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ダライ・ラマ法王特使ケルサン・ギャルツェン氏、東京で国会議員と会見

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(2009年5月25日 Tibet.Net )

ダライ・ラマ法王日本代表部事務所の招待で法王特使ケルサン・ギャルツェン氏が5月19日から25日の日程で日本を訪れた。

来日第一日目、特使は日本テレビから40分にわたり独占インタビューを受け、その模様は同日夜、放映された。その中でケルサン・ギャルツェン氏は、中国指導部との交渉の経過およびチベット側の提案に対する中国政府の反応について語った。その後全国紙の一つ産經新聞とインタビューを行い特使は中国指導部との対話の現状を説明した。

翌日ケルサン・ギャルツェン氏は日本外国特派員協会主催の記者会見に臨んだ。会見には国内外のテレビ、新聞、雑誌、ラジオ等各方面を代表しておよそ40名の関係者が集まった。

インタビューおよび記者会見の中で特使は次のように述べている。「私たちは中国政府の提案通り、昨年の11月、『全チベット民族が名実共に自治を享受するための草案』を中国政府に提出しました。この草案は真の自治に関する私たちチベット側の立場を明らかにし、チベット民族が要求する自治が中華人民共和国憲法に謳われた自治の原則に則って実現可能であることを明確に示すものです」

「残念ながら中国政府は私たちの提案に対して何ら見解を示すこともなく草案を全面的に拒絶しました。チベット側は未だに中国側の反応を待っている状態です。私たちは中国側がチベット問題に真剣に取り組む準備できればいつでもそれに応じるつもりです」

「日本は民主主義の国であり、開かれた法治国家です。日本経済の社会貢献にも目を見張るものがあります。そのような日本はアジアだけでなく国際社会の中でも手本として多いに尊敬されているのです。ですから日本はチベット問題の平和的解決を進める上でも重要な役割を果たしていける国なのです」

チベットと中国が決定的に意見を異にしていることは何かとの質問に対しケルサン・ギャルツェン氏は、中国指導部がチベット内部には何の問題もなく中国の統治のもとにチベット民族が幸福な生活を享受していると言い続けていることだ、と述べた。「これには私たちは賛同できません。チベット内部に問題がないとしたらチベットでこれだけの抗議運動が起きているのはなぜでしょう。チベット内部で続くチベット民族への抑圧はどう説明したらいいのでしょう」

「もう一つ双方の意見が食い違っている点は、中国政府が『ダライ・ラマ法王には法王個人の問題ならいざ知らず、チベット問題について語る資格はない』と言っていることです。ここには大きな見解の隔たりがあります。ダライ・ラマ法王は、問題にしているのは600万人のチベット人の自由と幸福のことであり、ご自身のことではないのだと常におっしゃっておられます」

特使ケルサン・ギャルツェン氏、日本外国特派員協会主催記者会見


「中国指導部はチベット民族特有の価値観や文化、宗教を理解、尊重しておらず、それが誤った対チベット政策に反映されています。強硬派にとってチベットの独自性は中国を脅かす分離主義のもとであり、厳しく取り締まらなければならない対象です。一方、中国の一般人民の方々はチベット問題への認識を深め、多くの知識人や法律家がチベットを支援して下さるようになってきました。私たちはそのような中国の人々に希望を抱いています」と、特使は語った。

特使はその他にも産經新聞、共同通信、チャイナ・ニューズウイーク、ラジオ・フリー・アジアなどの主要報道機関とインタビューや会見を行った。

同日午後、特使は三名の国会議員およびその秘書らと国会議事堂内で会見した。彼らは特使の来日を歓迎し、中国チベット間の対話の現状について熱心に話を聞いた。ケルサン・ギャルツェン氏は彼らに対して感謝の意を述べるとともに、2002年以降の中国指導部との8回にわたる公式会談の概要を説明した。議員らはチベット問題が日本国会で忘れ去られることがないよう努力していくこと、そして中国政府に働きかけをするよう日本政府に促していくことを約束した。

さらに議員らはダライ・ラマ法王の提唱する中道のアプローチに対し全面的な支持を表明した。話題はチベット内部で起きている環境破壊や、チベットへの核廃棄物の投棄についても及んだ。それはチベット内部だけの問題ではなくアジア全体の、ひいては国際社会の問題であり彼らも憂慮しているという。

来日三日目、ケルサン・ギャルツェン氏は渋谷のオリンピックセンターでおよそ200名のチベット支援者と一般の人たちを相手に講演を行った。さらにその翌日「宗派を超えてチベットの平和を祈念する僧侶の会」主催の結集会に早稲田大学石濱教授と共に参加し講演した。

ダライ・ラマ法王日本代表部事務所のラクパ・ツォコ代表は開会の挨拶の中で、「昨年チベット内部で騒乱が起きて以来、日本中の支援者や一般の方々がチベット問題に深い関心を示してくださっています。昨年11月に中国指導部が同意した対話プロセスに大勢の日本人も大きな希望を抱きました。しかし未だ対話には進行が見られず、実際何が起きているのか、そしてチベット側と中国指導部の意見の食い違いがどこにあるのかをお知りになりたいと思っていらっしゃる方が多くおいでになります。そこでダライ・ラマ法王日本代表部事務所はこの度多くの方々の疑問にお答えするために、ダライ・ラマ法王の特使、ケルサン・ギャルツェン氏を招いて2002年から始まったいわゆる『中国チベット間の対話』の現状について報告してもらおうと考えた次第です」と述べた。

どちらの講演も大変好評で質疑応答の時間には多くの人から意見が出された。ある参加者は、中国はチベット問題を内政問題だと言い続けているが、だからといってチベットの平和的抗議運動への参加者の命を奪い続けてもいいことにはならないだろう、と述べた。日本政府や国民にはチベット問題の平和的解決のために中国指導部に対してもっとできることがあるのではないか、との意見も出された。

ケルサン・ギャルツェン特使は訪日中、オピニオンリーダーや知識人、報道関係者など、日本社会の様々な方面を代表する人たちと会見した。中国人の学者や知識人とも交流し、チベット問題について意見交換を行った。ダライ・ラマ法王がチベット問題を中華人民共和国憲法の枠組みの中で解決していこうとしていることに彼らは全面的に賛同し、現指導部のもとで飛躍的な進展がなくとも対話を継続していくことが重要だと語った。彼らはいつか若い中国指導者によってチベット問題が分別をもって扱われる日が来ることを願っていると言った。

今回のケルサン・ギャルツェン特使の東京訪問は、日本の報道機関やチベット支援者そして一般の人々に中国政府との交渉の現状について最新の情報を伝えることができたという点で大成功であったといえよう。さらに、ダライ・ラマ法王の特使自らが情報のアップデートをしたことは、国会議員や中国知識人にとっても大変意義深いことであったに違いない。チベット支援者や一般の人々からもまた、チベットの現状、特に中国政府との交渉に関して特使から直接報告をしてもらえてよかった、という意見が聞かれた。

訪問最終日、チベット支援者との会合の中で特使は、今回日本で様々な人たちと交流でき大変満足していると語った。「日本の方々がチベット問題に強い関心を持って下さっていることを知り、ありがたく思うとともに大いに元気づけられました」

ケルサン・ギャルツェン氏は5月25日、東京からスイス、チューリッヒへの帰路に就いた。


(翻訳:中村高子)