ニュース

ニュース

最新ニュース

これから開催するイベント

第9回チベットに関する世界国会議員会議におけるケンポ・ソナム・テンフェル議長の開会挨拶

2025年6月3日

第9回チベットに関する世界国会議員会議で開会の挨拶をするケンポ・ソナム・テンフェル議長 /写真:テンジン・チョイン(チベット亡命議会)

皆さま、タシデレ。

このたび、主賓の山東昭子元参議院議長(現参議院議員)、特別来賓の安倍昭恵故安倍晋三元内閣総理大臣夫人、東本願寺第25代門首の大谷暢順台下、日本チベット国会議員連盟の山谷えり子会長、日本チベット国会議員連盟の山田宏事務局長、中央チベット政権のペンパ・ツェリン主席大臣、ドルマ・ツェリン副議長、ノルジン・ドルマ情報・国際関係大臣、国会議員各位、そして本日ご出席の諸賓の皆様、また、世界中からご参集いただきました著名な国会議員の皆様、尊敬すべき来賓の皆様、そして、メディア関係者の皆様を、第9回チベットに関する世界国会議員会議にお迎えできることを大変光栄に思います。

亡命チベット議会を代表して、多忙な日程のなか、揺るぎない連帯とチベット支援のために時間を割いてくださった皆様に心から感謝申し上げます。世界各地での選挙や議会開催のため、この会議に参加できない議員もいましたが、そのなかの多くの議員が、ビデオメッセージでチベットの自由への闘いに連帯を示してくださいました。 また、チベットを強く支持する元議員の方々もこの会議に参加しています。

本会議では、ダライ・ラマ法王14世の心温まる書面メッセージ、チベットの民主主義に関する映像上映、そして、元政治犯であるナムキー氏による、中国による人権侵害の痛烈な証言が行われます。この場をお借りして、改めて皆様の貴重なご参加に感謝申し上げます。

「チベットに関する世界国会議員会議(WPCT)」は、おおむね3年ごとに開催され、民主主義国の議員たちと積極的に関わりながら、チベットの大義に対する協調的な支援を得ることを目的としています。

第1回WPCTは1994年にインドのニューデリーで開催され、第8 回は2022年、アメリカのワシントンD.C.で開催されました。当時の米国下院議長ナンシー・ペロシ氏、米国下院議員ジム・マクガバン氏をはじめ、28か国から約100人の参加者が集い、チベットへの明確な支持を示しました。さらに、アメリカの「中国問題に関する連邦議会・行政府委員会(CECC)」によってチベットに関する議会公聴会も開かれ、そこで国際法教授で和平・対話促進団体(Kreddha)執行会長のマイケル・ヴァン・ウォルト・プラーグ教授、そして香港城市大学のラウ・ホンシアン元主任教授が、チベットが歴史的に中国の一部ではなかったという研究結果を発表しました。

2024年、アメリカ議会は歴史的な「チベット・中国紛争解決促進法(Resolve Tibet Act)」を可決しました。私は、この極めて意義深い法案を支持してくださった超党派の議員の皆様に、心より感謝申し上げます。 この法案は、「チベットは古代から中国の一部であった」とする 中華人民共和国(PRC)の主張に異議を唱え、チベットがかつて独立国家であったという歴史を強調するものです。この歴史的事実は、ダライ・ラマ法王の最新著書『声なき者の声(Voice for the Voiceless)』にも明確に述べられています。 また、今年4月にオランダ下院が可決したチベットに関する決議についても、特にダライ・ラマ法王の転生と、EUによるチベット担当特使の任命への言及に重点を置いた決議に対し、感謝と歓迎 の意を表します。 この決議に続き、今後さらに多くの国でチベットを支持する決議が採択されることを期待しています。

