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レーでの長寿祈願法要

2025年9月7日
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インド、ラダック地方レー、シワツェル

本日、灼熱の太陽の下、シェワツェルの法王公邸に隣接したカーラチャクラ・グラウンドにおける法話会の2日目に、ダライ・ラマ法王の長寿を祈願するため約5万人の人々が集まった。伝統的なラダックの太鼓とホルンの奏者が歓迎の音を奏でる中、法王は公邸から会場の奥にある講堂にゴルフカートで向かわれた。この長寿祈願法要は、ラダック仏教徒協会(LBA:Ladakh Buddhist Association)とラダック僧院協会(LGA:Ladakh Gonpa Association)の主催で執り行われた。

法王公邸からカーラチャクラ・グラウンドの講堂へゴルフカートに乗って向かわれるダライ・ラマ法王。2025年8月17日、インド、ラダック地方レー(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

講堂に到着された法王が、法座の背後にある釈迦牟尼像に礼拝すると、ティクセ・リンポチェが一歩前に進み出て法王をお迎えした。法王は壇の前方に歩み出ると、集まった聴衆を見渡し手を振られてから着座された。

法王の長寿祈願法要は『釈迦礼讃』の祈願文で幕を開け、お茶と儀式用の甘いご飯 “デシ” が配られ、仏陀と菩薩たちが招請されて沐浴の儀、マンダラ供養の偈頌の読誦へと続いた。

長寿祈願の儀式は、仏陀の教えの護持を誓った十六人の聖者である十六羅漢の祈請を中心に執り行われた。次に、礼拝、供養、懺悔をはじめとする七支供養が続き、供養法要が捧げられた。法王は供物の一部を口にされた。

ラダック仏教徒協会とラダック僧院協会の代表者が法王に敬意を表し、ティクセ・リンポチェがマンダラ供養を行った。仏陀の身・口・意の象徴と、僧衣、果物の入った托鉢用の鉢と錫杖しゃくじょうを法王に捧げると、法王はそれぞれを眉の辺りまで持ち上げて敬意を表さたれた。そして、八吉祥宝、転輪聖王の七宝、八吉祥財を載せたお盆が法王のご長寿を願って捧げられた。

ダライ・ラマ法王の長寿祈願法要のための伝統的な供物を掲げる僧侶たち。2025年8月17日、インド、ラダック地方レー(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

供物を携えた地元の人々が列を成して次々に壇の前を通っていく中、『不滅の歌』と呼ばれる、法王の二人の家庭教師によって書かれた法王のご長寿を願う祈願文が唱えられた。この祈願文には以下の繰り返し部分が含まれる。

私たちは厚い信仰をもって祈願します
雪国(チベット)の守護者である御方、テンジン・ギャツォが
百劫ひゃっこうにわたって生きられますように
御方に祝福を注ぎ
長寿の願いが成就しますように

法王は参列者に向かって次のように述べられた。

「兄弟姉妹の皆さん、まず私が申し上げたいのは、地元ラダックの方々も他の地域から来られた方々、そして僧侶も在家信者も、私の長寿を祈るために揺るぎない信仰心をもってここに来られたということです。チベット仏教の伝統を護持するチベット人とヒマラヤ地域の人々が、私の長寿を祈願するというひとつの明確な目的でここに集ってくださっているのです」

「私自身について言えば、アムドのドメーで生まれ、中央チベットに移りました。チベットのすべての人々と護法尊は、強い信仰をもって私に信頼を寄せてくださいました。それゆえに、私はチベットの人々と神々に尽くす責任を担い、困難な状況下で人生を送り、多くの試練に直面してきました」

この時、供物を捧げる人々の最後尾に並んだ老人が祝福を授かろうと歩み出た。二つの帽子を重ねて被ったその老人の姿に、法王は思わず笑い出された。その後にチベットの旗を掲げたチベット人が続き、チベット旗を法王に捧げた。

長寿祈願法要で参列者に話をされるダライ・ラマ法王。2025年8月17日、インド、ラダック地方レー(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

「仏法応護を誓約したネチュン・チューギェルのようなチベットの守護尊は、私がチベット問題に対するなかで、常に私と共にいてくださいました。チベットの守護尊たちは、ネチュンの導きのもと衆生に寄り添って来られました。私がチベットにいたときは、主にポタラ宮殿と夏の離宮であるノルブリンカで暮らし、チベットの人々と伝統のため努め、チベットとチベット仏教に対する責任を真摯に担ってきました。また、長い年月にわたって、私は出世間の護法尊と世間の護法尊を招請して、チベット問題解決への助力を祈願し、護法尊たちもまた、お力を尽くしてくださいました」

