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ディンリ・シェカル・チョデ僧院の12人の僧侶、 「愛国心の再教育」運動に反対したために検挙される

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(2008年5月31日 チベット人権民主センター(TCHRD) 

チベット人権民主センター(TCHRD)に伝えられた確証ある情報によると、2008年5月19日の晩、中国武装警察と公安局がディンリ・シェカル・チョデ僧院に踏み込み、僧侶12人を「愛国心の再教育」の運動に反対したとして検挙した。

中国当局は、「チベット自治区(TAR)」と隣接する州のチベット地域において、「愛国心の再教育」の運動を再開、それを再び活発なものとしている。この運動は、定められた2か月間内に、ほぼ全ての社会階層を網羅するもので、まず始めに僧院機関を、そして党員、軍人、警察官、農民、個人事業家、教育機関や一般人を対象としており、彼らに対してダライ・ラマ法王と「分離主義勢力」を非難することを要求するものだ。

この運動は2008年4月1日に再開され、その一環として、2008年5月19日に中国の「仕事組」は、「チベット自治区」内のディンリ郡(中国名:Dingri Xian)、シガツェ県のディンリ・シェカル・チョデ僧院に、「愛国心の再教育」を実施をするためにおとずれた。しかし、それは僧侶と激しく興奮した口論に終わった。前述の情報筋によると、ディンリ・シェカル・チョデ僧院のいわゆる民主管理委員会のメンバーであるケンラプ・タクチェン師が、運動の最中に立ち上がり、公然と「愛国心の再教育」に反対し、運動下で求められているようなダライ・ラマ法王への批判はすることができない、と来ていた「仕事組」に言いさえした。他に11人の僧侶も立ち上がり、ケンラプ・タルチェンを支持し、一斉に毅然とした態度で運動に反対した。チベット人権民主センターによると、その事件後から信心深い人々や訪問者は僧院に入ることができなくなっている。また、僧侶たちも僧院の敷地内から立ち去るよう命令され、外部に情報が漏れることを防ぐために携帯電話を没収されさえした。また、同情報筋は、外部に情報を「漏らす」のを発見した場合、悲惨なことになると僧侶たちを脅迫した、とも伝えた。

事件同夜、公衆の批判的な目を未然に防ぐために、中国武装警察と公安局の職員が多数僧院に押し入り、抗議をした12人の僧侶を、住居から特定できない場所へ強制的に連行した。検挙された僧侶たちの居場所と健康状態に関する情報は得られていない。連行された僧侶たちの身元と出身地は以下の通りである。

  1. ケンラプ・タルチェン32歳ドシェ村シェカル町
  2. ツェワン・テンジン ペルバル村シェカル町ディンリ郡
  3. テンジン・ギャペル、リンシャル村、シェカル町ディンリ郡
  4. ケンラプ・タシ、マシャク村、シェカル町、ディンリ郡
  5. テンジン・ツェリン、ドゥチュ村、ギャツォ町、ディンリ郡
  6. テンジン・ツェリン、ビチュ村、ギャツォ町、ディンリ郡
  7. ロプサン・ジキメ、ノルゲ遊牧地域、シェカル町、ディンリ郡
  8. ケンラプ・ニマ、シェカル町、ディンリ郡
  9. ドントゥプ、チェ村、ツァコル町、ディンリ郡
  10. テンパ、ロロ・ランパ、シェカル町、ディンリ郡
  11. サムテン、ショリンシャル、シェカル町、デンリ郡
  12. チョデン、ショリンシャル、シェkル町、ディンリ郡

チベット人権民主センターによると、事件後日がほとんどたたぬうちに僧侶達の家族は地元の公安局の職員に、僧侶たちの正確な拘束先の情報と彼らへの面会を求めた。しかし僧侶達の家族と親せきは要求を聞きとどけられる代わりに、政府のイメージを損なっていると厳しい警告で脅迫され、僧侶たちの連行の情報をどこで得たのか、と質問された。

