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カシャック(チベット亡命政権内閣)3月10日声明文 Statement of the Kashag

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(2003年3月10日)

本日、私はチベット国民によるラサでの平和的な蜂起の44年目を記念するにあたり、カシャック(内閣)を代表し、チベットの精神的、政治的な大義のために犠牲となった勇気ある多くの男女に対し感謝を捧げます。また、私は、チベット内において、抑圧に苦しむ勇気あるチベットの男女に、我々の連帯を誓うものです。

我々は、前述の43年前の出来事と、ネガティブ、ポジティブ両方の進展の評価を反映させ、第12期カシャックとしての初の3月10日を記念する声明を発表します。我々は、チベット問題解決に向けて、カシャックの政治的な手順の概略を述べたいと思います。チベット問題解決には、ダライ・ラマ法王猊下が提唱する中道政策に基づく対話による手法と、社会への呼びかけ、またチベットの地位の強化を通じて取り組むものです。

また、我々は、中国指導部との対話の開始についての希望と信条を表すものです。充分に考慮された声明は、カシャックの宣言書の本質を要約するもので、我々が考える限りにおいて、その声明は政治的にも歴史的にも重要であると言えます。従って、我々はチベット人がこの声明を真摯に受け止めると確信しています。

昨年の声明を繰り返す代わりに、私は昨年の進展とカシャックの将来に向けた、現在と長期的な計画の概略を述べたいと思います。2002年の年頭に、我々は中国上層部の一部との連絡手段を開くことに成功しました。その後の交渉により、我々はダライ・ラマ法王猊下の特使を中国に派遣することを提案し、その結果、昨年9月、代表団の北京とラサへの訪問が実現しました。

特使は、(中国領内)チベット行政関係者と中国指導部との情報交換の機会を得ました。また、1993年以来中断していた交渉の再開についての話し合いも行われました。これらの話し合いにより、我々は、今後の継続的な対話実現の可能性について前向きな意見をもつに至りました。今回の訪問は、チベット内外で暮らすチベット人に多くの刺激、期待、そして不安を抱かせました。また、多くの国際的なチベット支援グループから、(訪問についての)前向きな評価や支持を受けることができました。

私は、中道政策を支持する人々を信じ、またチベット3省をひとつの主体とする自治の獲得を目的として中国との交渉を実施すべきと信じます。私は、この機会を逃すべきでないと信じます。

もし、我々チベット人がこの機会を我々自身の行動により無駄にすることになれば、残念としかいいようがありません。私は、この確信をもとに、第4回亡命チベット人代表者議会において次のように発言しました。
「現在より、2003年6月までの間に、我々は、中国指導部との対話を実現させるために、前向きな姿勢を表すべきである」

この堅実な決定に関する多くの論争にもかかわらず、カシャックの提言は、チベット内外のチベット人や国際的なチベット支援グループから賛同が得られました。この姿勢についての、チベット議会とチベット社会からの支持により、過去6ヵ月間に中国指導部との関係には、何の障害もありませんでした。彼らの支持により、我々は将来の中国指導部との対話の進展への準備と希望を持つことができました。

6月のカシャックの期限について、多くの憶測がなされていますが、ここで私はすべての憶測が、事実に基づくものではなく、疑念から生じたものであると明言したいと思います。以前から私は、真実、非暴力、適正な民主主義は、現チベット亡命政権の不可侵の原則であると明確に述べて参りました。今後どのような方針をとるにせよ、この行動原則を裏切ることはありません。従って、皆さんは、亡命政府がこの3つの原則の違反についての疑念を完全に払拭していただけるはずです。

もしも、2003年6月までに、中国指導部との交渉実施を行わないと決定した場合、我々は、今後の方針や手段について再度検討しなければなりません。しかし、このことが、我々の中道政策の放棄を意味するものではありません。私は、メディアによる憶測の余地を残さないために、この立場を堅持するものです。

