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チベット・中国紛争解決促進法、外交政策見直しの時宜を得た推進力に  

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2024年8月13日

チベット・中国紛争解決促進法は、チベットに対する米国の政策を定義し、中国の主張に異議を唱え、チベットの権利と国際的解決に向けた世界的な行動を促進するものである。

ジャパンフォワード(JAPAN FORWARD)2024年8月13日のアリヤ・ツェワン・ギャルポ氏による記事

ジョー・バイデン大統領は、2024年7月12日にアメリカのチベット政策を強化する「チベット・中国紛争解決促進法」に署名した(写真提供:Tibet.net)

2024年7月、チベット問題と、その解決策に関する米国の方針を決定づける重要な節目を迎えた。ジョー・バイデン米大統領が「チベット・中国紛争解決促進法」に署名し、同法が7月12日に成立したのだ。この法律は、米国の対チベット政策と、自由と正義を求めるチベット人の闘いを明確に規定し、統治に導くものである。

この法律は、大きく6つの項目に分かれている。

  1. 簡易名称
  2. 認識内容
  3. 政府方針の表明
  4. 米国議会の総意
  5. 2002年制定チベット政策法の修正
  6. チベットに関する偽情報に対抗するための資金が入手可能

「チベット・中国紛争解決促進法」は、「チベット問題解決法」として広く知られている。どちらの呼び方も、この法律の目的と必要性を簡潔に伝えている。この法律は、チベットと中国共産党(CCP)政権との間で続いている紛争を解決することを目的としており、これは中国が、長年、偽情報によってこの問題の本質を歪め、消し去ろうとしていることに対抗するための極めて重要な法律である。

歴史的真実と外交的行き詰まり

法律の第2条には、2002年から2010年にかけての交渉が、どのように失敗し、なぜ不可能であったかを説明する12の条項がある。これは、ダライ・ラマが古代からチベットは中国の一部であったと認めるという非論理的な前提条件を中国が主張したためである。この条項の第5項には、「米国政府は、チベットが古代から中国の一部であったという立場をとったことはない」と書かれている。

チベットは文化的、宗教的、政治的に長い歴史を持つ独立国である。1950年に中国がチベットを占領して以来、中国は一貫して、チベットの歴史を歪曲するなど、チベットにおける自らの存在を正当化するためにあらゆる手段を試みてきた。米国政府は、チベットが古代から中国の一部であったことは一度もないと繰り返した。世界中の民主国家は、この歴史的真実を支持し、認識すべきである。

そうすることで、中国は、高圧的な態度と圧力をかける策略から目覚めるだろう。そして中国は、チベットの軍事占領が残虐で違法であり、国連憲章に違反しているという現実を受け入れざるを得なくなるだろう。

承認、権利、偽情報への対抗

第3条には5つの条項があり、アメリカ政府の方針が述べられている。チベット人が宗教的、文化的、言語的、歴史的に明確なアイデンティティを持っていることを認めている。さらに、チベット問題は国連憲章を含む国際法によって、前提条件なしの平和的手段と対話によって解決されなければならないと強調している。

2024年6月19日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラのダライ・ラマ法王邸にて、米国議会代表団との会談開始前にジム・マクガバン下院議員(民主党)に挨拶するダライ・ラマ法王(写真提供:ザムリン・ノルブ師/dalailama.com)

第2条の条項はさらに、市民的・政治的権利に関する国際規約と、経済的、社会的、及び文化的権利に関する国際規約に言及しており、これらの規約は自決権を定めている。この権利により、チベット人は「自由に政治的地位を決定し、自由に経済的、社会的、文化的発展を追求する」ことができる。

 歪曲されたチベットの歴史

第4条は、チベットが古代から中国の一部であったという中国の主張を、「歴史的に不正確」であるとして否定している。また、アメリカのパブリック・ディプロマシー活動(広報文化外交活動)として、「中華人民共和国政府および中国共産党が発信するチベットに関する偽情報に対抗する」としている。これには、チベットの歴史、チベット人、チベットの制度、ダライ・ラマに関する偽情報への対処も含まれる。

これは、チベットの歴史や宗教文化を歪曲することをやめるようにという、中国に対するアメリカ政府の明確なメッセージである。さらに、中国に対し、ダライ・ラマ15世の生まれ変わりを含む、チベットの精神的指導者の選定に干渉しないよう求めている。

中国の主張への異議

同法はまた、チベットの地理的地域と構成を定義している。従来のウーツァンアムドカムの3省の下にあるすべてのチベット地域をチベットと指摘したのだ。これは、チベットを中国のいわゆる「チベット自治区」に限定するという中国共産党の政策にかなりの打撃を与えるものだ。さらに、「チベット」という呼称を消し去り、「シーザン」に置き換えようとする中国政府の企みにも異議を唱えている。

「チベット問題解決法」は、国際法と国連憲章に従い、平和的対話を通じてチベットと中国の紛争を解決するというアメリカの方針によるものである。中国のチベット占領は違法であり、チベット問題はいまだ未解決の国際問題であるとしている。重要なのは、国連加盟国にはこの問題を解決する義務があるということだ。

偽情報と軍事化

同法は、中国が無視してきたチベットに関する国連決議にも言及している。また、中国に対し、チベットとチベット人に関する偽情報の流布をやめるよう警告している。中国は、チベットの不法占拠とチベットの宗教問題への干渉を正当化するために、そのような偽情報を利用している。

中国政府によるチベット高原の軍事化と、インドネパールブータンの国境で見られる不安定な状況は懸念される。インド太平洋地域と東南シナ海における中国の強力な軍事的存在は、さらに警戒を引き起こしている。台湾尖閣諸島に対する中国の絶え間ない脅威もある。いずれもアジアと世界の平和と安定にとって良い兆候ではない。

2024年6月19日、インドのダラムサラにあるダライ・ラマ法王邸で行われた米国議会代表団との会合で演説するダライ・ラマ法王(写真提供:テンジン・チュジョル/dalailama.com)

 グローバルな行動への呼びかけ

国際社会が暴力、不正、抑圧のない世界を求めるのであれば、行動を起こさなければならない。中国のような破壊的な権威主義の政権が、近隣地域で腕ずくで覇権主義的な策略を続けることを許すことは容認できない。世界の平和と安定に障害をもたらしている独裁政権を手なずけ、制御する時が来たのだ。民主国家の国々は、米国のイニシアチブを取り入れて、対中政策を見直さなければならない。

「悪人は、灰を支配するために自分の国を焼き払うだろう」中国の伝説的な軍事哲学者である孫子の言葉が真実であるとすれば、それは我々全員にとっての警鐘である。インド、日本、欧州連合(EU)は、ヨーロッパとアジアで率先してそれぞれのチベット政策を改め、自国と世界を焼き尽くそうとする火竜から主導権を奪うべきである。

オリジナル記事


(翻訳:稲田かおり)