ロサンジェルス・タイムス
昨年、世界銀行は、中国政府への4千万ドルの融資を暫定的に決定した。この融資は、多くの貧しい中国人をチベット高原へ強制的に入植させる計画に使われるもので、議論と困惑の原因となっている。
チベットの宗教的指導者であるダライ・ラマは、この入植計画を「文化的虐殺」であると言明している。彼の生まれた土地もこの計画により影響をうけることとなる。
アメリカとドイツの世界銀行の代表は、この融資への反対に投票しており、また、世界各地のチベット支援グループは、チベット文化への侵略行為であると反対している。独立の専門委員会は、世界銀行の職員が、この融資決定にあたり世界銀行の基本的な方針に違反していると結論をだしている。
7月上旬に世界銀行の常任理事会においてこの融資計画の投票が予定されているが、この計画は破棄されるべきである。
世界銀行は、過去20年にわたり中国に対して330億ドル以上を融資してきた。これは「政治的また文化的な事情」という中国だけに適用されているらしい条件に基づく決定によりおこなわれてきた。
この入植計画は中国西部青海省の荒地に住む貧しい5万8千人の中国人を、強制的に、チベット人が母国の一部であるとみなしている青海省の近隣地域に移住させるものであるが、世界銀行は中国政府のこの計画に対して何の懸念もあらわしていない。
メディアに洩らされた報告書の一部によると、再調査委員会は世界銀行のこの融資計画には多くの問題点があると指摘。同報告書によると、世界銀行は入植する中国人や、入植により放牧地帯が変化してしまうチベット遊牧民への意見聞き取り調査を行っていない。また、世界銀行はこの計画の環境評価規定に従っておらず、長期間でのこの計画の環境への影響も考慮していないという。
60人にのぼるアメリカ議会議員と世界銀行上層部からの要請にもかかわらず、公表され世論の吟味を受けるべきこの報告書は、24人から成る委員会の週末の決定により、世界銀行の最終決定が下された後に発表されることになった。
世界銀行は、最近の密室での決定や説明責任の不足により大きな非難の的になっている。この報告書の公表を遅らせるような決定は、世界銀行の悪いイメージを増大させるだけである。さらに重大なことに、この報告書は「この入植計画への融資は不適切である」と明言しているというのだ。
中国人(漢民族:中華人民共和国の92%を占める)の入植は、長期的に見てチベット人自身の経済圏からの流失という危険を生む可能性がある。これは世界銀行が考慮していない事項である。また、この計画は、中国人とチベット人との軋轢を深めることになりかねない。
今、世界銀行は、批評的なこの入植計画の独立評価報告を聞き入れ、融資を取りやめるべきである。