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亡命チベット代表者議会によるカルマパ猊下についての声明

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(2011年1月30日)

亡命チベット代表者議会常任委員会により、2011年1月29日にダラムサラ政務秘書官室で行われた記者会見(報道官主催)で発表された声明(チベット語の英訳)

緊急の召集にも関わらずお集まりいただいた、チベット・ラジオ・サービスをはじめとするメディア関係者に皆様、今日はありがとうございます。

ギュトー僧院のギャルワ・カルマパ十七世ウゲン・ティンレ・ドルジェの今回の事件について、チベット人社会ではさまざまな憶測がなされているようです。そして、チベット本土では、このことについて、どのようなニュースが流れているのか、我々には良く分かりません。この記者会見は、チベットに正しい情報を流すことを目的としており、チベット語メディア関係者を対象としています。

* 訳注:カルマパ17世はチベット仏教カギュー派の最高活仏で、中国とダライ・ラマの双方から認定されている、唯一のチベット仏教指導者である。中国占領下のチベットで生まれ、活動していたが、2000年に中国からインドに逃れた。2011年1月27日以降、このカルマパが、出所不明の大量の現金を保有していたとして、カルマパが在籍するギュトー僧院に、インド警察当局の捜査が入っている。脱税や外国為替法違反の疑いによるものだが、実は現金の出所は中国当局で、カルマパは中国のスパイではないかとの噂がある。

この事件のニュースを聞き、深く遺憾の念を抱いた議会の常任委員会は、1月28日午後に会議を行いました。どのようにして事件が起きたかを話し合っていくなかで、ギャルワ・カルマパ猊下に直接、お話を伺うべきだということになりました。猊下との面会がかなわないのなら、せめて僧院のほかの指導者たちと会って、正確な情報を得るだけでも良いと思ったのです。そこで、報道官のペンパ・ツェリンは、常任委員会メンバーのゲシェ・トゥプテン・ペルゲ、ゲシェ・モンラム・タルチン、ロポン・ソナム・テンペルとともに同日3時半に僧院を訪問しました。僧院には多くのマスコミ関係者が詰め掛けていました。カルマパ猊下との面会が叶い、ご本人にお目にかかると、猊下はとても落ち着いた様子で、一切、悪事には手を染めていないことを示していました。常任委員会は、今回の事件に深い遺憾の意を示し、今回の事件がカルマパ猊下の評判を落とす事態を避けるために、われわれが出来ることがあれば、行いたいとの意を伝えました。訪問の主眼は、カルマパ猊下にわれわれの連帯の念をお伝えすることでした。

カルマパ猊下は、財務的なことには関わっていないため、今回の事件のことは分からない、とおっしゃいました。このお言葉により、今回のことに猊下個人は一切関わっておられないとするわれわれの確信は裏付けられました。われわれは、それを固く信じておりました。

チベット人が運営する僧院は、保有するお金の出所を説明できるシステムを持っています。ですから、ギュトー僧院に保管されていた現金は、信者からの宗教献金であると断言できるのです。インドのマスコミ関係者は現金の出所について、深刻な懸念を持っているようなので、ここではっきり申し上げます。カルマパ猊下を「中国のスパイ」であるとか、「非合法手段を通じて金を得た」とする嫌疑は、根も葉もないものです。この記者会見の目的は、チベット本土のチベット人に、このことを伝えることです。

カルマパ猊下は、ごく若いときにチベットから命がけで亡命しました。ギュトー僧院では、常にインドの公安当局の監視下にあり、自由に移動することは許されておりません。そのことは、われわれが皆、良く知っていることです。猊下のスケジュールは全て、インド政府の監視のもとにあります。猊下に面会を求める人は、事前にインド警察の許可を取ることが求められます。昨日、われわれが猊下に会いに行ったときにも、ボディーチェックを受けました。彼らは義務を果たしているだけですから、抵抗する筋合いはありあません。だが、カルマパ猊下に対する献金の詳細にいたる知識を持っているはずの警察が、もし事件があったとしたら、そのことを知らなかったということはありえないのです。カギュー派の宗教伝統を背景に、猊下にはシンガポール、タイ、欧米諸国、そしてチベット本土と世界中に信者がおり、世界中から献金を受けていました。われわれの社会において、猊下はチベット人が信仰し、崇拝する重要な宗派の最高指導者の一人であります。猊下ご自身は、自らの修行、仏教伝道と世界平和の推進および、環境の保護に取り組んでおり、チベットの政治的、宗教的大義のために偉大な貢献をしておられます。明らかに、容疑は全くもってありえないものであり、こうした事件が起きる素地はないのです。

僧院の財務管理について、カルマパ猊下は、何がどれだけ信者から自分に献金されたのか、詳しく把握してはおられませんでした。猊下自身、昨日、「私はこうしたことに関わっておりません」とおっしゃっています。財務管理をしていたのは、事務スタッフです。法律の知識が十分でなく、適切な財務管理でなかったかもしれません。インドの法律に則っていなかった部分については、現在進行中の捜査の結果を尊重しなければなりません。ただ、カルマパ猊下の評判を傷つけるような噂は、全く根拠のないものです。

チベット亡命政権とカシャック(内閣)は、カルマパ猊下に対するサポートと協力を惜しまないつもりです。また、チベット亡命政権議会は、真実の究明を支持し、それが明らかになるまで、あらゆるガイダンス、協力を行っていく準備があります。

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 (翻訳:吉田明子)