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台湾政府、ダライ・ラマ法王の訪台を許可

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(2009年8月27日 AP通信)

台湾の馬英九総統は木曜日、ダライ・ラマ法王が台風8号の生存者らを慰問するために台湾を訪れることを許可、中国の怒りを招きかねない意外な動きを見せた。

対中関係の改善を優先事項とする馬英九総統は昨年12月、チベット仏教最高指導者ダライ・ラマ法王による訪台の計画を拒絶しており、中国政府の怒りを鎮めるための動きとみられていた。

台湾政府は、8月8日と9日に台湾を襲い670名以上の犠牲者を出した台風モラコトへの対応が遅すぎたとして非難にさらされており、被災した自治体の野党政治家らは生存者を慰めるためにチベットの精神的指導者を台湾に招待していた。

ダライ・ラマ法王の招待によって、馬総統は中国の怒りを招く危険を冒すか、もしくは中国政府の方針に従っているとして野党にさらなる攻撃材料を与えるか、という狭間で苦境に立たされることとなった。馬総統は木曜日、嵐による土砂崩れで倒壊した南投県の学校を訪問した際に次のような回答を述べた。

「死者の冥福および生存者の幸福のために祈ることを目的としてダライ・ラマ法王が訪台することを許可する。」

中国の台湾事務弁公室や中国外交部は直ちにコメントを出していない。

中国政府は、ダライ・ラマ法王が中国におけるチベット地域の自治を推進する「分離主義者」であると見なし、ダライ・ラマ法王の知名度を上げる外国への訪問に反対している。中国と台湾は長年ライバル関係にあったものの、何十年にもわたる確執の後、親密なビジネスを発展させることで急速に関係を改善させていた。しかし、今回台湾がダライ・ラマ法王の訪台を許可したことにより、その関係が損なわれる可能性がある。

1949年の内乱によって分裂したにもかかわらず、中国は台湾が自らの領土であると主張している。

台風8号による被害に見舞われた7つの自治体の首長らは水曜日、ダライ・ラマ法王を8月31日から9月4日に被災地へ招待する内容の共同声明を発表。7自治体の首長ら(全員、野党である民主進歩党出身)は、過去50年間の台湾で最多の死亡者数を出した台風に対する政府の対応が失敗であったとして非難されている馬総統への批判の一環としてダライ・ラマ法王を招待した。

チベット亡命政権(ダラムサラ)のスポークスマンであるテンジン・タクラ氏は、過去12年間に3度台湾を訪問したダライ・ラマ法王は「おおむね」招待を承諾していると水曜日に述べていた。

15か月前に総統に就任して以来、馬総統は先任者らによる反中政策の多くを保留、長さ160キロメートルの台湾海峡を越えて中国との経済的連携を強め、中国政府と平和条約を締結することも口にしていた。

馬総統のスポークスマンWang Yu-chi氏は、ダライ・ラマ法王の訪台が完全に宗教的なものであり、政治的な含みは一切ないとしている。

「我々は、ダライ・ラマ法王が集団での祈りに参加する目的で訪台するのを歓迎します。」と記者に話し、ダライ・ラマ法王の訪台は「人道的、宗教的配慮のためであり、海峡を隔てた関係に悪影響を与えるものではないと考えている。」と述べた。

ダライ・ラマ法王の滞在中に馬総統がダライ・ラマ法王と会合を行うかについて、Wang氏は明言を避けている。

対中関係の改善を目指す馬総統の方針と、人口2300万人の台湾の正式な独立を強力に支持する民主進歩党の方針は全く対照的である。

中国は、台湾と中国の分裂を恒久的なものにしようと試みれば戦争につながると繰り返し警告しており、台湾の独立を支持する民主進歩党の姿勢は中国政府を激昂させるものである。

台湾とチベットの歴史は似ている。双方とも、自らの支配下にあるべきだと中国政府が主張している地域である。1959年の反乱が失敗に終わり、ダライ・ラマ法王は亡命したにもかかわらず中国は現在もチベットを支配しており、チベット仏教最高指導者によるさらなる自治権の要求を拒否している。


(翻訳:櫻木晴子)