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TCHRD年次レポート「強要される忠誠心」

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2001年1月6日
ダラムサラ

チベット人権・民主センター(TCHRD)が、「強要される忠誠心」と題して年次レポートを発行。これは2000年のチベット本土での人権悪化を包括的にまとめたものである。2000年中国政府は、未だに人権侵害を制度化している国の一つであるにも関わらず、対外イメージアップを図るために「人権白書」や「国連高等人権委員会」との同意覚書を公表した。 中国政府はあらゆる分野で基本的自由を束縛し、それをさらに強化している。党局は中国統一とチベット支配に対して執拗に新政策を打ち出し弾圧を加えている。「政治・信教の自由」はさらなる政策により侵害され、継続的な一方的逮捕、拷問を伴う拘留、女性は肉体的暴力を被り、子供たちは教育・雇用制度での厳しい差別のため将来への希望すら持てないでいる。

2000年、最もひどい弾圧を受けたのが信教の自由であるとレポートしている。例外無しにあらