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「チベット自治区」 チベット人の売春、急増

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(2003年12月31日 TIN

 

ラサの「美容室」のチベット人売春婦たち 写真TIN

最近のチベットからの報告によると、農村地帯、特にチベット自治区からのチベット人売春婦が急増している。急成長を続ける性産業にはいまだに中国人が多いものの、数年前には数えるほどだったチベット人が増える傾向にあるという。チベットでは、現在中国政府による「西部開発」政策によって、都市と農村の間に経済的な溝が深まっており、研究者の意見はこの政策に原因があると言うことで一致している。

チベットの経済発展は北京からの莫大な補助金によるもので、経済学者からその持続性に懸念の声が上がっている。また、数少ない都市中心部を潤したほかは、大多数が住む農村地帯は貧困にあえぐままになっている。と同時に、政府管理のメディアの浸透により、大量消費が推進され、理想と現実のギャップは広がるばかりだ。

農村地帯のチベット人たちは、貧しいばかりでなく、粗末な教育しか受けていないため、安定したいい仕事に就くことは不可能に近い。つまり、都市部へ向かう若いチベット人女性にとって、このギャップを埋める手っ取り早い方法は売春なのだ。チベットでは、売春は貧困の結果だけでなく、一握りの富裕層の発展が生み出しているといえる。物質的な豊かさは得られるといっても、チベット人売春婦が得る報酬は、中国人売春婦に比べると少なく、社会的にも多くの問題に直面している。

1990年代初頭から、チベット自治区では売春が急増している。中国での売春は、紙の上では違法だが、大都市では政府や共産党、軍隊所有、もしくは貸地で行われていることが多い。チベット自治区における売春は、軍基地を取り巻く多くの売春宿の他、大きな町々、また特に主要高速道路沿いに広がっている。比較的小さな町では、売春婦たちが食堂の隠し部屋で待機しているようだ。チベット人売春婦が増えているとはいえ、まだまだ中国人が多く、自治区で働く売春婦の6割は四川省出身だという。他、イスラム教徒のウイグル人が多いと言われ、狭西省などの貧しい地域から集まっている。また現在では、東欧出身の金髪の売春婦たちがラサでは珍重されている。しかし、確かな割合は不明なものの、チベット人売春婦が数の上では一番急速に増えていることは確かだ。

チベット人売春婦のほとんどは、中央チベットの小さな村や遊牧地帯から町へやってくる。他にカム、アムド地方からも多い。彼女たちは町の娯楽施設で売春を知り、他の仕事が見つからないと自分自身も売春婦となる。ナンマ・バー(チベットで人気の音楽バー)やカラオケ・バーでまず売春を目撃することが多いようだが、美容室で働いた後に売春へと移る女性も多い。

始めから売春目的で町に出てくる若い女性は少ないが、増える傾向にある。家族とは暗黙の了解がなされており、既婚の場合さえあるのだ。この場合、家を建てる、店を開くといった何かひとつの目的達成のための資金集めの手段として売春を選ぶ。この傾向はナンチュのような特に貧しい地方によくみられ、売春婦たちは家に帰れば、豊かな生活をもたらしたとして家族の中で高い地位を得る。と同時に、常に周囲に過去がばれる恐れと共に生活しなければならない。TINの調査では、チベット女性にとって売春は収入を増やすことが一番の目的である。確かに学歴がなく中国語が堪能でない彼女たちが、仕事を見つけるのは難しく、もし見つかったとしても、売春はその何倍もの収入が短期間で得られる。売春婦たちの識字率は低く、平均年齢は20代前半である。18歳未満のチベット人売春婦は大変稀である。

チベット人は、仕事でもその他でも同郷人と交わることを好み、売春産業にもその傾向がみられる。同じ売春宿で働いているのは同じ地方、時には同じ村からの女性たちと言うことが多々ある。彼女たちは地元の友人たちに、控えめながら売春を勧めることさえあり、裕福な生活への安易な手段としての売春を普及させている。冬の間3ヶ月ほど帰省することが多く、こうして売春婦たちは実家との密な関係を保つことができる。

