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特別会議開催にあたって、チベット亡命政権内閣(カシャック)の声明

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(2008年11月17日 チベット亡命政権内閣(カシャック))

内閣閣僚議会議長をはじめ、みなさまに申し上げます。このたびのダライ・ラマ法王猊下は亡命チベット人憲章第59条の下に特別総会を招集なされました。本会議の開会にあたりまして、ご参列の司法関係のみなさま、内閣閣僚のみなさま、前内閣閣僚のみなさま、自主機構の責任者のみなさま、また現議員、前議員のみなさま、各居留区の代表者のみなさま、報道関係のみなさまに対しまして、亡命チベット内閣より表敬申し上げます。

まずはじめに、一切衆生の導師、地上の仏法の護持者、世界平和の導師、偉大なる大悲の体現者ダライ・ラマ法王猊下が非常に多くの理由をご考慮くださり、本日この第一回特別総会が招集すべき勅辞を賜りましたことを、チベット内外のすべてのチベット人を代表しここに無上なる慈悲と大恩に感謝申し上げます。同時に世界各地からご参集賜りました亡命チベット人民衆の代表者のみなさま方におかせられましては、本会議のために御足労賜りましたこと誠にありがたく、亡命チベット政権内閣を代表し篤く御礼申し上げます。また本会議に際しましては、チベット本土の多くの志のあるチベット人からも様々な形でご意見をお寄せいただきましたことをご報告申し上げると同時に、篤く御礼申し上げます。

議長ならびにみなさま、本日この発言の機会を頂戴し誠に有り難く存じます。

議長ならびにみなさま、本年3月以降、チベット本土に居住しているチベット人は、今日にいたるまで危機的状況に直面してきました。同時に亡命チベット政権がチベット人の要求を実現させる使命にも様々な困難や障害を抱えていることは、既にご存知の通りでしょうし、ここで申し上げるまでもありません。こうした危機的状況を迎えたいま、将来的に我々亡命チベット人がチベットの民衆の要求を実現させる使命を果たすためには、すべての人の意見を一つに結集し、それについて協力し合う必要があります。そのためには、民衆の意見を結集させ議論しなくてはなりませんし、また同時にそのために、このような特別総会を開催することは、時代の必要性にも合致しておりますし、歴史的に重要で有意義な一大事業であると思われます。このような重要な目的のある会議について、さまざまな誤解や批判がございました。そのすべてを申し上げるまでもありませんが、個人的に直接耳にしたことや書簡をお寄せ下さり、ご意見を賜りましたもののなかから、いくつかの点について簡単に言及しておきたいと思います。

今回の会議に際して、ある人は「〔先にそのような会議の開催を発表して〕第8回目会談での成果を見込んで、中華人民共和国に対して圧力をかけるための政治的手段の一つである」という話もありました。また、「これまでのチベット・中国の会談に成果がなかったことの責任回避、責任転嫁であろう」と言う人もいました。それ以外には「亡命チベット政権の現在政策からの政策変更の決議を誘導するものであろう」とか「亡命政府が現在とっている政策に対して民衆の支持を得るための招集だろう。だからこそ特別総会に参加する大部分の人間が亡命チベット政権官僚や政府関係者なのである」といった声もありました。しかし、これらは事実ではありませんし、ダライ・ラマ法王が言動の一致した民主主義の原則を尊重なされ会議の開催をご招集された御意向を無視するものではないかと思われます。

ダライ・ラマ法王の正しい指導のもとに運営している亡命チベット政権は、それがどのような活動であってもこれまで真実を重視し、裏で画策することもなく、すべてを公表し開かれた運営方法のみをとってまいりました。さらには、“圧力をかけるための政治的手段”といった類いのものをこれまで行なったことなど全くありませんし、未来においてもそのような手段を講じる予定など全くありません。

同様にチベット・中国間の協議に実質的な成果がもたらされていないことも、常に報道機関、議会、一般市民に対して、その都度その状況を公表してきましたし、その責任を感じしかるべき対策を講じて参りました。ですので、責任回避しなくてはいけないといったことなど全くないのです。

また特に基本的な政策変更が必要かどうかは、民衆のみなさまが何を要求なさり、その通りに民衆が決議すべきことであって、事前に亡命政府が決定し、それを議会に通すといったことはこれまでも行なったことはありません。また未来においてもそのようなことをする予定もまったくございません。もし政策変更が必要であるのならば、議会を通じて議決されることを望むのであって、それをなすことを強要するものではありません。

