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2001年度 チベットでの人権侵害に関する新たなレポート

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2002年1月7日
プレスリリース(チベット人権・民主センター)

7日、チベット人権・民主センター(TCHRD)は、チベットにおける人権問題に関する年間レポートを発表した。このレポートは、最近チベットに到着した難民からの証言を中心とし、過去12ヶ月に行われた大規模な人権侵害を詳細に描いている。これらの人権侵害の証拠は、チベットにおいて2001年には生活環境も人権問題も改善されているというプロパガンダを流している中国政府にとっては、まことに目障りなものである。

ニューヨークに拠点をもつ自由と民主主義の監視団体、フリーダム・ハウスによる最新の格付けでは、市民の自由と政治的権利に関してチベットは世界最悪地域であった。TCHRDの上級プログラム担当職員、ユードゥン・オーカツァンは、こう語った。
「9月11日(米国同時多発テロ)の出来事に照らして考えれば、国際社会は積極的に人権を尊重している。反テロリズムという名のもとで、中国がチベット人に対して行っている人権侵害ではなく」

TCHRDは、この年間レポートに2つの主な人権誓約書を添付している。
1つは2001年3月に批准された経済・社会文化的権利に関する国際規約(国際人権A規約)、もう1つは政治的権利に関する国際規約(国際人権B規約)である。

チベットの政治的異分子をターゲットにした中国の「厳打」キャンペーンが今年再開した。TCHRDの年間レポートでは37名の新たな逮捕者が数えられており、言論・表現・宗教・活動や集会の自由権を行使したとして現在監禁されているチベット人政治犯は254名になる。多くのチベット人が監禁中に殴打や拷問を受け、2001年に少なくとも10名が死亡したと報告されている。このレポートには、2001年に仏教施設が中国共産党「工作隊」による規制や排除の増加にどのように対応しているかが詳細に書かれ、それには9,804人の宗教実践者の排除と少なくとも2つの宗教施設の閉鎖が含まれている。
ダライ・ラマへの非難を拒んだり、ダライラマの写真・ビデオ・カセットテープを所有している一般のチベット人も逮捕され、あるいは投獄された。

中国に対しては市民的・政治的権利を主張し続けるのは、経済的権利ほど重要なことではない。このレポートでは、「近代化」プログラムによりチベットの人々の生活が改善されたとする中国の主張に焦点を当てている。国際人権A規約の批准にも関わらず、チベット人は後述するような権利を含めた市民的・政治的権利の深刻な侵害に苦しんでいる。

生活権:
レポートによれば2001年に中国政府はチベットで経済政策を実行したが、それは中国政府を豊かにし、チベットの町や都市への中国人居住者の人口移動を奨励するためのものであった。一方、地方で苦しみながらかろうじて生計を立てている大部分のチベット人への誓約は無視されたのである。

教育権:
高額な授業料に加え、教育手段としての中国語の使用が増加した。つまり地方のチベット人の子供達は小学校以降の教育を受けることができなかったという意味である。2001年にチベットから避難した難民のほぼ半数は教育を求める子供達であった。

健康権:
レポートでは2001年に発行された国際的な研究結果を検証している。それによれば栄養失調、結核その他貧困に関連した病気がチベットにおいては看過できないレベルに達している。高額な医療費とチベット人医療関係者の不足により、チベット人が医療処置に接する機会が限られてきた。レポートはさらにチベットでのHIV(エイズ)の流行の可能性を警告している。考慮される点としては、チベットではHIVテストや予防対策、治療施設がないこと、また中国の産児制限策がセーフセックスの促進ではなくむしろ女性の不妊に焦点を置いていることなどがある。

住居権:
多くのチベット人が適切な住居の権利を拒絶された。1万人が立ち退きを強制され、地方のチベット人は水道や電気といった基本的な住宅サービスを拒絶された。さらに新築の住宅はチベット人ではなく増加する中国人の需要にあわせて設計された。

TCHRDのユードゥン・オーカツァンは語った。
「我々のレポートが明示しているのは、チベットで起きている『開発』のようなものが、中国政府の政治的需要に基づくもので、チベット人の需要や利益を考慮したものではない、ということだ。チベットを開発してきたという中国政府の主張は、2001年の中国のWTO加盟や、2008年のオリンピック招致活動の成功を受けて、国際社会に受け入れられてきたように見える」

年間レポートでは初めてTCHRDは、2001年の人権侵害に対する保護を求めてチベットから避難した難民の人権をも検証している。全部で1,375人のチベット人がインドに到着したが、少なくとも2,500人のチベット人がチベットとネパールの国境で逮捕されたため、人数は前年よりも少なくなっている。ネパールに渡ることができた者の中には、ネパール警察によってチベットへ強制送還されたり、旅行書類不携帯で逮捕されたというケースも記録されている。これらのケースは、チベット人がネパール経由でインドへ向かうことを許可しているネパール政府の寛大な政策に反した厄介な出来事である。
「チベットを出るために、難民はヒマラヤ山脈を越えてネパールに入る危険な旅行に立ち向かう」とTCHRDのユードゥン・オーカツァンはさらに続ける。
「しかし、(ネパールで)難民達はチベットに送り返され、そこで難民達は逮捕・監禁・拷問に直面する。あるいは難民達はネパールで投獄され、それがさらに将来にわたるトラウマを引き起こすのだ」