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「良心の囚人」の解放は歓迎

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2002年1月21日
アムネスティ・インターナショナル プレスリリース

「チベット人『良心の囚人』の釈放は歓迎だが、中国当局にはさらにすべきことがある」

アムネスティ・インターナショナルは、チベット人音楽家ンガワン・チョペルが昨日釈放されたのを歓迎したが、同時に中国当局に対し、チベットで投獄され基本的人権の侵害を受けている人全員を解放するよう、もう一歩踏み込んだ対応を促した。

この6年間、ンガワン・チョペル釈放のキャンペーンをしていた世界中のアムネスティ・インターナショナルの会員全てがこのニュースを歓迎した。
「しかし、チベットにいる他の良心の囚人と同様に、氏も最初から投獄されるべきではなかった」とアムネスティは述べた。

ンガワン・チョペルは、懲役18年の最初の6年半を務めた後に、医療的な理由から釈放され、治療のためにアメリカへ飛んだと報告されている。数名の中国人反体制派の者も釈放後すぐにアメリカへ飛び亡命したが、ンガワン・チョペルは、こうした方法で釈放された初のチベット人の「良心の囚人」である。

ンガワン・チョペルは受刑中に患った肺と肝臓の病気に苦しんでいると思われているが、現在は医療診断を受けている。チベットの刑務所は、その貧しい食事と劣悪な衛生環境が長期間にわたり多くの受刑者の健康に害を及ぼしていることで悪名高い。

「拷問や虐待がはびこる劣悪な留置環境により、チベットで投獄されている者全員の生活がこの上なく厳しいものになっている」とアムネスティ・インターナショナルは語った。

もう1人の政治犯、ンガワン・ロチュ、ラサ出身の28歳の仏教尼僧は昨年2月ドラプチ(ダプチ)刑務所で監禁中に死亡したと報告されているが、これは明らかに膵臓炎によるものである。非公式の報告では、ロチュは死亡した当日に入院しただけで、殴打やその他の拷問、ずさんな扱いもロチュの死亡に関係していた可能性もあるということを深刻に憂慮している。

「中国当局は直ちに無条件で良心の受刑者を全員釈放し、拷問の廃止と拘留や刑事裁判システム全体の環境改善に向けて緊急の措置をとるべきである」とアムネスティ・インターナショナルは述べた。

ンガワン・チョペルの略歴
ンガワン・チョペルは、伝統的なチベットの舞台芸術を専門とする音楽家である。インドのチベット亡命社会で育ち、1995年7月チベット音楽と舞踊のビデオドキュメンタリーを撮るためにチベットを訪れた。しかし、予定どおりにインドへ帰ってくることができず、後の非公式なレポートではンガワン・チョペルは逮捕され拘留されたと示唆していた。中国当局は1年後にンガワン・チョペルの拘留を確認しただけで、当時公式なラジオのレポートでは「スパイ活動」と「反革命活動」に関与したとして有罪となり、18年の懲役を受けたと発表された。

裁判は極秘に行われ、中国当局はこれらの「犯罪」に関わっているという証拠を一切提出することがなかったため、ただ表現の自由に対する自分の基本的人権を行使したために投獄されているとの深刻な懸念が持ち上がった。

数年にわたり嘆願が繰り返された結果、中国当局はついに2000年8月ンガワン・チョペルの母、ソナム・ディキに初めて刑務所にいる息子への訪問を許可した。彼女の話では、ンガワン・チョペルは「骨と皮だけ」で顔が黄色く、精神的にも弱っていたようだったという。ソナム・ディキはチョペル釈放への強力な支持者の1人であり、息子のこの事件を世論の目に向けておくために精力的に世界中でキャンペーンを行った。

チョペルの監禁後、ガーナ、フィンランド、チリ、アメリカを含む様々な国のアムネスティ・インターナショナルのメンバーが、他の非政府組織と共にキャンペーンを行った。これは、知名度の高い公人、例えば英国人シンガーソングライター、アニー・レノックスや多くの政治家、特にンガワン・チョペルがフルブライト奨学生として学んだアメリカの政治家等の注目を引いた。

ンガワン・チョペルは、懲役のほとんどをチベットのニャリ,ドラプチ(ダプチ),パオ・タモ刑務所で過ごしたが、母が訪問する直前に四川省の徳陽刑務所に移された。ンガワン・チョペルはアメリカで医療診断を行い必要な処置を受けた後にインドへ戻る予定である。