我々の姿勢が好戦的や敵対的でないのは、対話実現に向けた環境を作ることを目的としているからです。これは、中国への譲歩のために真実に背を向けることではありません。

ダライ・ラマ法王猊下の使節団がラサと北京から帰還した後でさえ、我々は人権侵害事件等の不当な中国の方針への批判をやめていないことはご記憶のことと思います。例えば、中国司法当局が、適正な法的手続きなしで、トゥルク・テンジン・デレクとロプサン・トントゥプへの死刑判決をくだし、ロプサン・トントゥプの死刑が執行された事件において、我々は、直接中国指導部に対し、非常に強硬な抗議を行いました。また、我々は、中国当局の行動に対し、大規模なキャンペーンを実施し、また国際メディアにおいて、中国政府の不法行為を訴えるための努力を行いました。

我々の支援者の一部は、このような行動について、対話実現に向けた環境に悪影響を及ぼすのではないかとの懸念を抱きました。彼らは、反対キャンペーンを一時中断するのが、賢明な選択であるとの提案をしました。しかし、我々は不正な行動を無視することはできないと決意しているため、このような提案は受入れませんでした。もしも、交渉によりチベット問題が解決され、我々がチベットに帰還したとしても、我々は不正な行為や政策に対して、平和的な手段での抗議を行うことでしょう。

これは、真実と非暴力の原則を支持する我々の基本的な倫理的な義務だからです。しかしながら、我々の批判と反対は、我々の手段が常に非暴力的手法であるように、常に親愛に基づくことが理由となります。我々の行動が、憎悪や怒りにより行われることは決してありません。また、暴力的手段によることもありません。これは、我々の真実と非暴力の原則の最も重要な理念だからです。

ほぼ55年に渡るチベット・中国問題は、政治的問題だけであったとはいえません。むしろ、これは、民族的な問題であると言えます。これは明白であるでしょう。我々の闘いは、民族対立ではありませんが、解決できない民族問題であるとは言えません

チベット民族は、歴史、言語、文学、宗教、科学、芸術などにおいて、特徴づけることができます。我々は、人類の繁栄に莫大な貢献をすることができる民族といえます。3000年にわたり、チベットは、特にインドと中国といった周辺国との強い関係を持ってきました。中国との関係については、多くの紆余曲折があり、戦争や、友好的な関係の時期もありました。それにもかかわらず、我々の長い歴史の多くは、中国とは相互に助け合う関係でした。特に、13世紀に成立した「チョヨンchoyon」(ラマと施主)との関係は、お互いに有益なものでした。

将来において、我々が本物の自治を獲得した場合、二つの民族が理解と友愛のもとに共存するために、チベット人は中国との良好な関係を心から育んでいくことでしょう。これは、ダライ・ラマ法王猊下の中道政策のビジョンであり、政治的な動機を越えた、人道的なコンセプトです。もしも、チベット人と中国国民がこのような関係を築けば、中華国民共和国憲法に記載された民族の平等な統一の実現に向けた大きな一歩になることでしょう。

異なる民族間での平等は、人口数や、経済規模、軍事力の違いにもかかわらず、それぞれの民族の叡智と感性を同等に認めることです。つまり、平等は、異なる民族間での協調の基礎です。言い換えれば、平等を基調としたチベットと中国の共存関係のための政治と経済の状態を作り出せれば、民族協調に大きな貢献となるでしょう。これは、中華人民共和国の平和と安定の強固な基礎がためにおおいに貢献することでしょう。この課程において。中国の多くの問題を解決し、また、世界の民族問題解決のための倫理的な指標を提供することとなるだろう。

ダライ・ラマ法王猊下の目標である単一の政治主体としてのチベット三省(ウー・ツァン、カム、アムド)の統一、もしくはチベット国民の統一は、ひとつの動機ですべての民族問題を解決することを意図しています。また、本物で継続的な安定を成し遂げるためにチベット人と中国人との共存を促すことを目的としています。カシャックは、これをチベットの将来に向けた不可欠な条件であると捉えています。これはもちろん、交渉の前提条件ではなく、我々の究極的な目標です。

