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『兜率天の百の神々』の法話

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2024年4月19日
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インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ

今朝、空は雲で覆われていたが、ツクラカンの中庭を歩かれるダライ・ラマ法王の笑顔は、晴れやかに輝いていた。法王の教えを拝聴するために訪れた300人のモンゴル人を代表する男女2人が前に進み出て、法王にチーズとカード(凝乳)を捧げた。法王はそれらをひとつまみずつ召し上がり、2人にも味見を勧められた。

ツクラカンでの法話会初日に、中庭を抜けてツクラカンに向かわれるダライ・ラマ法王。2024年4月19日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:ザムリン・ノルブ / 法王庁)

法王はしっかりとした足取りで、中庭の真ん中を通る通路を、ツクラカンに向かって歩かれながら、右を向き、左を向いて、通路の両側を埋めつくす人々に挨拶され、時折立ち止まっては、彼らの笑顔をご覧になって手を振られた。法王はその後も、ツクラカンのまわりの回廊を、72カ国から集まったおよそ6,100人の聴衆と交流されながら進まれた。

法王が法座に着かれると、在家信者の一団がモンゴル語で『般若心経』を唱え、続いて、マンダラと仏陀の身・口・意の象徴が法王に捧げられた。

そこで法王は次のように話を始められた。
「私たちはインドという聖なる地に亡命しているため、仏法を説く機会に恵まれています。ツォンカパ大師と私はチベットにある同じアムド地方の出身で、私の出生地は大師が誕生された場所の近くにあります。振り返ってみると、私はチベットで興隆した仏教の伝統を護持しようとしてきました。また、環境を保護し、世界の平和を確保して、宗教間の調和を促すための発言をしてきました。ですから、ツォンカパ大師の生家の近くで生まれた者が、世界のために何らかの貢献をしてきたと言うことができるでしょう」

「今述べましたように、私はツォンカパ大師誕生の地に近接する、西寧の近くで生まれ、私が生まれた当時、この地域は馬歩芳ば ほほうという中華民国の軍閥に支配されていました。ダライ・ラマ13世の転生者を探しているときに、私は馬氏に謁見するために連れて行かれ、私の顔を見た馬氏は “この子には何か特別なものがある” と言いました」

「ここに集まった私たちは、皆、同じ師である仏陀に従う者たちです。私たちは、チベット、モンゴル、ヒマラヤ地方で守り続けてきた、仏陀の完全な教えであるナーランダー僧院の伝統を保持しています。私は、自分がティソン・デツェン王の転生者であることをはっきりと示す夢を見たことがあり、王の指導の下で確立された伝統を守るために最善を尽くしてきました。私を信頼してくださっている皆さんに感謝の気持ちをお伝えしたいと思います」

ツクラカンで行われた法話会の初日に、説法をされるダライ・ラマ法王。2024年4月19日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:ザムリン・ノルブ / 法王庁)

「チベット仏教は、シャーンタラクシタ(寂護)大僧院長がチベットにもたらした教えに由来し、そこにはナーガールジュナ(龍樹)やアサンガ(無著)から受け継がれた系譜が含まれています。この伝統に見られる、心と感情の働きについての理解には、科学的で実践的な価値があります。この心と感情の理解は、世界の多くの問題に対する解決策を提供する可能性を秘めているのです」

「私は生きている限り、チベットの仏教王たちの祈願を遂行する決意を固めています。すでに申し上げたように、私の意識はティソン・デツェン王と同じ(心の)連続体に属しているという明確な示唆を得ていますので、私は王の遺産を維持しようと決意しています。そして現在において、ナーランダー僧院の伝統の叡智が人類の福祉に貢献する機会があると感じています」

「今日は『兜率天の百の神々』のテキストを読みますが、これは上師瑜伽(グル・ヨーガ)の実践です。他の宗教の伝統、たとえばヒンドゥー教やキリスト教と同じように、ナーランダー僧院の伝統の仏教も、伝授の系譜を重要視しています」

法王はテキストから “この堕落した時代において、八つの世俗的な関心(世間八法)を放棄することで、あなたは、余暇と機会のあるこの生を有意義なものにされました” と書かれた偈頌を読まれた。

そして法王は次のようにアドバイスされた。
「ツォンカパ大師が望まれたであろうように、私たちは、仏陀が説かれたことを勉強し、その後、修行を通じて教えを自分自身の心の中で統合しなければなりません」

300名のモンゴル人のグループのリクエストによる、ダライ・ラマ法王の法話会初日のツクラカンの光景。2024年4月19日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:ザムリン・ノルブ / 法王庁)

「“最も崇敬されているスマティ・キルティ(ツォンカパ大師)の教義の真髄が永遠に照らされますように” という偈頌は誇張でも偏った見方でもありません。ツォンカパ大師の分析の明晰さと包括性は唯一無二のものであり、その広範で詳細な解説のすべては、戒学・定学・慧学の三学に包括することが可能です」

法王は『ミクツェマ』として知られるツォンカパ大師への礼讃偈を唱えられた。

無所縁の慈悲の大蔵観自在

汚れなき智慧の王なる文殊師利
魔軍をば残らず降臨させる秘密主(金剛手)と
雪国(チベット)の智慧者として冠たるツォンカパ大師
ロサン・タクパの御足に祈願いたします

すべての生において、勝利者たるツォンカパ大師が
大乗の私の直接の精神の師となられますように
そして、そのようにして、勝利者が礼讃された卓越した道から
一瞬たりとも、逸脱することがありませんように

「ツォンカパ大師の護法尊はダムチェン・チューギャルでしたが、私はこの護法尊が、いつもそばにいて、私のことも助けてくださっていると感じています」

法話会の初日に、『兜率天の百の神々』のテキストを読まれるダライ・ラマ法王。2024年4月19日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:ザムリン・ノルブ / 法王庁)

「私たちは勉学と修行を通して仏陀の教えを守り続けています。最近では、科学者や、仏教以外の伝統的な宗教を信仰している人々も、仏陀の教えに関心を寄せています。彼らは、私たちの感情に取り組む助けとなる、これらの教えを高く評価しているのです」

法王は、ツォンカパ大師の瞑想をするとき、大師の右側の蓮の花の上には剣が立っており、左側の蓮の上には経典が置かれていると観想するように、と述べられた。剣は大師の智慧がいかに無明を切り裂くかを示し、経典は大師の知識の完全さと深遠さを明らかにするものである。

「私たちは国を失い、亡命してきましたが、この時間は有意義なものでした。すべての皆さんが、教えを実践するために、最善を尽くすよう強く望んでいます。タシデレ」