チベット人代表者議会1997年9月18日付決議において、「ダライ・ラマ法王に国際情勢に鑑みて、その都度の行動方針についてのご決定を賜ることとする」と〔基本政策に関する〕決定権をお渡し申し上げましたので、基本政策を変更しなければならない状況であるとご判断なされるのならば、そのご判断は、民主主義に合致したご意向なのですし、同様に現行の政策も民衆の意向を反映したものですので、再度それに支持を求めなければならない必要性もありません。

また本会議の参加者についてですが、これは憲章の主旨を下に、チベット人代表者議会が決定なされたことです。ですから行政が干渉することではありませんが、これまでの定例総会の先例にのっとって、政府関係者も参加するのであって、会議を誘導するためでは決してありません。だからこそ会議に参加するすべての政府関係者に対して内閣はそれぞれの個人的な意見を述べるのみで、それ以外に政府の立場を支持する必要がないとはっきりと指示しております。内閣閣僚は今回は意見を聴取する立場であって、発言の機会をもちません。だからこそ各部会には参加しなくてもよいのではないかと申し上げましたが、承諾を得ることができませんでしたので、各部会については単に出席させて頂くのみで、それ以外に内閣の立場を説明したり議論に参加するつもりは全くありません。

このような理由から、先ほどご紹介申し上げたようなご意見が事実に反したものでありますことをここに申し上げる次第です。

また善意のある方は、今回の総会の開始日が、暦学上忌日にあたり、過去の伝統に則った日取りを選定しなかったのは不適切である、とおっしゃられた方が居られました。一般的に過去の例にもありますが、多くの仕事を時間の限られたなかで実行しなければなりませんので、吉日を選ぶことができない場合も有ります。それらが忌日に該当する場合は、暦学の典籍に基づき厄災消除を行なう習慣も有るのです。このたびの日取りですが、曜日としては月曜ですので吉日ですし、星軌はラク星宿、二水内合甘露結の吉日あたりますが、日は黒日ですので、水仕事や財宝を外に持ち出すことを忌むべき日であるだけで、特に心配するほどでもありません。暦学上の日取りについてはそれだけですので、主に取り立てるべき問題ではありませんが、議会でもしかるべき対策を講じて頂いております。

今回特別総会が招集された目的は次のようなものです。本年3月よりチベット全域のチベット人は、老若男女、僧俗を問わず、これまで語ることのできなかった思いを一つにし、自らの肉体や生命に確実に危険が及ぶことを知りながらそれを顧みずに、過去60年間にわたる中華人民共和国の極左政策で抑圧されてきた苦しみ、さらに特に思想信条の自由を奪われている苦しみを、非暴力という平和的手段によって吐露したのです。中華人民共和国による何の恐れも慈悲もなく、計り知れないほどの強大な武力によって、数百人の人命が奪われ、数千人が殴打され、拷問され、処刑されるという、抑圧されている状況はいまも続いております。

このような状況下で、彼らは一縷の希望を我々自由な国へと亡命したチベット人に対して託しているのです。ですから、私たちもまた、石を投げてもなかなか動かないウサギのように何も知らず感じていないような振る舞いをするのではなく、これらの同じ苦しみを共有することで、できる限り役に立つことをしないわけにはいかないということは言うまでもありません。

このような危機的状況を迎えた今日、ダライ・ラマ法王は、主要国の指導者ならびに国際社会に対してさまざまな呼び掛けをなされました。中国人民、チベット人、中国の仏教徒たちにも呼び掛けをなされました。中華人民共和国の胡錦濤国家主席にも親書をお送りになり、5月9日には、深センにて特使との非公式の会談を行い、7月初頭には、北京において第7回目の会談を行なわれるなどありとあらゆる対策が行なわれました。それらの成果は何ももたらせなかったとも断言できませんが、実態としては、中国政府によるチベットへの政策や立場は悪くなる一方で、苦しみは増加し、良き方向への変化は全くみられません。今回11月4日、5日に、北京で第8回目の会談をもちましたが、その際に中華人民共和国の憲法で定められている民族区域自治の条件についてチベット民族すべてに独立行政自治の状態を実行するための構想の仔細をお話したところ、「分離主義」「隠れて独立工作を行なっている」と言われ、真摯な対応をとって頂くことができませんでした。そこでチベットの民衆の意向を結集させる必要な時を迎えたのです。

