デンマーク王国コペンハーゲン: デンマーク国会の全8党の代表議員団が昨日、ダライ・ラマ法王と面会した。
法王は面会で、次のように述べられた。「1973年、これから初めて訪欧するというときに、BBCのレポーター、マーク・タリー氏に、訪欧の目的を尋ねられました。私は難民の身であるが、地球市民だと考えている、と答えました。私には、愛や慈悲心などの人間の価値を高める役目があります。心の平和の真の源は、金銭や権力ではなく、愛や慈悲心なのです。自らの内面を見つめることで、内なる強さと自信が湧き出し、透明な、開かれた心で、正直に行動できるようになります」
法王は続けて、人間は誰でも、男女を問わず幸福な人生を望んでいるとお話しになり、議員団に冗談交じりに、あなた方もどうやら人間のようですね、とおっしゃった。また、ご自身は仏教僧であるが、あらゆる宗教伝統が掲げる共通の目的は、人類を助け、尽くすことであると考えており、それゆえ各宗教間の調和を育む努力をしているのだと述べられた。さらに法王は議員団に、ご自身はチベットの政治的責任からは完全に離れた身であると語られた。
「チベットをはじめ世界中の人権に対するご理解とご支援に感謝いたします」
ご自身の故郷のことに言及され、法王はチベット高原の環境への懸念を表明された。中国の生態学者はチベット高原を「第三の極地」と呼ぶ。アジアで主要とされる川は源流がチベットであるため、その下流で暮らす10億人の命が影響を受ける。法王は、現地の環境状況について、専門家による具体的な調査が実施されることを望むと議員団に述べられた。また、チベット仏教の現状にも懸念を示され、チベットは平和と慈悲心の文化であるが、そういった文化は中国にも必要なものであると述べられた。また、過去に催された会談で、中国の作家や知識人らが、中国の道徳水準は中国5千年の歴史で最低レベルであると述べたことに言及された。習近平国家主席は先日、パリとニューデリーで、中国の文化を再興するために、仏教は重要な役割を担わなければならない、と述べている。
最後に法王は、次のように述べられた。「インドと中国は世界最高の人口を抱える、隣接した二大国家です。中国は、チベット人を疑念の目で見る限り、チベットに多数の軍隊を駐留させ続けるでしょう。これら軍隊がインド側の不安感を扇動しているのです。そのため、チベット情勢の正常化が、これら地域の平和の鍵なのです」
議員団がチベットにおける民族自決権を実現するためにデンマークやEUは何をすべきか尋ねると、法王は次のようにお答えになった。「中国は経済的にも軍事的にも、ますます大国として台頭してきています。中国を孤立させることには意味はありません。手を差し伸べ、友好関係を築き、疑念を晴らすのです。これはロシアにも同じことが言えます」
また、検閲は好ましいことではないというお考えや、農業従事者らの実情を理解していない中国の司法は国際水準に引き上げられるべきであること、などを繰り返し述べられた。
議員の一人がこう述べた。法王は中国の疑念を払拭せよとおっしゃるが、法王にお会いするだけで圧倒される。法王は次のようにお答えになった。
「私たちが環境について議論した内容や、私たちがチベットの独立を求めているのではないこと、中国の憲法に示されている通りの人権をチベット人に認めることを求めているのだと伝えていただければよいのです。心配ご無用です。私たちは中国とは2千年以上にわたる付き合いがあり、私自身も1950年代からこれに取り組んでいるのですから」
(翻訳:植林秀美)