2001年12月7日
ダラムサラ
モーガン・スタンレー社
経営最高責任者
フィリップ・J・パーセル様
チベット中央行政府(チベット亡命政権)は、御社が2001年12月11日よりニューヨーク株式取引所で取扱い開始予定のチャルコ社の1回目の投資申し込みに関して、深い懸念をもっております。
チャルコ社の業務活動は、チベットの生態系のみならず、チベットに暮らす人々にも悪影響をあたえることが予測されます。従って、我々はモーガン・スタンレー社が、(チャルコ社の業務活動について)チベットとチベット人への潜在的なダメージが、精査、評価され、最終的には実行されるべきでないと結論されるまで投資を延期するよう求めます。
チベット中央行政府は、チベットでの開発及び投資について「チベット人への利益となる計画を支持し、不利益となるものに対しては反対する」という明確な立場をとっております。
我々は、チベットでの国際的な開発計画及び持続可能な投資を促進する為にガイドラインを設けました。このガイドラインは、チベットに関心を持つ潜在的な投資家、企業及び助成団体が、どのような計画が奨励されるべきか、もしくは反対されるべきかを決定することを補助します。このガイドラインの目的は、チベット高原において、チベット人がその土地と天然資源を管理する開発事業に参加する能力を高めることができる継続可能な開発事業を育成することです。
従って、チベット人のエンパワーメント、教育の改善、チベット人への適正な雇用の提供、環境保護、チベットの文化・アイデンティティ・言語の促進、その他チベット人の生活状況の改善をもたらす開発計画が有益であるとしています。
これに反し、中国人のチベット地域への移民、チベット地域での相当数の中国人の雇用創出、チベット内の天然資源の涸渇、チベット人以外への土地の所有権移譲、チベット文化及びアイデンティティへの浸食、チベット人への経済的不利益をもたらす開発計画は明らかに有害であり、停止されるべきであるとしています。
明らかに、現在の状況下ではすべての開発計画がチベット人にとって有益であるとは言えません。従って、我々はチベットでの経済開発に関わるすべての外国企業と外国投資家に対し、我々のガイドラインを考慮した上で、彼らの業務活動を検討することを求めています。チベット社会と環境に有害な計画は、直ちに業務を停止し改めるか、中止されるべきであります。
我々の御社への懸念は、チャルコ社への経済的支援です。具体的にはチャルコ社の東チベット地区アムドでの事業計画です。チャルコ社の主要なアルミニウム精錬工場は、青海省西寧にある青海精錬工場です。チベット中央行政府が主に懸念するチャルコ社のアムドでの事業がもたらす影響は以下の通りです。
- フッ素化ラドンガスの排出による近隣地域への環境汚染。フッ素化ラドンガスは、植物体系及び土着動物に有害である。
- チベット地域への中国人移民・労働者の流入促進。単純労働者としての少数のチベット人の雇用
- 水力発電の需要の増加により、ダムの建設が行われる可能性。ダム建設による川底の浸食及び(ダム建設地にある)チベット人居住地の強制移動。
- 海興精錬工場所有地の中国国有地への譲渡。
チャルコ社の事業計画書に記載されている、ワーリーケミカル&ミネラル社(Worley Chemicals & Minerals Pty Ltd)が実施した環境調査によると、青海省でにおける有害物質の空気中への排出は、中国政府が規定する基準を越えていることが明らかにされています。
チベット中央行政府は、御社に対し、ワーリーケミカル&ミネラル社が実施したすべての分析結果及び報告を一般と我々に、チャルコ社が確実に公表するよう働きかけることを求めます。
それにより我々は、チャルコ社の事業がチベットの環境にどのような影響を与えるか、正確に把握することができます。
要約報告では、チャルコ社の工場が与える社会的な影響が検討されており、この検討結果は公表され、チャルコ社の事業がチベットに有害でないことを精査すべきであります。
事業計画書では、「海興工場が占有する共同所有地に関して、管轄機関より土地の使用が許可されるかリースされる以前に、共同所有が国有地に転換されるように所管の行政機関に申請されている」とされています。
チベット中央行政府は、該当する(アムドの)土地がチベット人所有から国有化にされることに対し懸念を抱いています。これは開発計画の為に作成された我々のガイドラインの規定に反するものです。
チベット人は、チベットの環境破壊とチベット人の権利剥奪を助長する全ての計画に対し、積極的に反対行動を起こすということをご理解ください。
チベット亡命政権内閣 主席大臣
サムドン・リンポチェ