ニュース

ニュース

最新ニュース

これから開催するイベント

『入菩薩行論』法話会 2日目

Print Friendly, PDF & Email

2022年7月29日
インド、ラダック地方レー

ダライ・ラマ法王が法話会場の大型テントに到着されると、ラダック仏教協会(Ladakh Buddhist Association / LBA)副会長のチェリン・ドルジェ・ラクルク氏が恒例のマンダラ供養を捧げ、他の代表者たちも法王にカタ(伝統的な儀礼用の絹のスカーフ)を贈呈した。続いて、三つの内容を持つ『釈迦礼賛』と『般若心経」が唱えられた。三つの内容とは、仏陀への帰依、無常・無我・苦しみについてと廻向である。

法話会2日目、シワツェルの法話会場に到着し、民族衣装を纏ったラダックの少女に挨拶されるダライ・ラマ法王。2022年7月29日、インド、ラダック地方レー(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

法王は、今日がチベット暦6月1日にあたるので、早朝にパルデン・ラモへの祈願文と供物を捧げたと告げられた。それから法王は、自作の女性の護法尊を称える祈願文の読誦を先導された。

法王は、シャーンティデーヴァ(寂天)の『入菩薩行論』について、有意義な人生を送りたいのであれば、このテキストに倣うことが効果的であると説明された。

そして法王は次のように述べられた。
「チベット人やヒマラヤ地域の人々は、観音菩薩のオーム・マニ・ペーメ・フームという六字真言やオーム・タレ・トゥタレ・トゥレ・スヴァーハーというターラー菩薩の真言を唱えることに親しんでいますが、自分自身が幸運だと考えて、温かい心で最終的に悟りを開くことに集中し、有意義な人生を送るように努めるべきです」

ここで法王は、「昨日は一般的な仏教概論についての話をしましたので、今日は『入菩薩行論』の最初から本文を読み進めたいと思います」と述べられた。

続いて法王は第2章を読み始め、時折コメントをはさみながら、シャーンティデーヴァの『入菩薩行論』の口頭伝授を行われた。

法話会2日目、シャーンティデーヴァの『入菩薩行論』を読みあげられるダライ・ラマ法王。2022年7月29日、インド、ラダック地方レー(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

続いて法王は、次のように述べられた。
「『入菩薩行論』は菩提心を育むための優れた手引書です。私はベッドの横に1冊置いて、できる限り読んでいます。さらに、空性の学びに関心がある人はこの本の第9章を学ぶとよいでしょう」

「ナーランダー僧院の伝統を引き継ぐ仏教徒は、健康と幸福をもたらす菩提心を養う修行についてよく知っています。仏陀、仏法、僧伽に帰依するとき、仏法とは自分の心の中で培っていかなければならないものであり、それによって一切智の仏陀の境地に至る五つの修行道(五道)と菩薩の十地を歩むことができると理解しなければなりません」

「『般若心経』の真言は、仏陀の境地へ至る段階的な道筋を示すものです」

観自在菩薩が、「タヤター・ガテー・ガテー・パーラガテー・パーラサムガテー・ボーディスヴァーハー」(すなわち、行け、行け、彼岸に行け、彼岸に正しく行け、悟りを成就せよ)と真言を唱えるとき、それは弟子たちに五つの修行道(五道)を進むようにと諭しているのである。

「“ガテー・ガテー(行け、行け)” とは、資糧道に行け、加行道に行け、という意味であり、加行道に至って、直観で空を見抜いた時点で入る見道の修行に向けて準備せよ、ということであり、“パーラガテー(彼岸に行け)” とは、見道に入って菩薩の初地の段階に至れ、と述べられているのです。さらに、“パーラサムガテー(彼岸に正しく行け)” とは、修道に至って菩薩の初地に続く第二地から第十地の段階を進めという意味です。そして、“ボーディスヴァーハー(悟りを成就せよ)” とは、無学道(これ以上学ぶことのない段階)に至って無上の悟りを成就せよ、ということを意味しています」

ダライ・ラマ法王の法話会2日目、雨が降る中、ほとんどの聴衆が傘をさして法話を聞いている情景。2022年7月29日、インド、ラダック地方レー(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

「私たちの最終目標は、悟りを得ることです。そのためには、修行道の方便の側面である菩提心と、修行道の智慧の側面である空性の理解を組み合わせる必要があります。私たちはこれらを心に留めて、今生そして来世にわたり悟りへの道を歩むよう自らを鍛錬する必要があるのです」

法王は、『入菩薩行論』第2章第8偈を読まれた。

私は勝利者(仏陀)とその息子たちに私のからだをすべて〔心から〕捧げます。最勝なる菩薩たちよ、〔慈悲のお心で〕私のすべてを常に〔悟りに至るまで〕受け取ってくださいますように。敬意を持って、あなたのしもべとなります。

法王は、仏陀と菩薩たちに身を捧げる最大の目的は、有情の幸福のために利他的に働くことであると述べられてから、第3章第23、24偈を読まれた。

このように、以前如来たちが菩提心を起こされて、菩薩の学処(六波羅蜜、四摂事などの菩薩行)を順序どおり実践されたように、(23偈)

〔私も〕そのように、有情を利益するために菩提心を起こして、そのように〔菩薩の〕学処も順序どおり実践いたします。(24偈)

法王は、朝起きるとすぐに菩提心についてじっくり考えていると話された。これらの偈は、発菩提心と菩薩戒の授与の定型句として使われている。第3章の残りの偈は、菩提心の利益が強調されている。法王は途中でコメントを時折加えながら、『入菩薩行論』の残りの部分を着実に読み進められた。

法話会2日目、ダライ・ラマ法王が読まれるシャーンティデーヴァの『入菩薩行論』のテキストを目で追う人々。2022年7月29日、インド、ラダック地方レー(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

法王は、第9章の冒頭で、これまでの章に含まれる手引きはすべて、この章の焦点である般若波羅蜜(完成された智慧)の進展を助けるものためのものであると指摘され、第9章第2偈で使われている “心” という言葉は、二元的な現れを持つ世間の人々の認識を指していることを明らかにされた。一般的に言えば、心にはさまざまな側面があり、仏陀としての一切智者の心、空性の三昧に入った修行者の二元論的な現われのない心、量(正しい認識)、思い込み、直接認識、推論的認識、疑念などである。

法王は、1回のセッションで『入菩薩行論』の口頭伝授をすべて終えると、菩提心を育み、空性を理解するための基礎としてこの本を読んで使うようにと聴衆に呼びかけられた。

法王は、「明日は大いなる慈悲の化身である観音菩薩の灌頂を授与します。明日また会いましょう」と告げられた。