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「チベットにおける厳重監禁」イベントでの見解公演 (第29回 国連人権理事会のサイドイベントとして開催)

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2015年6月15日
見解 サラ・スウォール次官
民間人保護、民主主義、人権担当次官
ジュネーブ、スイス


 

はじめに


ハーパー大使、ご親切なご紹介を有り難うございます。私たちは、この第29回人権理事会のセッションの成果を願っています。そして、このイベントを主催してくださったヘルシンキ財団に感謝しています。私はここにいることを非常に嬉しく思います。

私は米国国務省で、民間人保護、民主主義と人権のための次官として働いています。私はまた、1997年に国務省内で設置された役職である、チベット問題特別調整官としてケリー長官により指名されました。

私たちは、世界中の人々と同じようにチベットの人々が、世界人権宣言に謳われている基本的自由を享受することができるべきであると信じています。人権に関する国務省の国家報告書は、中国が「中国の民族であるチベット人の公民権を縮減、あるいは他の手段によって、言論、宗教、団体、集会、運動の自由を含むチベットの宗教、文化、言語的遺産の厳しい弾圧に従事している」と指摘しています。ジュネーブのこの人権理事会の余白(サイドイベント)以外に、チベット人が直面している障害と課題を議論するのに適した場所はありません。

チベットの問題は、もちろん、中国の問題でもあります。中国は、米国にとって今日ここに示される多くの国々と同様に、重要な戦略的パートナーであり、私たちは第2次世界大戦終戦以来、世界の安定維持に貢献してきた国際的な規範、法律や慣行の輪への中国の参加とリーダーシップを歓迎しています。過去70年を振り返ってみると、鍵となる長期的な教訓の1つは抑圧的な国の代償とその虚弱さです。私たちは、中国が国際社会でますます重要な役割を果たすことを期待すると同時に、チベットの人々の人権を尊重し、国際公約を遵守することを期待しています。

人権理事会とチベット


長年にわたり、この理事会は、そのセッション、特別審査官の業績、および普遍的な定期審査プロセスを通し、この問題への注意を維持することによって、チベットの人権のための重要な支持者となってきました。

最近のセッションでは、カナダ、チェコ共和国、フランス、ドイツ、アイスランド、日本、ニュージーランド、ポーランド、スイス、イギリスを含む多くの国々が、チベット人の人権保護の国際的な義務を支持するためには、中国はより多くの進歩をしなければならないと主張しています。

2013年には、UPR過程で9カ国が中国のチベット問題に関する具体的な提言を行いました。これらの国は中国に対して、宗教の自由、マイノリティの権利、および国連職員のチベットへのアクセスを改善するよう求めました。しかしながら、中国政府は、12の勧告の内たった1つの勧告を受け入れただけでした。

人権問題の現状


米国は中国政府に対して、国際公約である人権と基本的自由の保護の遵守を一貫して促してきました。具体的には、嫌がらせ、拘留、あるいは平和的に自分たちの宗教を実践しようとする人々や意思表明、または法的救済を求める人々に対する虐待の終息です。私たちは、テンジン・デレック・リンポシェと他の『良心の囚人』の解放、およびドンドゥプ・ワンチェンが彼の家族と再会できるように中国当局に呼びかけています。

カナダ、イギリス、ドイツ、スウェーデンなど他の多くの国々は、人権に関する独自の年次報告書の中で、チベットにおける人権問題への関心を維持するために取り組んできました。私たちは、これらの努力を称賛し、他の国々にも同様の行動を促します。

残念ながら、中国の対応はチベット人の宗教の自由、表現、集会、連合、および運動に対する既に厳密な管理をさらに強化することでした。中国当局は、ダライ・ラマ法王を侮辱するための措置もとっています。

これは不幸であり、逆効果です。私は昨年のダラムサラ訪問中の自宅訪問を含め3度、ダライ・ラマと会談しました。私は、ダライ・ラマとチベット仏教徒の間に並外れて密接な精神的な繋がりがあることを見てきました。彼の意見は広くチベット社会の内部で反映され、私たちは彼がチベット地域における継続的な緊張状態に対処する上で、中国のために建設的なパートナーになれることを信じています。

チベットへのアクセス


すべての人々が、チベット高原の素晴らしい美しさと独特の文化、世界遺産を楽しむことができるようにするべきです。マックス・ボーカス米国駐中大使は、昨年のチベット訪問の際、クリーンエネルギーの開発、環境、湿地の保護への協力を楽しみにしていると述べました。私たちは、チベットにおける外国人観光促進のための中国の約束を歓迎します。インフラへの投資によってチベット高原にアクセスするための地理的な障壁はなくなりましたが、他の重要な障害は残ったままです。

チベット自治区(TAR)訪問を希望するすべての外国人は、各個人が最初に中国当局からの特別入国許可を取得しなければなりません。これは、中国の他省の旅行には必要とされていません。

外交官やジャーナリストもチベット訪問の際には、標準的な課題に直面しています。相互利益は、外交関係の基盤となるものです。しかしながら、中国の外交官やジャーナリストが、米国全体で自由に旅行する一方で、私たちの外交官やジャーナリストがチベットを旅行する際には同じアクセス権は与えられていません。過去4年間で、私たちの大使館や領事館によって行われたTAR訪問要求は35〜39回も拒否されました。

