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1988年「五項目和平案」から「ストラスブール提案」へ

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チベット亡命政権情報・国際関係省発行「チベット入門」

1987年9月21日、米国議会の人権問題小委員会において、ダライ・ラマは「チベットに関する五項目和平案」を次のように提案した。

  1. チベット全土を平和地帯とすること。
  2. 民族としてのチベット人の存在を危うくする中国人の大量移住政策の放棄。
  3. チベット人の基本的人権と民主主義自由の尊重。
  4. チベットの環境の回復と保護。中国がチベットを核兵器製造及び核廃棄物処分の場所として使用することの禁止。
  5. 将来のチベットの地位、並びにチベット人と中国人の関係についての真摯な交渉の開始。

同年、10月17日、中国指導部はこの提案を拒否し、ダライ・ラマ自身と中国政府の溝を深めるものだとしてダライ・ラマを非難した。しかしこのような非礼な反応に対しても、ダライ・ラマはさらに誠実な努力を重ね、12月17日、チベットの立場を14ヶ条の覚書に詳述して中国政府に送付した。

翌88年6月15日、ストラスブールで開かれた欧州議会にて、ダライ・ラマは新たな提案を行った。[ストラスブール提案] 。これは先の「五項目和平案」において、交渉に関する最後の項目を修正したものである。

演説の内容は、ニューデリーの大使館を通して中国政府にあらかじめ伝えられていた。8月22日と29日の両日、ニューデリーのダライ・ラマ代表部は中国の代理大使と会談し、中国政府がさまざまな新聞声明を通して取り上げてきた懸念事項について話し合った。亡命政府がとりわけ強調したのは、1979年にトウ小平がギャロ・トンドゥップにむけて語った、独立に関することでなければ何でも言ってよいという言葉の範囲を、ストラスブール提案が越えていない点だった。ストラスブール提案では、中国から分離・独立するという考えを捨て、中国と協調する意向が示されていた。

1988年9月21日、ニューデリーの中国大使館は、亡命政府の役人に、中国政府が亡命政府との会談を望んでいる、場所と日時はダライ・ラマが決めてくれてよい、と伝えてきた。

内閣(カシャック)はこの発表を歓迎し、9月23日に次のような声明を出した。

私たちの提案に対してこのような前向きの反応を示してくれたことは、中国がチベット問題に真剣に取り組む意向があることの表れだと受けとめたい。

10月25日、亡命政府はニューデリーの大使館経由で中国政府にコンタクトを取り、場所は利便性と中立性の高いジュネーブ、日程は翌89年1月でどうかと打診した。

11月上旬、中国統一戦線工作部の閻明復(えんめいふく)部長はギャロ・トンドゥップ氏に対し、ストラスブール提案にはいくつか見解の違いがあるが、それについては議論すれば解決できるかもしれないと語った。

ところが11月18日になって、中国政府はニューデリーの大使館を通し、会談に先だって次のような前提が必要であると伝えてきた。

  1. 中国政府は、場所と日程を公表した[チベット亡命政権の]やり方に賛成できない。最もふさわしい場所は北京である。
    ダライ・ラマの任命した6人の交渉代表団は、認めることができない。いずれも分裂活動にたずさわっている人物である。また、オランダ人弁護士の参加も認められない。これは国内問題である。
  2. 中国政府はダライ・ラマとの直接対話を望んでいる。ただし、ギャロ・トンドゥップのような信頼に足る人物なら、ダライ・ラマの代理として認めてもよい。
  3. ストラスブール提案は議論の出発点にはならない。会談を行う条件は、「祖国」の統一を受け入れることにある。

チベット亡命政権がこの通知に落胆したことは言うまでもない。以前、中国政府から受け取った公式通知とも公開声明とも、内容が異なっていた。

12月5日、チベット亡命政権はこれに応えて次のように述べた。

  1. 中国政府からの連絡では、会談の場所と日程はダライ・ラマに一任するという内容であったため、ダライ・ラマは誠意をもって、ジュネーブという場所と1989年1月という日程を選んで回答した。
  2. 中国政府はさまざまな機会をとおして、メディアおよびチベット亡命政権への通達によって、会談・交渉はダライ・ラマの任命する人物と行うつもりであると述べている。したがって、チベット政府はダライ・ラマの任命する代表団を中国が拒否する理由が理解できない。誰であろうと、ダライ・ラマには代理を任命する権限がある。また、[中国政府が参加を不適切とした]ファン・プラークは、代表団のメンバーではない。たんなる法律顧問である。
  3. 中国政府の言うように、代表団の顧問としてギャロ・トンドゥップを随行させることにする
  4. チベットの将来に関して公平かつ意味のある交渉を行うには、両国とも前提条件を持ち出すべきではないと考える。ストラスブール提案で提案されている内容は、今回の会談の下地として、きわめて妥当かつ現実的である。
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