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ダライ・ラマ台湾訪問

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2001年4月6日
台北(CNA及びAFPより抜粋編集)

3月31日亡命中のチベットの精神的指導者であるダライ・ラマが台湾に到着した。2回目の台湾訪問のためである。

ノーベル賞受賞者であるダライ・ラマは、中国仏教協会の招待により10日間の宗教的訪問として訪れた。ダライ・ラマは国家元首と同様の待遇を受けた。1997年の3月に彼が初めて台湾を訪問した時に受けた扱いとはかなり対称的である。

空港でダライ・ラマを迎える人々の中には、与党民主進歩党(Democratic Progressive Party)の議員の姿もあった。

台湾滞在中、ダライ・ラマは現地の仏教指導者たちの他、陳水扁総統、副総統のアネット・ルー、李登輝前総統とも会見した。

4月1日、チベットの精神的指導者ダライ・ラマが、物質主義時代の影響や新千年紀における愛と同情の大切さを語った。スタジアムにおける今回2回目となる9日間の台湾訪問での最初の講演として、ダライ・ラマは「新千年紀の倫理」について2時間語った。

ダライ・ラマは伝統的なチベットの黄色と緋色の法衣をまとい、愛と思いやりが旧千年紀から持ち越された病弊を治癒する薬となるだろうと語り、さらにこう続けた。

「歴史からわかることは、前世紀において推し進められてきた物質主義の進歩は、人間をどこにも導きはしないということだ。そのかわり、連綿と人間を悩ませ続けている苦しみ(痛み)があるということだ」

「科学と技術と経済の急速な成長が、世界をより狭い場所にし人々の関係をより緊密なものにした一方、多くの人々がいまだに社会(の恩恵)からはみだしている」

「ですから、もし私たちがこの連綿とした問題を解決するつもりなら、この伝統的な道をたどりつづけてはいけない。私たちはもっと心を開いた態度を身につける必要がある」

「愛は不可欠なもの。覚えておいてほしい。誰でも他の人に愛を与えたとき、幸福感が心の中に現れて、その時、その人は最高に愛を享受する者となる」

「世界で最も裕福ではあっても物質的な冨とはうらはらに精神的には欠乏感を感じている人々に会ってきた経験から、そのような人々にはもっと他の人のことに対して関心をはらうように求めてきた」

「このような方法で人は心の中を幸せで満たすことでしょう」

真実の追究は大切なことで、だが利他的な動機でなされるべきだとも言い加えた。

講演会場のスタジアムで、副総統アネット・ルーがダライ・ラマに会見した。

「何て素晴らしいときを過ごしていることだろう。尊敬してやまぬダライ・ラマ法王がいらっしゃるということは私たちには光栄なこと。ダライ・ラマ法王の滞在のおかげで、様々な民族と十あまりの宗教がここに集っている」とルー前回の1997年の訪問にも触れながら語った。

プロテスタント、カトリック、道教など様々な宗教のリーダーが参加した共同の祈りのすぐ後に国のための祈りが始まった。

4月5日、陳水扁総統は、チベットの民主主義を追い求めるダライ・ラマをたたえ、亡命中のチベット指導者の台湾への揺ぎ無い援助に感謝した。

「ダライ・ラマは過去50年間熱心に励み、チベットの民主主義を求めて厳しいときを耐えてきた。彼のインドでの亡命生活の状況はとても過酷なものだ」と陳総統は総統府からの発表内で述べている。

北京が目の敵としている2人の歴史的会談は確実に中国の怒りを招くだろう。陳総統はチベット指導者が中国本土からの圧力にもかかわらずに、台湾を支援することに対しても尊敬と感謝の意を表した。表明の中での引用に、チベットの精神的指導者の発言として、中国本土は変わってきており、中国の指導者たちもまた世界の流れについていくために考え方を変えなければならないとあった。しかし、ダライ・ラマは40年以上も見ていない祖国の将来については楽観的であるという。

「チベットにはまだ希望がある」とダライ・ラマは言った。さらにこう付け加えた。

「1950年に中国軍に占拠されたヒマラヤ地域への国際的援助と注目が増えてきていることを喜んでいる」

ダライ・ラマは伝統的な中国の墓掃除の日、亡くなった祖先をしのぶ日に陳総統を総統府に訪ねた。会見の刺激を和らげるためである。ダライ・ラマは陳総統の首に白い布を巻き、陳総統はダライ・ラマに自分の伝記と木製の仏像を贈った。一時間の会見後、ダライ・ラマはスタジアムに仏教講演のために向かった。

中国は、亡命中のチベット指導者が台湾を訪問した目的は「台湾の独立主義者をまとめるため」であり、「独立運動の資金を作るため」だと非難している。北京は、陳総統が昨年5月の就任以来、台湾を「母国」中国より乖離させようと狙っていると見ている。しかし、陳総統は、独立国家主義者の台湾独立を擁護することをせず、「未来の一つの中国」を北京の共産党指導部に向けて親善の意志の表現として提案し、対話を再開することを狙った。台北と北京の対話は、1995年に中国が「分離主義者」と非難している李登輝前総統の合衆国訪問の後から途切れている。北京は台湾を自国の領土の一部とみなし、1949年の内戦終結時にわかれた二国の再統合を待ち望んでいる。

記者会見で、ダライ・ラマは、台湾の独立運動と共闘するために来たという北京の抗議に触れ、それを否定した。

「私は独立を求めているのではない。それは確かである。チベットの自治を求めている」