もう少し多く稼げる独立した売春婦は冬の間は別の儲けのよい地方へ移ることもある。例えば、TINが出会った南チベットの高級バーで働く売春婦は、毎年、雪で道路が封鎖される前に南へと旅するそうだ。カトマンズの「美容室」や、デリーで働くためだ。

労働環境や収入は地域によって大きく異なる。ラサでは、チベット人売春婦はハイクラスな娯楽施設やバー、または「コールガール」として働き、通常の売春は中国人が担っていることが多い。しかしこの区別はラサだけのようだ。チベット人売春婦への報酬は平均で一回100元(約1,300円)で、その半分は彼女らの所属バーに入る。彼女たちは月々120元(約2,300円)ほどの税金(健康保険、所得税も含む)を払う。南チベットでは報酬は50元から80元(約650円から1,000円)、一晩を共に過ごすと100元というのが、一般的だ。同じ南チベットの他のシステムでは、客は40から50元を店に払い、売春婦は300元(約3,800円)の給料に部屋と食事、そして4割の出来高払いを受け取る。このシステムでは、1日3人を客にすると、売春婦は基本給の他に1日100元を受け取れる。多くのバーでは、彼女たちはまずホステスとして、客の男性たちにできるだけ多くの酒を飲ませる。客のビール、タバコ、食事代の一部が、彼女たちに報酬として支払われるからだ。ラサ以外では、売春婦たちは(自分たちの)バーの掃除などもしている。

チベットでの売春は、中国の他の地域に比べれば悪い状態ではないといわれている。高い需要とまだ足りない供給が価格を高くしており、売春婦たちは客を選ぶこともできる。このため、ネパールの売春婦たちはインドではなくチベットへやってくる。2003年4月23日付のカトマンズ通信は、ネパールのある売春婦が「チベットの方が待遇も稼ぎもよい」と語ったのを伝えている。また売春婦への虐待は一般には稀ではあるが、チベット人売春婦には起き得る。逃亡を図る売春婦がバーの主人に殴られるなどということは、よく耳にする話だ。

売春宿の所有権は頻繁に転売されており、売春婦の売買も2000元(約25,000円)ほどでよく行われている。そういった場合、新しい主人が資金を回収するまで給料は滞りがちだ。警察に訴えようにも、主人たちが手を回しているのでらちが明かない。ラサの外では、チベット人と中国人の売春婦の大きな違いは、異なる宿に移ることができるかどうかのようだ。経済状態の悪いチベット人に比べ、中国人売春婦たちはもっと自由に働く場所を決めることができるのだ。

チベット人売春婦たちはまた、中国人売春婦よりも一般的に若く、待遇もあやふやで劣ることが多い。中国人売春婦たちがミニスカートやタイツといった挑発的で流行にのった服装をするのに対し、チベット人売春婦たちはジーンズなどの簡素な服装ではるかに田舎臭くみえる。しかし地方のチベット社会では、ジーンズさえ挑発的なのだ。チベット人売春婦の多くはチベット人に雇われ、地元のチベット人を相手にする。が、雇い主としては 料金の低いチベット人を雇うのは利益の少ないことだ。チベット人売春婦の客の多くは既婚者で、客自身も入り混じった感情がある。中国人売春婦を買うことは、料金が高い分ステータスシンボルとなっており、中国人の方が「ワイルド」で「サービスがいい」ので好むという一方、さらに性感染症の危険も高いと考えられているからだ。それは先入観に過ぎない。なぜなら、中国人売春婦たちも性感染症やコンドーム使用の知識が低いからだ。チベット人売春婦たちの知識は、さらに低いものとなる。事実、性感染症は拡大しており、保健所職員はHIVエイズのチベット自治区での広がりを指摘する。チベット人売春婦たちは中国人売春婦よりも、表立った行動を避けるため、また感染による差別を恐れるため、性感染症防止キャンペーンに参加することが少ないのが現状である。