(2004年5月23日 ロイター)
(北京)5月23日、中国政府は、亡命中のチベットの精神的指導者ダライ・ラマに対して、母国への帰還を可能にするような政治的解決の可能性を否定し、チベットにおける自治権確保の展望を放棄するよう促した。
中国政府は長々とした「白書」の中で既存の政策を改めて強調し、香港やマカオに与えられたような「一国ニ制度」方式に類似した自治をチベットに対して認める可能性を除外した。新華社通信によって伝えられた白書は、1997年に返還された旧英国・ポルトガル領植民地を引き合いに出しながら、「チベットの状況は香港やマカオの状況とは完全に異なる」と述べている。
「古来チベットは、中央政府が事実上の統治権を常に行使してきた不可分の領域だ。したがって、主権の移譲に関する問題はそもそも存在しない」
中国軍は1950年にチベット対して共産党支配を要求し、ダライ・ラマはその9年後、中国政府に対するチベット民族蜂起が失敗に終わった後、国外に逃れた。中国はチベットを領域の一部として主張し、宗教的指導者であるダライ・ラマを分離主義者として非難している。1959年の亡命以来、インドにおいて亡命政府を樹立したダライ・ラマは、「チベットのために、独立ではなく、より大きな意味での自治を擁する中国とチベット相互にとって望ましい解決を望む」と述べている。
中国政府の姿勢が幾分和らいだ2002年以降、ダライ・ラマの使節が対話構築のためのプロセスの一環として何度か中国を訪れた。今年4月にダライ・ラマは、数か月以内にまた使節を送ることになるだろうと述べている。しかし、陳水扁の台湾総統就任式にダライ・ラマが大使を送ったことに対して怒りを露にした中国政府は、(白書の中で)老いたるダライ・ラマが中国政府の要求を少しも満たしていないと次のように示唆している。
「ダライ・ラマが現実を直視して状況に対する的確な判断を下し、独立を望む彼の立場を完全に放棄した上で、残された時間の中で中国とチベット地域の発展にとって有益な仕事を成就することを望む」