「私自身は、幼少期から家庭教師のもとで仏教を学びました。仏教基礎学から始め、心と意識、論理学、般若学、中観の見解、高度な知識であるアビダルマ(論書)を学びました。私は一部の点については懐疑的ですが、いずれにしても、中観思想(マーディヤマカ)、論理学、認識論、智慧の本質といったチベット仏教の伝統の真髄を学びました」

「心の内なる科学、すなわち心と感情の働きを理解することに関して、今では現代の科学者たちでさえ、私たちの伝統から学ぶことに非常に熱心です」

「私はチベットで20年以上暮らし、多くの困難に直面しました。かつて北京で毛沢東主席と会い、私たちは異なるイデオロギーと哲学的観点を持っていることを知りました。その後、チベットで起きた混乱のため、私は故郷を離れざるを得なくなり、以来インドで亡命生活を送っています」

「私は仏陀の教えを守り広めることにある程度は貢献できたと思っています。これまで、世界中からの助言を求める人々に応え、精神的な指導者としての評価をいただくようになりました。宗教を信じるかどうかに関わらず、多くの人々が私がこれまで実践してきたことに対して敬意を示してくださっています」

長寿祈願法要でダライ・ラマ法王のお話に聴き入る参列者たち。2025年8月17日、インド、ラダック地方レー(撮影:ザムリン・ノルブ / 法王庁)

「私の生涯において、多くの人々が直接的または間接的に私に信頼を寄せてくださり、私はその人々のお役に立てるように祈ってきました。いま、ここで、皆さんにタシデレ(チベット語の挨拶)でご挨拶したいと思います」

「精神的な教えについて、また、世俗的な活動おいて、私が実践してきたことの如何を問わず、皆さんはここに集い、私の長寿を願って祈りを捧げてくださいました。私の長寿を皆さんが祈ってくださったように、私も皆さんの願いが叶うことを祈ります。皆さんの祈願と供物に感謝し、その願いが容易に成就されることを祈ります。ありがとうございます」

「注目すべき点は、世界でも最も人口の多い国の一つである中国本土で、仏教への関心が高まっていることです。過去には、私のことを反動分子だと言う人もいましたが、私は誰に対しても、決して恨みや悪意を抱いたりすることはありません」

「歴史的には、ソンツェン・ガンポ王の時代から、私たちは中国と強い絆を築いてきました。中国の人々が仏教への関心を持ち続ける限り、仏教は自然に広まっていくでしょう。私はこの広がりにできる限りの貢献をしたいと思います」

「私は菩提心生起の心を養うことを日々の修行の一部としています。この修行を深めるために、空の瞑想も実践しています。仏陀の深遠で広大なる教えが世界、特に中国に広まるにつれ、世界全体に平和と調和がもたらされることに期待を寄せています。また、ヒマラヤ地域の人々が安寧に暮らせ、インド・チベット国境に平和と平穏が訪れることを願っています。これは実現可能だと信じています」

「皆さんは、私の長寿祈願のために、信心と帰依の心で集ってくださいました。私もまた、堅固な決意を持って長く生きられるよう祈ります」と法王が述べられると、聴衆から拍手が湧き起こった。

長寿祈願法要で歌を披露するラダックのミュージシャンたち。2025年8月17日、インド、ラダック地方レー(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

その後、法王の90歳の誕生日を祝福する歌をラダックのミュージシャンたちが歌い、次に地元のチベット子ども村(TCV:Tibetan Children’s Village)のグループが法王への感謝の印として温かい心を育むことを誓い、パフォーマンスを披露。法王のご長寿を祈願した。

法要の終わりに際して、十六人の聖者たちと四天王が再び招請され、法王のご長寿と仏法の繁栄を祈願する祈りが捧げられた。続いて、ガンデン僧院座主のジェツン・ロブサン・ドルジェ・リンポチェが、法王が長寿の願いを受け入れてくださったことへ感謝の意を込めて、感謝のマンダラを捧げた。そして、吉兆の祈願文がいくつか唱えられ、最後に法王のご長寿を願う偈頌で締めくくられた。

雪山に周りを囲まれたこの浄土には
すべての利益と幸福のすべてが生じる源である
観自在菩薩の化身テンジン・ギャツォ法王がおられる
法王の御足の蓮華が何百刧もの間健やかにとどまられますように

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