(2010年12月22日 ダラムサラ)
亡命地の学校におけるチベット語の学習水準が低下していることを懸念し、ダライ・ラマ法王は、教師と生徒に対し、より大きな責任を持って自国言語の習得のために努力するよう呼びかけた。
「ビジネスや法律の勉強をするのにチベット語は便利とは言えません。しかし、三百以上の経典に収められた仏陀の教え(カンギュール)と注釈(テンギュール)を学習するのにチベット語能力は不可欠です」。12月18日(土)、ダライ・ラマ法王はシッキム州・ラワンラのチベット人居住区において数百人のチベット人を前に語った。
ダライ・ラマ法王は、外国の仏教学者は、チベット語習得に大いなる努力を傾注しており、その結果、チベット語を難なく読めるようになる、と述べた。「チベット語は私たちの母国語なのですから、それを維持するのは私たちの役割です。そして、外国人もチベット語に興味を持つくらいなのですから、私たち自身、それをありがたい宝石として大切にしなければなりません」。
また、法王は、居住区内の読み書き出来ない大人にチベット語を教えるイニシアティブに触れ、「こうした新たな試みは、過去にはなかった、革新的行為です」と述べた。
教育の重要性を強調するために、ダライ・ラマ法王は、1950年代にチベット人が直面しはじめた悲劇のそもそもの原因は、外国で起きていた変化を学び、外部の変化とともに自らも変化していこうとする努力を怠った結果だ、と述べた。「チベットに、外のことを学習しようという機運は全くありませんでした。インド巡礼から戻ってきた人の中には、インドで起きている大きな変化を国内の人々に話し、チベット政府にもそのことを良く考えるように、と言った人もいました。でも、全体的な状況が変わることはなかったのです」。
法王は、1959年の亡命以後、僧院よりも学校建設に力を注いだ、という点について詳しく述べた。「学校の建設は、最優先事項でした。その結果、過去50年のあいだに、現代的な教育という点で大きく前進し、亡命地のチベット人の文盲率は非常に低い水準となりました。新しい世代は、彼らの教育水準に無関係に学校に行く機会が与えられます。この居住区での教育分野での功績は著しいものです。そして、字が読めない大人にチベット語を教えることもまた、重要なことです」——このようにダライ・ラマ法王は述べた。
「前回訪問時に比べ、この居住地はこの数年来、大きく前進している。それは、居住区事務局と住民双方の真摯な努力の結果です」、と法王は述べた。「長きにわたり、難民であるにもかかわらず、チベット人は、決然たる態度で、物事を改善していくための努力をしています。私は、皆さんの努力に感謝したいと思います」——と、法王は述べた。
また、法王は、事務局のメンバーに、従僕として人々に仕えるように、と述べた。
このスピーチより前、居住地に着いた法王は、暖かい歓迎を受けた。法王を歓迎したなかにはシッキム州政府の官房長官、宗教局の事務官、州議会議員をはじめとする政府高官がいた。その後、法王がチベット人居住区に到着すると、学校の子供たちを含む住民が、ジュニパーの葉を焚く匂いがたちこめるなか、カター(儀式用のスカーフ)を巻いて、長い列を作って挨拶を送った。法王は、ラワンラ居住区のそばにある、建設中のネルン僧院も訪問した。
ダライ・ラマ法王がラワンラ居住区を訪れるのは、これで五回目。訪問中は、合計3000人を超えるチベット人とシッキム州政府高官を含む地元インド人が、法王の法話とスピーチに参列した。
(翻訳:吉田明子)