされ自宅監禁となったが、そのままでよいのか。 天安門事件は、「反革命的暴動」にとどまるのか。何百人といる民主党員全員は投獄されるべきなのか。台湾 政府が「独立」という単語を用いたとき、台湾は中国からの侵攻に脅かされなければならないのか。ダライ・ラマは「犯罪分裂者」で、宗教的自由を要求するチベット人は投獄と拷問の対象となるべきなのか。

中国は、昔のような全体主義的毛沢東主義国家とはほど遠いものになっている。しかし、プリンストン大学の ペリー・リンクの見事なイメージを借りれば、昔のように口から火を噴く龍ではなく、「シャンデリアの中の大蛇」である。大蛇と同じく、共産党はじっとしていて動かない。党は誰もがその存在を知っているものなのだが、何を引き起こそうとしているのかははっきりしない。

大蛇の継続的な無言のメッセージは「あなた方が決断しなさい」である。しばしば暗黙のうちに、そして時折前触れもなく大規模な暴動に発展するこの種の脅威は、改革に全く動じることはない。■