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1934年のナショナルジオグラフィックに掲載されたチベット国旗

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(2004年9月4日 phayul ジャムヤン・ノルブ)

私は、ダラムサラのチベット亡命政権に勤務し、現在はニューヨークのチベットオフィスに勤める一人の古い友人からメールを受け取った。その内容は、数年前にチベット亡命政権が、チベットの国旗を掲載している「ナショナルジオグラフィック」の大変古い記事を入手したというものだった。そこで、私は何とかしてその1934年9月に発行された第三号vol.LXVI版のコピーを入手、ギルバート・グロヴナーとウィリアム・J・ショルターによって書かれた「世界の国旗」というタイトルの記事を見つけ出した。383ページ、スイスとトルコの国旗の間に、チベットの国旗は紛れも無くそのままの姿で掲載されていた。国旗に関する解説はとても簡単なものだ。

チベット:そびえ立つ雪山を背景に、二匹のライオンが輝く宝石を巡って争い、立ち上がる。チベットの国旗は東洋の国旗の中でもひときわ目立つものの一つ。

おそらく、米国地理協会は、このチベット国旗を、現代チベット陸軍総司令官であり協会メンバーでもあるツァロン・ダサン・ダウル氏から入手したのだろう。その記事の中で編集者は、必要に応じて国旗に関するより詳しい注意書きを加えているにもかかわらず、チベット国旗に関して、「新しい国旗である」とか「リストに新たに加えられた」といったような記述は一切していない。例えばドイツ国旗の場合、解説の中で編集者は用心深く、「ナチスドイツの卍の国旗は、ちょうど一年前、アドルフ・ヒトラー首相の特別法令によりドイツ国旗として採用された」と記している。満州国についても同様に、「満州王国旗は、我々の記事の適切な場所を占拠しようとつい最近出現したばかり」と書かれている。この他、カンボジアやアナンがフランスの保護国であり、レバノンやシリアがフランスの委任統治領であることが明記されていた。旧韓国(及び朝鮮)の国旗ですら日本統治下に分類され、代わりに日本国旗がとって変わったと記されている。

私は何もチベット人読者を喜ばせる為にこれらを引用しているわけでなく、そこから一歩進んで、変化こそが歴史そのものなのだという認識を共有したい。これらのリストの中に、今となっては既に存在しない国旗を見ることは、日本人が言うところの「もののあわれ」−人間存在の不確かさを認識したときに感じる物悲しさ−を私達に感じさせる。一体誰が、この記事に掲載されている満州国の国旗を覚えているだろう?これらは今や完全に歴史上の存在なのだ。

その一方で、「ナショナルジオグラフィック」は、今日国家として認識されているインド、フィリピン、イスラエル、アイルランド、リビア、シンガポール、インドネシア、ビルマ、ネパール(ネパールの現国旗は1962年12月12日に採用された)、マレーシア、モンゴル、ブータンその他の国旗を掲載していない。オーストラリアやカナダですら、完全な独立国家としてではなくイギリス帝国下に分類されている。雑誌が発行された1934年の時点で77の独立国家が載せられているが、現在、国連は191カ国の加盟国を抱え、長年の間に多くの新たな国家が加盟している状況だ。チベットは果たして192、193、もしくは200番目の加盟国として、国連に名を連ねることができるだろうか。

 

チベット人は仏教徒として、すべての現象は無常だと信じる。中国によるチベット支配も無常であるわけがない。