このアクセス制限は、米国市民にサービスを提供する私たちの能力にも悪影響を及ぼします。 2013年10月のバス衝突事故の緊急事態の際に、中国政府は領事的なアクセスを48時間以上も遅延しました。このバス衝突は、米国市民3人の死亡と数人に傷害をもたらしました。領事関係に関するウィーン条約と1981年の米中二国間の領事条約の下で、中国は領事的なアクセスを許可するように義務付けられています。私たちはその義務を遵守するよう、中国を強く求めます。

約40カ国からのジャーナリストを表する中国の外国人記者クラブは、中国のチベット地域は外国人ジャーナリストが立ち入り禁止地域であることを報告しています。中国の国内外のジャーナリストたちがビザ手続きの遅れを含め、彼らの仕事をする能力を妨げる制限に直面していることに対して、私たちは深い懸念を表します。私たちは、外国人ジャーナリストのための適時な、予測可能なビザや証明書発行のためのプロセス改善、そして、米国メディアのウェブサイトのブロックを解除し、チベットや他の地域でジャーナリストの制限の排除に最大限の努力を投じることを中国に強く求めます。

ボーカス大使が先月ラサを訪問することを許可されたことを喜ぶ一方で、私たちのアクセス制限についての私たちの懸念は残っており、チベットへのより広い外交的アクセスを求め続けます。私たちばかりがこの苛立ちを感じているのではなく、他の国にも同じような障害が起きていることを知っています。今日、私はあなた方にその懸念を共有することをお勧めします。

2012年、当時の人権高等弁務官ナビ・ピレイは、中国公式訪問のための特別記者クラブの要求に未処理のものが12もあったことを指摘しました。私の知る限りでは、未だにどれも付与されていません。 UPR過程で、中国は高等弁務官による訪問に合意しました。高等弁務官ザイドは、中国訪問の約束の一環としてチベットを訪問することを目指しています。私たちは、高等弁務官にチベット訪問を許可することともに、ウィーン条約の同意条約である領事的アクセスの遵守に対しての抵抗行為について再考慮することを求めます。

宗教の自由


チベットの素晴らしい遺産を楽しむ観光を奨励する中で、中国はこの遺産がチベット仏教の自由とその実践に密接に関連づけられていることを認めるべきです。しかし、中国は近年、チベットの人々の文化や宗教問題に対して、より独断的で制御的な役割を果たしてきました。

2015年3月には、宗教・信仰自由問題の特別報告者ハイナー・ビーリフェルドは、チベットの僧侶たちの転生を制御する中国の試みを非難しました。彼は「中国政府は制御をおこなうために、異なる小グループの間に亀裂を生じさせ、人々を対立させ、その関係を悪化させて宗教団体の自主性を破壊した」と主張しました。

この分析は、何世紀にも渡って継承されたチベット仏教のラマ僧の輪廻転生に基づいた制度に対しての、中国の更なる干渉を言及する米国国務省独自の国際宗教・自由に関する報告にも共鳴しました。非常に顕著な事例は、ゲンドゥン・チューキ・ニマはダライ・ラマからパンチェン・ラマ11世に任命された後、すぐに姿を消したことです。中国政府はそれ以来、彼の画像を禁止し、彼の所在についての質問への返答を拒否しています。

現在のダライ・ラマは、次世代のダライ・ラマが現れるのかどうか、そして現れるのであればそれは誰なのか、という問題は、チベット仏教のコミュニティ内で長年の伝統に従って解決されるべき問題であると述べました。彼は、中国政府が「輪廻転生の体系、特にダライ・ラマとパンチェン・ラマの転生に干渉することはすることは不適切である」と述べました。基本的で世界で認められている宗教の自由の権利は、次世代のダライ・ラマに関する決定を現在のダライ・ラマ、チベット仏教の指導者、およびチベットの人々が留保することを要求しています。

対話


基本的権利の行使のための平和的な道が存在しない場合には、人々は絶望します。米国、EU、ピレイ元高等弁務官は皆、中国政府が140人のチベット人たちを焼身抗議にまで導いた権利と自由の制限に本格的に取り組むことを求めてきました。

この悲劇は中国政府がダライ・ラマや彼の使臣と、前提条件なしに直接対話を再開する必要性を強調しています。私たちは、最後の対話からすでに5年以上経過していることを非常に懸念しています。このパネルの人々が議論している間に、現場の状況は悪化し続けます。

オバマ大統領は2014年2月にホワイトハウスにダライ・ラマを招待した際、新たな対話の利点を強調し、ダライ・ラマの「中道」アプローチへの支持を表明しました。ダライ・ラマは繰り返し、彼が独立を求めていないことを明らかにし、代わりに中国は中華人民共和国内で偽りのない自治を通じて、チベットの文化遺産の保全協力をしてほしいと考えています。私たちは、ダライ・ラマが誠実であり、平和と安定のために建設的なパートナーになることができると信じています。私たちは、中国にこの機会をつかむことを強く求めます。

結論


他の人種と同様に、チベット人は、彼らのユニークな、文化的、宗教的及び言語的遺産の管理者となる絶対的権利を持っています。彼らは干渉されることなく、それを平和的に尊厳とともに実行する権利を持っています。私はこの理事会のメンバーに、米国とともに中国政府に対してチベット人の異なる文化、アイデンティティ、および基本的人権を尊重するだけでなく、外交関係の国際的な協定、相互国へのアクセスを尊重する義務に準じた行動を奨励することを促します。

有り難うございました。


(翻訳:ガン・キー雪犬)