一般論として、議会は民衆を代表しなければならないものですし、どんなものであれ議会でなされた政策決定はその限り、議会自身ではそれを変更するのではなく、民衆の審判を仰ぐ必要があるといえます。こうしたことは自由主義の国家に相応しいものでありますが、チベット人の現状には則しておりません。政党が多く存在する民主国家や議員の多数決による政治運営を行なう場合には、政党は議席数を減らさないようにし、自らの政策を継続すべき権利を主張しようとしますが、私たちの政治運営にはそのような政党もない民主体制なのですし、それだけでなく、議会議員もチョルカ各域や各宗派から選出された代表者で構成されただけに過ぎません。ですので一部の民衆と地域のみに限定されることのない、〔チベット〕本土にもいる〔すべての〕民衆との関係した完全な民主制度を実行できないのが現状なのです。このような理由から、亡命チベット人憲章では、他の国家とは異なっていますが、緊急を要する重要事項について、より多くの民衆の意見を結集させなければならない状況に際しては、こうした総会を招集しなければならないという総会の条件が定められているのです。

主席大臣を一般市民が直接選挙をする制度が樹立してからまだそれほど時間も経っていません。現在は第二期目の主席大臣による政権運営が行なわれている時期です。この種類の選挙は、どの人を選ぶのかというのではなく、その政治的見解や政策について選挙すべきなのであり、民衆の審判を得た指導者は、自らの任期の期間中に、さまざまな助言や指示を行う必要があるのですが、その都度何度も繰り返し民衆の審判を仰ぐ必要があるのであれば、選出された指導者としての責務を果たすことができなくなってしまう、そう助言して下さる方もいらっしゃいました。

しかし既に申し上げました通り、我々の状況は、自由が保障されている国家の状況と比較できない、極めて特殊な緊急を要する状況にあります。更に現在亡命中という状況ですので、様々な状況は日々変化してしまう可能性も有りますので、定期的な選挙によって選出されている民衆の代表者が、このたびのような特別な状況下においては、再び民衆の審判を仰がなければならないことは、我々だけではなく、すべての人が実践すべき民主主義の本旨でありますし、そうした理由によってこのたび本特別総会を憲章の主旨と民主主義の本旨に則って、本総会では、本年チベットにおいて起った緊急事態および国際情勢、中華人民共和国の施政方針などの実況に則した、未来におけるチベット人の根本要求を実現するためにどのような方向性へと向かうべきなのか、すべてのチベット人の思いと希望を代弁できることと、特定の政党が自らの思想を固辞して自らの勝利と他者の敗北を目指して議論するのではなく、すべての人がそれぞれの知性を駆使し協力しあうことで意見を結集し、前向きな検討をして頂けますよう御願い申し上げます。

なお本会議の背後亡命チベット政権が隠蔽している目論見や計画など何もないことをもう一度申し上げておきます。さらにこれ以上亡命政府の行政の立場等について何も申し上げることはありませんし、本総会における議題についても、亡命チベット政権内閣としましては、これが良いとかこれは悪いといったような考えは、一言も申し上げる予定はございませんことを申し上げておきます。それは何故かと申しますと、そのようなことによって会議の参加者の考えに影響が及ぶ可能性もありますし、我々としても、民衆のみなさまの知性を全面的に信頼しているからであります。

今回の特別総会の議題として、チベット本土のにあるチョルカ・スムのチベット民族から寄せられた意見を可能な限り収集した統計を別途議長に提出させて頂いております。

本会議の主たる目的は以下の通りです。

  1. 現在の危機的状況における、チベット人の根本要求に関する民衆の意見を結集させ、それを協議し、詳しく検討する。
  2. 亡命チベット政権の現行政策ならび手法に対する各種報道機関、一般市民より、様々な意見を回収する。特に批判を行なっている人の意見を公式の場にて発表して頂く。
  3. 未来のチベット人の根本要求に関し、如何なる方針を取るべきかについて、民衆の意見を反映させ、チベット人の求める選択肢を統一し、国際社会に明確に伝達する。

最後になりますが、ダライ・ラマ法王の御身体が百劫の間堅固であり、御意向が自然成就し、チベット人の要求が速やかに実現しますことを祈ります。

2008年11月17日 亡命チベット政権内閣

※チベット語より直訳、再掲いたしました(2008.12.17)