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チャデル・リンポチェの刑期に関する新情報

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2001年8月30日
チベット・インフォメーション・ネットワーク

チャデル・リンポチェの所在と刑期に関して、新しい情報が明らかになった。

チャデル・リンポチェはパンチェン・ラマ生まれ変わり探索の責任者であったチベット仏教高僧であるが、先週得られた公式確認情報によれば、まだ刑務所で服役中とのことである。

イギリス外務連邦省のスポークスマンによれば、中国政府は、チャデル・リンポチェは1996年に禁固6年を宣告されたので、2002年1月までは釈放されないと、2月にイギリス政府に伝えていたということである。また同スポークスマンによれば、中国政府は、チャデル・リンポチェが四川省で服役しており、「健康状態は良好である」ことを認めたという。

チャデル・リンポチェに関してイギリス政府に伝えられた情報は、師が1997年に禁固刑を宣告されたとした先行情報と矛盾する。先の情報では、刑の確定は、今回イギリス外務連邦省に伝えられた情報の1年後であった。

また、刑期に関する他の情報とも矛盾する。チャデル・リンポチェは1995年5月17日に「失踪」したので、今年5月には釈放されるはずであると、一般に思われてきた。中国は、師の拘留を1997年までは認めていなかった。

TINは先週、4人のポーランド国会議員が、今月初めにラサでチベットの役人から伝えられた情報を報道した。シガツェのタシルンポ僧院の前僧院長であった62歳のチャデル・リンポチェは、「パンチェン・ラマと想定される少年の名前を、当局が承認する前に公表して国家機密を漏洩した」ため、「依然服役中である」ということである。

チャデル・リンポチェは、1995年5月17日に「失踪」した。ダライ・ラマが、チベット少年ゲンドゥン・チューキ・ニマをパンチェン・ラマと認めたと発表した3日後のことである。当時チベットからの報告では、チャデル・リンポチェの友人、家族、タシルンポ僧院の同僚僧たちは、師の所在をまったく知らないし、連絡を取ることもできないということだった。1995年8月、師の失踪の3ヶ後に、中国外務省のスポークスマンは、チャデル・リンポチェの拘留を否定して、師は「病気で入院中」であると語った。

チャデル・リンポチェが拘留中であると、初めて正式発表されたのは、1997年5月だった。中国政府の公式通信社である新華社が、チャデル・リンポチェは、1997年4月21日に、シガツェの中級人民法院によって、禁固6年を宣告されたと報道したのである。(新華社、1997年5月7日)

この新華社の報道ではまた、説明はないまま、「上記の刑は5月5日(1997年)から執行された」としていた。刑の執行開始が1995年5月としても、1997年の4月または5月としても、チャデル・リンポチェの6年の禁固刑が2002年1月に終了するという情報とは矛盾する。

中国の刑法(47条)によれば、禁固期間が正式に確定して宣告される前に拘留されていた場合は、未決拘留期間が禁固刑期に算定される。

TINが1987年以来のチベット人政治犯の服役状況を調査したところでは、通常この法的措置が適用されるため、最初に拘留された日から刑期に数えられ、また、刑期終了後まで拘留されることもない。

チャデル・リンポチェ釈放を2002年1月とイギリス政府に伝えたことは、中国政府当局が、6年の禁固期間を、さかのぼって1996年1月から執行していることになり、師の1995年失踪後の7ヶ月間を禁固期間に算入していないことになる。

さらに、裁判の日付けが2通りに異なることについても、何ら明確な説明はされていない。イギリス側は、1996年だったと伝えられたわけだが、これは、新華社が1997年5月7日に発表していたよりも1年前ということになる。これらの矛盾点が、中国政府当局の、故意ではなく単なる間違いによるのか否かは不明である。

チャデル・リンポチェの刑期に関する情報の矛盾は、師がチベット自治区ではなく四川省の刑務所に収容されていることと合わせて、中国側がこの件に関して政治的に敏感になっていることを示すものであるかもしれない。師の所在についてのこの情報は、2月の対中国人権対話会議での質問に対する回答として、イギリス政府に伝えられたものである。

チャデル・リンポチェの健康状態は「良好」との発表は、中国政府が、1995年5月の失踪に続いて、病名を特定せずに「病気」であると伝えて以来、師の健康状態に関する初めての公式発表である。

(註)

  1. ポーランド代表団に伝えられた公式発表に関する情報と、チャデル・リンポチェの経歴については、TIN最新ニュース、2001年8月23日、チャデル・リンポチェ「依然拘留中」を参照。
  2. 中国刑法47条は次のように規定している。
    「禁固期間は、判決が執行される日から始まるものとして数える。刑の執行前に拘留されていた場合は、拘留1日につき1日を禁固期間から差し引く」