3月10日以降チベット高原一帯で起こった前例のない抗議に続き、「愛国心の再教育」の運動が4月初旬に新たに考案され、2か月間で成果を求められてるかたちで開始されており、この運動は僧院機関だけでなく、政府職員や軍人、警察官、農民、遊牧民、個人事業家や教育機関にも浸透している。「愛国心の再教育」の信条と根底にあるメッセージは、「情熱的にダライ・ラマ派に反対する」ことであり、また「ダライ・ラマ派と3月14日暴動の真の性質を暴露」することでもある。共産党リーダーの監視下で、新しい委員会が公式に発足されたが、その目的はこの運動を考案することであり、また厳密に規定された2か月間内に、この運動をすべての社会階層において実施することである。このことに続き、運動に公然と反対または拒否しために、チベット人が逮捕・拘束されたという実例が多くの場所から-特に僧院施設から-多数報告された。

1982年12月4日に採択された中国の憲法は、「第2章-国民の基本的権利と義務」の第36条において、以下のことをはっきりと定めている。「中華人民共和国の国民は、宗教的信仰の自由を享受している。どの国家機関、公共組織または個人も、国民に対してどのような宗教を信じることも、または信じないことをも強要してはならない。彼ら(国家組織、公共機関、個人)は、国民をどのような宗教を信じているか、または信じていないか、ということで差別をしてはならない。国家は通常の宗教活動を保護する。何人も、公共の秩序を混乱させたり、国民の健康を損なったり、国家の教育組織に干渉したりする活動に従事するために、宗教を用いてはならない。宗教機関と宗教的事態は、いかなる外国の支配下にもはない。」

しかし、今年の初めからチベットで隠蔽されている事件からもわかるように、チベット人の人権と信仰の自由に関してはいえば、中国による信仰の自由への尊大な約束は、不十分な保護を与えるにとどまっている。このことは、「愛国心の再教育」の運動が再開されたことからも、また去年実施された、2007年1月1日「チベット自治区の宗教事態に関する規則のための条例の実施」(「条例実施」)や、より具体的な、「チベット仏教での活仏の転生管理に関する条例」(転生条例)からも明らかだ。

中国当局は、過去と同様、「愛国心の再教育」や前述の二つの条例のような、宗教事態に関する具体的な法を公布・実施し続けている。これらの条例や運動が立証している顕著な主題は、中国共産党政府が引き合いに出している、分離主義や「国家安全保障」「社会安定」「民族統一」への脅威と、チベット仏教徒の宗教的信仰心とその実践とのつながりである。チベット文化や民族のアイデンティティーと、チベット仏教の間に密接なつながりがあるため、中国はチベット仏教の実践と国家安全保障の脅威とを結びつけているのだ。中国は、宗教的ないかなる表現にも抱いている根深い恐れを、抗議や非愛国的な活動という実体が明確でない認識に投影し、それを助長している。中国政府は完全な忠誠心を国民に要求し、当局が挑発または脅威と解釈するあらゆる活動を、許さないし、受け入れないのだ。中国共産党政府は国民に「国を愛すこと」-すなわち当局が競合するとみなすいかなる忠誠心よりも、まず共産党の権威を尊重すること-を要求している。「チベット自治政府」の党書記であるZhang Qingliは、中国共産党を「真のブッダだ」と主張していることからも、それを知ることができる。

2008年5月29日に、「チベット自治区」共産党書記のZhang Qingliは、ラサで「チベット自治区」の全行政区の共産党の長と会議を開き、各地区で行われる事業の主要な六領域を考案した。この六領域のうち第三領域では要点として、「愛国心の再教育」の運動をさらに活性化させることに本腰を入れて焦点を当てており、管理下にある地区の僧院施設長に、施設内でさらに厳しく運動を実施することを提案するものだった。

チベット人権民主センターは中国政府に、チベットでのいわゆる「愛国心の再教育」の行為の実施を速やかに停止することと、僧院施設で通常の宗教行為が豊かに栄えることを許可することを求めた。また同センターは政府に対して、国際社会と中国が示している基本的人権に応じて、基本的人権と自由を尊重することも求めた。また、中国政府は検挙された人々が、法的代理人や家族、また必要とされるあらゆる医学治療へ即座にかつ無条件にアクセスできるよう保証をするべきである。