2002年6月9日 北京(AFP通信)
日曜日に人権団体が伝えたところによると、チベットの首都ラサで孤児院を経営し教師でもあったチベット人2人が、スパイ行為および国家の安全を脅かした罪で長期の刑を宣告された。
ロンドンを拠点とするチベット・インフォメーション・ネットワーク(TIN)は、最近のチベットからのニュースにより、ジグメ・テンジン・リンポチェとニマ・チョードンの両名が長期の刑に服しているとのことがわかった、と述べた。
ジグメ(またの名をバングリ・リンポチェとして知られる)とニマは両名とも1999年にスパイ行為および国家安全を脅かしたとして逮捕されているとTINは述べているが、彼らの逮捕についての情報を得ることはTINにも難しい。
「このケースは近年ラサで起きた拘留の最も合点のいかないケースのひとつであり、そのためにチベットの内部と外部の両方で多くの調査を進めている」と北京で発表されたTINの声明に書かれていた。
ギャツォ・チルドレンズ・ホームというその孤児院は、先の2名の先任教師らが逮捕された後、閉鎖された。かつてそこには3歳から15歳の約50名の孤児がおり、そのほとんどはチベット各地の出身であると伝えられていた。
その孤児院のスポンサーの多くは外国人であった。リンポチェは1990年代にインドを少なくとも1度は訪れており、また米国にも渡っている。
TINは、ジグメとニマは孤児院の2番目の学校建設に携わっていた建設業者であるタシ・ツェリンと何らかの関係があるとされたための逮捕であるとみている。
タシ・ツェリンは、ラサでの少数民族体育大会中の1999年8月、爆発物に点火しようとして抗議行動を起こした。彼は同時にポタラ宮殿前広場に掲げられていた中国国旗を降ろそうとも試みた。
彼は2000年に獄中で死亡しているが、過酷な虐待の末であったとされている。
一方、他の報告によると、ジグメは建設会社との抗争に巻き込まれたとも伝えられており、その建設会社が彼を密告したとされている。
他の報告では、ジグメは汚職と不正行為と同時に他の犯罪活動に巻き込まれたともみられているとTINは述べている。
以前その学校の生徒だった人によると、スタッフと生徒らは、ジグメは学校建設をめぐって逮捕されたと教えられていたとのことである。
しかし、最近伝えられたジグメとニマに対する告発からすると、このケースには政治的側面があるのは確実である。「スパイ行為」や「国家安全を脅かす」とした告発は「政治的」犯罪に対する常套手段だからだ。
ジグメとニマの逮捕に続き、警察はその学校のすべての寝室や教室を捜査し、学校の銀行口座を凍結させた。
孤児院の教師と世話人ら、少なくとも5人が逮捕されたと言われており、何人かは獄中で刑に服しているとのことである。すべてのスタッフはその後、ゲレグ・ニマというチベット人の美術教師を除き解放された。
子供達の中には出身地方に連れ戻された者もいたが、そうでない者はどこにも身寄りがなく、結局ラサの街頭で物乞いとなった。
チベット自治区当局は日曜にはコメントを差し控えた。
中国は1951年にチベットを侵略して以来、チベット人の宗教的、文化的行為を抑圧し、中国の統治に対するいかなる不満の表現をも抑圧しているため、国際的な批判を受けている。