豊かな宗教的・文化的遺産を持ち、人類の幸福に貢献する可能性を秘めたチベットは、現在、中国政権の手によって文化的ジェノサイドと、アイデンティティの完全消滅という差し迫った脅威に直面しています。生態的に豊かで非常に繊細なチベット高原は、鉱山開発やダム 建設によって無制限に搾取されています。チベットの子どもたちは、母語を学ぶ生得的な権利を奪われ、植民地的寄宿制学校に強制的に送り込まれています。チベット人は基本的人権を否定され、政治犯たちは拷問を受け、命を奪われることさえあります。

中国による残虐行為は、いまや国境を越えて拡大しており、その越境的な弾圧についての多数の報告が、カナダ、いくつかのヨーロッパ諸国、そして50を超える人権団体を含む多くの国や国際機関によって認識され、非難されています。 イギリスの国家サイバーセキュリティセンター(NCSC)は、チベット人、ウイグル人、台湾人コミュニティを標的とした スパイウェアについて、注意喚起を発しています。さらに、Meta(旧Facebook)の最新の脅威レポートでも、中国がダライ・ラマ法王やチベット亡命コミュニティを偽情報や中国のプロパガンダによって攻撃しようとしている実態が報告されています。

2024年3月28日、中国政府の対外広報活動を統括する機関である中国国務院新聞弁公室は、またしてもチベットに関する白書を発表し、中国共産党(CCP)がチベット仏教の高僧の転生を管理していると主張しました。また、「チベットは発展している」と訴え、ダライ・ラマ法王と西側諸国がチベットを中国から分離させようとしていると非難しています。しかし、これらの主張はすべて、チベットで行われている非人道的な残虐行為を正当化し、チベットの歴史を書き換えることで、習近平国家主席の拡張主義的野望を満たすために捏造されたものにすぎません。 実際には、厳格かつ抑圧的な政策のもとで、多くのチベット人 は自らに火を放つほどの絶望に追い込まれています。2009年以降、既に157件の焼身抗議が確認されており、チベット社会のあらゆる立場の人々がその貴い命を犠牲にしています。

このような情勢の中で、今回の2日間の会議では、ご列席の皆様に積極的なご参加を期待しています。権威主義的な中国共産党(CCP)に立ち向かう対抗策だけでなく、中国とチベットの双方にとって利益となる形でチベット問題の解決に向けて、中国共産党の指導部がより責任を持つよう促すための国際的・外交的努力の促進方法についても、議論を深めていただきたいと考えています。

ここで改めて、私たちが掲げる「中道のアプローチ(Middle Way Policy)」への揺るぎないコミットメントを強調したいと 思います。また、チベット高原の環境的重要性と、中国による環境破壊の 影響について理解を深めることも、地球全体の未来を守るため に極めて重要です。

ダライ・ラマ法王は長年、日本で「チベットに関する世界国会議員会議を開催すること」を望んでおられました。したがって、本日それが 実現したことに、私は深い意義を感じています。 そして、今年ダライ・ラマ法王が90歳という大きな節目を迎えられることを記念し、その法王の輝かしい歩みと世界に与えた計り知れない影響を称えることを誇りに思います。この会議は、慈悲・平和・人間的価値を促進するためのダライ・ラマ法王のたゆまぬ努力だけでなく、何十年にもわたる精神的・人道的リーダーシップを通して築き上げられた揺るぎない遺産を称えるものです。この記念行事を、法王の叡智、不屈の精神、そして人類の幸福への揺るぎない献身に敬意を称える機会といたします。

私の話を締めくくるにあたり、この会議が触媒としての役割を果たし、意思決定者の皆様がチベット支援に対してより大きな情熱と献身を持つきっかけとなることを願っています。 皆様には、それぞれの国において、チベットが直面している差し迫った問題について、積極的に声を上げていただくようお願い申し上げます。 また、ここ東京でこの会議を実現するうえで極めて重要な役割を果たしてくださった、日本・超党派のチベット国会議員連盟の皆様に心より感謝申し上げます。 本当にありがとうございました。

 

オリジナル記事


                             (翻訳:Yuki)