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スタッフ・リポーター
2022年4月21日
―インターナショナル・キャンペーン・フォー・チベットによる報告
中国共産党(CCP)は、チベット東部ダンゴ(ドラクゴ/中国名:炉霍県)で、重要な宗教的建造物への一連の破壊行為と、それに抵抗するチベット人の拘留を命じた。2020年末に、CCPが「『習近平思想』を指針とする中国の法治政策」を提唱してから一年後のことであった。これによって、CCPの管理の枠外で組織されているチベット仏教の宗教活動に対する処遇は、今まで以上に厳しいものとなった。
一連の破壊行為は2021年10月末に始まり、10月から12月にかけて、同地域で3体の巨大な仏像、45台のマニ車と僧院学校などが取り壊された。現地のチベット人の多くが抵抗し、不満を表明したが、いずれも当局に拘留された。厳しい情報統制の中、そのうち11人の名前が何とか確認できたが、実際にはもっと多いと見られている。
最初に取り壊されたのは、ガデン・ラブテン・ナムギャル・リン僧院学校で、2021年10月31日から解体作業が始まった。次いで12月12日から、高さ約30メートルの巨大な仏像の解体が始まった。この仏像は2015年10月に建立されたものである。また同じ時期に、そこから15km離れたチャナン僧院で、約12メートルのパドマサンバヴァ(グル・リンポチェ)像が破壊された。12月21日には、ダンゴ僧院の屋内に安置されている弥勒菩薩像の解体も始まった。この仏像も高さ約12メートルで、3階建ての建物に相当する。これら全ての破壊行為は、2021年10月31日から12月21日にかけて、半径15km以内の地域で行われた。
拘留されたチベット人
海外メディアやNGOによって公開された複数の情報に基づいて、これらの破壊行為に関連して拘留されたチベット人のうち少なくとも11人の名前が次の通り確認できた。実際の拘留件数は、これよりもはるかに多いと考えられている。
- ペルガ(ダンゴ僧院の僧院長、男性)
- ニマ(ダンゴ僧院の管理責任者、男性)
- ニマ(ダンゴ僧院の僧侶、男性)
- タシ・ドルジェ(ダンゴ僧院の僧侶、男性)
- ツェリン・サムドゥプ(在家、男性)
- ラモ・ヤンキ(女性)
- トロルパ(タンカ画家の息子、男性)
- ロブサン・ツォモ(尼僧、女性)
- アサン(女性)
- ドトラ(男性)
- ノルツォ(女性)
RFAとチベット・タイムズの報道によると、ニマ師(ダンゴ僧院の管理責任者)とロブサン・ツォモ師(尼僧)はすでに釈放されている。ロブサン・ツォモ師は、チベット自治区ダキャブ県にある「再教育センター」で3カ月間の服役後に解放された。ニマ師は、4カ月近い拘留の後に解放された。その他の勾留者の状況は不明のままである。当局がチベット人を拘留した理由は多岐に渡り、外国と通信したことから、仏像の写真をソーシャルメディアのプロフィールに使用したことまで含まれる。例えば、ロブサン・ツォモ師とタシ・ドルジェ師は、外国の親戚や知人と連絡を取ったという理由で拘留された。ドトラ氏とノルツォ氏は、ソーシャルメディアアプリ・WeChatのプロフィール写真に仏像を使用したことを理由に拘留された。


現地当局は、僧院学校の取り壊しに際して、現地のチベット人たちに選択肢を与えた。学校を自分たちの手で取り壊し、解体後の建築資材を持ち帰るか、あるいは政府が人員を派遣して学校を壊し、残骸は残さないかのどちらかである。チベット人たちは、自分らの手で取り壊すことを選んだのだった。
野心的なダンゴ県知事
これらの破壊行為が始まったのは、王東昇(ワン・ドンシェン/Wang Dongsheng)がダンゴ県知事に就任してからであった。CCP幹部として彼が下した解体命令は他に類を見ないものだった。
2021年10月13日、ダンゴ県CCP幹部会議において、王東昇の県知事就任が発表された。彼は中国名を名乗る52歳のチベット人で、1989年以来33年間、CCP党員として、チベット東部でキャリアを積んだ。ダンゴ県知事として頭角を表す前は、出身地のニャロン(新龍)、リタン(理塘)、セルタル(色達)においてCCPで様々な役職を務めていた。
現職に就任する前、彼はセルタルの党書記次官を務めており、2016年から2017年にかけてのラルンガル僧院学校の解体は、彼の監督のもとに行われた。この時、約7500軒の僧房が取り壊され、約5000人もの僧侶が追放された。中国中央政府のCCP幹部は、チベット人を使ってチベット人を支配することで、政策実施の効果を高め、「チベット人による自治」により国内における党の正当性を保持することを狙っている。王東昇は、このようなCCPの戦略に巧みに同調するチベット人幹部の典型である。
ダンゴ県政府のホームページによると、県知事に就任した3日後の2021年10月16日、王東昇は視察団を率いて県内調査を行った。この視察団は「監督・研究」チームと呼ばれ、そのメンバーは、副知事と公安局長を兼任する顧福華(ゴウ・フーホァ/ Gou Fuhua )、副知事の多斯力波(タシ・リグポ/Zhaxi Rangbu)、および開発改革局、民族宗教局、農業畜産局、住宅都市開発局などの部局の責任者たちであった。

この視察の後すぐに、中央政府が重きを置く「法治政策」を実行するという名目で、破壊行為が開始された。詳細はこちらをクリック
(翻訳:麻雪)