中道政策の批判者が流布させている話は、交渉の成果は現在の「チベット自治区」だけにとどまり、他の中国領内のチベットは除外される、というものであります。しかし、これは事実無根であり、チベットの既定の重要項目を、乗っ取る狡猾な試みです。過去44年間の亡命期間に、ダライ・ラマ法王猊下とチベット亡命政権はチベット統合に向けた責任が一度も揺らいだことがありません。また、亡命チベット人代表者議会で異論なく賛同を得た決議により、これは我々の正式な政策です。

純粋な親愛に基づく動機は、憎悪、憎しみ、妬みがなく、他民族間での平等と共存のために不可欠な要素です。これにより、昨年のカシャックの声明は、中国へのこの精神の理解を求めることに強調を置いたものです。この点のみが我々の強さであることから、本日私は、改めて同じアピールを行うものです。真実の言葉において、ダライ・ラマ法王猊下は、1959年のインド到着直後に、仏教の三宝の慈悲に基づいて、共産中国のために祈りを捧げました。

悪魔的な幻想を持ちながら酒をあおり、
彼らは有害な行為を働き、彼ら自身と他の人々を破壊した
慈悲の行為に彼らの心が動かされるように、自然を愛する光を彼らに与えよ
残酷な民衆に、正義と有害な行為を見分けるために、叡智の目を与えよ

また、このような態度は、次の「真実の言葉」の祈願を成就するための大変重要なものとなります。

長い間、私の心が大切にしていた望み、
それはチベット全体の輝ける自由です
我が民が自然なる幸運を授けられますように
精神と政治の徳のどちらもあわせて、享受できますように

中国指導部自らが認めているように、1951年以来50年間にわたり、チベット人は、中国の共産革命とその後の改革に大きな貢献をしてきました。チベットの貢献が良かったのか悪かったのかは、問題ではありません。私がここで申し上げたいことは、近年の中国の歴史を形作る上で重要な役割を果たしたことです。

これは、チベット人の偉大さを推し量ることであり、チベット人は、さまざまな強大な障害や生命の危険を賭して、生活様式と文化、また文明の基礎である言語を保持してきました。ある面においては、チベット文明の保存と普及の努力は、過去の業績をも凌ぐものでした。また、民族意識の点に限って言えば、チベット内にとどまるチベット人が、亡命生活を送るチベット人よりも強い意識をもっていると言うことができます。ダライ・ラマ法王猊下の代表団がインドに帰国した際、チベット内の行政関係者等の能力と勇気また決意に感銘を受けたことが語られました。これは、我々の誇りと言えます。

将来のチベット・中国の交渉において、我々はチベット知識階級とチベット内の古い世代が、チベットの将来を決定する作業と中国中央政府との対話で大きな役割を果たすことを希望しています。さらに、チベットは自治権を持つ政治主体となるべきであり、チベット内の行政経験のあるチベット人は将来の政権において、指導的立場に就くべきです。これは、1992年に発表された、将来のチベットの政策と基本的な憲法の内容において、明言されていることですが、私は改めてここでも強調します。

チベットの歴史を見たとき、我々チベット人が党派的や宗派における内部紛争を起こしている間、我々は後退を被ってきました。そのため、協調は、我々の最も重要な必要条件であると言えます。私は昨年に続き、今年もこの点を述べたいと思います。チベット内のチベット人は、彼らの目的において確実に一つの意志を持っています。不幸なことに、自由世界で暮らす我々は、我々の苦闘において多くの異なる方向性を持っています。そのため、我々は、チベットの共通の利益が乗っ取られないようにすることを協調したいと思います。すべてのチベット人が情熱を一つの目的に集約できれば、中国指導部との無条件で有益な対話実現への障害はなくなるでしょう。

最後に、ダライ・ラマ法王猊下の長寿と、猊下の願いが自然に叶うようお祈り致します。
また、チベット内外に暮らすチベット人が再統一される日のために祈りを捧げます。