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カーラチャクラの合間 ダライ・ラマ 記者の質問に答える

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(2003年1月13日 ブッダガヤ)

1月12日午後、ブッダガヤの「カーラチャクラ・マイダン(カーラチャクラの行われる場所という意味)」でカーラチャクラの3日間にわたる準備段階の法話が始まった。世界中から10万人以上の信者がダライ・ラマの教えに出席し、13日の午後も続いた。ダライ・ラマは『三十七の菩薩の実践』と『菩提道灯論』について法話をした。

教えは、ブッダガヤにある様々な仏教寺院を代表する僧や尼僧による、パーリ語、サンスクリット、韓国語、日本語、ヴェトナム語、中国語での、仏教経典の読経から始まった。かなりの数にのぼる地元住民に、およそ2千人の外国人も、ダライ・ラマ法王の教えに出席した。法話の、ヒンドゥー語と英語への同時通訳は公式に用意された。また、他のいくつかの言葉への通訳もいくつかの海外グループによって準備された。

13日の午後の教えでダライ・ラマは「優婆塞戒(うばそくかい:ゲニェン・ドンパGye-nyey Donpa在家の人々への宗教的戒律)」を受けたいと望む在家の信者たちに授けた。この戒を受けた信者たちは、以下の五つの悪業を避けるか、自分で選んだそのうちのどれかを避けなければいけない。避けなければならない五つの悪行とは、「殺生(ソクチェSok-choye)」、「盗み(マジンパ・レンパMajenpay Lenpa)」、「邪淫(ロックェムLok-yem)」、「嘘(ツンTzun)」、そして「飲酒(チェンアラChang Ara)」である。

1月12日午後4時30分、ダライ・ラマはカーラチャクラ・マイダンでの教えを終えた後、マイトレーヤ・プロジェクトへと向かう直前に記者たちの質問に答えた。(以下参照)

—今日におけるテロリズムや戦争の危機についてどうお考えですか?


「20世紀初期は、20世紀後半や現在の21世紀と比較すると、暴力にとりまかれていました。21世紀では、あちらこちらでの幾つかの健康的とはいえない情勢がありますが、世界はより安全になって来ていると私は思います。私はそう感じています。そしてまた、あらゆる地域での平和への希求は、21世紀ではより強くなってきていると思います。過去には、愛国心やイデオロギーの名のもとに、数百万もの人々が彼等自身の命を犠牲にする用意をしていましたが、そのような考えはもうありません。テロリズムは、もちろん、最悪な種類の暴力です。これは、とてもひどいことです。私はいつも考えるのですが、対抗措置にはいくつかの段階があります。1つの段階では、私が思うに、早急な種類の措置等があり、これは部隊を派遣することなど、指導者たちが行うことです。これらは一時的で即時的な種類の措置です。長期的には、個人個人がそれぞれの内面に、より平和的で慈悲的な内面世界をつくらなければならないことが必須です。この確固たるものが、我々自身の家や身内の中に平和的で友好的な雰囲気をつくりだすことができ、このようにして社会にも広がります。また、教育機関もあります。私が思うに、知識や教育の一方で、我々は慈悲を培うためにもっと努力をしなくてはなりませんし、その慈悲を通じて、対話の意義、を学ぶべきです。このことは強化されなければいけないと思います。こう、私は感じています。時には、紛争を目の当たりにすると、即座に我々の心に湧いてくる種類の反応は、対話を通じてではなく、力によってこの問題を解決してしまおうというものです。しかしその一方で、人間的な基盤では、みんなが、その彼や彼女がどこに住んでいようとも、より平和的で慈悲的な世界を作り出す、いくらかの可能性を持っている、と私は思います。これは、長期的には、より効果的な取り組み方です」

—あなたは中国が自由化されたと言われました。どうしてそう思われますか?


「世界が変わるとともに中国も変化しています。まず最初に、全世界的に、コミュニストの全体主義政権は、北朝鮮、中国、ベトナム、そしてある意味でのキューバを除いて、ほとんど姿を消しました。この変化は人々の様々な平和活動によってもたらされました。核兵器の存在によってではないのです。同じように、今日の中国は20年まえと比べると大きく変化しました。中国ではいまだに法律での統治がないですし、言論や出版の自由もありません。中国の全メディアは政府によってコントロールされているので、これはもちろん不幸なことです。しかし以前に比べると、人々は指導者たちを茶店などで批判したりできます。30年前には、こういったこともできませんでした。ですから、変化の兆しはいくつかあらわれています。この変化は続いていくことでしょう。チベットの問題はどんな市民戦争や、宗教やイデオロギー、またその他の理由によって起きているのではなくて、チベット内における中国の存在、によって起きているのです。ですから、中国内での変化はチベットに直接影響を与えます。

常に明確にしているのですが、私は、過去の歴史とは関係なく、チベットの独立を求めていません。現在の状況下において、世界はより相互依存的になっています。私が台湾にいた時に、台湾独立を模索している数名の台湾人の政治家に、チベットについては私は独立を求めていないと伝えました。現状では、私が思うところ、経済と防衛の分野で、台湾はとても独自で、近い関係を中国本土と持つべきだと思います。ですから、現代世界の今では、完全な分離、または独立国家はそれほど今日的意味を持たないのです」