(2008年2月13日 ロイター通信)
(北京)無宗教を掲げる中国共産党が認定した第11世パンチェン・ラマが、大臣相当ランクの国内最年少の閣僚に就任する見通しだ。
中国政府と、チベットの精神指導者ダライ・ラマ法王—1959年、中国共産党の支配に抵抗する民族蜂起が失敗に終わった後、インドへ亡命した—は、1955年、パンチェン・ラマ10世の転生者として、それぞれ別の少年を認定していた。パンチェン・ラマはチベット仏教で第二の地位を持つ精神指導者である。
ダライ・ラマが選んだ少年(当時6歳)は、行方不明となり公の場から姿を消した。人権擁護団体は、彼を世界最年少の政治犯と呼んでいる。
中国政府が選んだ少年ギャルツェン・ノルブは、今年2月13日、18歳の誕生日を迎えた。
「彼はいまや成人です。選挙権も被選挙権も持っています。」と、中国政府の宗教ならびに少数民族政策に詳しい関係筋が、匿名を条件にロイター通信に語った。
政府のチベット政策に詳しい別の関係筋は、「彼は早ければ来月にも中国の全国人民代表者大会(全人代)の常任委員になるだろう。」と述べた。
全人代、すなわち中国の国会は、3月5日に年次集会が開催される見通しだ。全人代の常任委員は、国会の大臣に相当する。
全人代の広報官は、この件に関するコメントを拒否した。
ギャルツェン・ノルブの就任が確定すれば、欧米社会から激しい非難を浴びることは必至であろう。
「これは、そううまくは行かないでしょう。」とコロンビア大学(ニューヨーク州)のチベット学研究者、ロビー・バーネット氏は言う。
「これでは、少年に対する過剰な管理主義に見えてしまいます。少年自身の個性や政治手法を発揮する余地を与えて、彼が本心からチベット人の利益の為に貢献する思いがあることを示さない限りね。中国側がチベット人の利益として決め付けている事柄を彼におしつけるのではなく—。」
中国がギャルツェン・ノルブ少年の高官就任にむけた動きを見せる中、先月、彼は全人代委員長の呉邦国氏と会っている。
呉氏はギャルツェン・ノルブ少年に、愛国的なチベット仏教を展開しなさい。・・・そして、母国や国家の統一を守りなさいと伝えた——これは、中国共産党の国家的方針に従えと言っているのと同義である事は言うまでもない。
党内幹部関係筋は「パンチェン・ラマ11世は、いずれ副委員長になるだろう。」と話している。
全人代副委員長は、副首相に相当する。もしこれが決定されればギャルツェン・ノルブ少年が国家指導者の一人になることを意味する。
2月9日は、1959年に、21歳にして党副委員長に就任した先代パンチェン・ラマの生誕70周年記念日に当たる。零下を下回る気温の中、数千人もの群集が沿道を埋め尽くし、「王女」とされる先代パンチェン・ラマの娘アブシ・パン・リンジンワンモに歓迎の挨拶した。
彼女は、500台以上のオートバイの護衛に付き添われ、父の生誕地である青海省北西部ウェンドゥー村へと向かった。
北京政府は、中国側がダライ・ラマの認定した少年の身柄を拘束したとする非難に対し、これを否認しており、少年とその家族は海外のメディアに煩わされたくないと願っているだけだと弁明している。
チベット人のあいだでは、北京政府に指名され、2006年の仏教会議で世界的ひのき舞台にデビューを果たしたパンチェン・ラマは、偽者だとされている。
昨年ラサでは彼が自殺したとの噂が流れた。また別の説では彼は国外へ逃亡したとも言われている。