毎日新聞
【ダラムサラ(インド北部)11日】中国チベット自治区から出国したチベット仏教カギュー派最高位の活仏、カルマパ17世(14)が滞在するインド北部ダラムサラのインド外務省連絡事務所筋は11日、カルマパ17世がインドに政治亡命を求めていることを明らかにした。インドがカルマパ17世の亡命を認めれば、中国政府の反発を招くのは必至とみられ、インドは困難な選択を迫られている。
同筋によると、ダラムサラに5日到着したカルマパ17世はチベット仏教の教義を深く学ぶため、ダライ・ラマ14世の亡命政府がある当地に滞在することを希望し、政治亡命を求めている。チベット亡命政権とインド政府との間で水面下の交渉が続いているという。
インドは1962年に国境紛争で軍事衝突した中国に対し、警戒感を持ちながらも、昨年4月に国境問題合同作業委員会を2年ぶりに再開するなど、関係正常化への努力を続けている。一方で、インドは40年以上にわたってチベット亡命政権の存在を認めてきたうえ、十数万人のチベット難民を国内に受け入れてきた経過があり、カルマパ17世の亡命要望を簡単に無視できない事情もある。
インド政府は「カルマパ17世からは公式な政治亡命の要求を受けていない」と表明しているが、亡命要望を表面化させない形で中国政府の動きを探りながら、対応を慎重に検討している模様だ。
9日にダラムサラの亡命政府ゲストハウスを出たカルマパ17世は、ダラムサラ中心部から約10km離れた寺院に滞在しているとみられる。近く、カギュー派の最高位の後継儀式を受けるため、インド北東部シッキム州にあるルムテク寺院に向かうとの観測もある。
連絡事務所筋はカルマパ17世の今後について「亡命問題で結論が出て身分が落ち着くまではダラムサラ近郊からは離れることはないだろう」とみている。また当面は移動せず、休養を取りながら教義を受ける準備活動を行うとの見通しを示した。