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懐柔策にチベット民衆なびかず

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(2007年11月19日 産経新聞)

チベット仏教の最高指導者、ダライ・ラマ14世は19日、産経新聞との会見で、このところ中国政府によるチベット民衆への弾圧が一層激しさを増していることを明らかにしたが、これは中国政府によるチベット民衆への懐柔策が奏功していないことを示している。中国政府は、威信をかけて開催する来年8月の北京五輪を前に、強権で事態の乗り切りを図ろうとしているようだ。

ダライ・ラマは今年6月の中国政府との交渉について、「全く進展がなかった」と語ったうえで、「交渉決裂以来、中国側の態度が硬化している」と指摘した。

ダライ・ラマによると、今年8月に四川省のチベット族居住地区で行われた祭りで、「ダライ・ラマの帰還を願う」と大声で叫んだ1人のチベット族男性が当局に逮捕されたことをきっかけに、数百人の民衆と警官隊が衝突、多数の民衆が殴打された。その数日後、軍兵士ら計約1万人が出動し、住民4000人の村を包囲し、不穏分子を次々と逮捕したという。

また、ダライ・ラマが米議会から議会名誉黄金章を授与された当日の早朝、ラサでチベット仏教の僧侶数百人が受章を祝う活動を行っていたところ、4000人の武警や軍兵士が出動し、多数の僧侶を殴打し、数十人の僧侶が逮捕された。

中国政府はダライ・ラマのインド亡命以来、チベット民衆に対して厳しい思想統制を敷き、僧侶を中心にダライ・ラマを否定する思想教育を強化してきた。その一方で、膨大な経済支援を投入するなど“アメとムチ”を使い分け、チベット民衆の懐柔に努めてきた。

しかし、チベット亡命政権によると、毎年2000人ものチベット民衆が自らの生命を懸けて、同自治区などから国外に脱出し続けている。また、中国当局の厳しい監視下にもかかわらず、ダライ・ラマを慕う民衆の活動は活発化しており、暴動やデモなどもしばしば伝えられる状態だ。

中国政府は今年9月1日、チベット仏教で「活仏」と呼ばれる高僧の転生に申請許可制度を導入しており、来年8月の北京五輪を前に、今後も締め付けを強化するものとみられる。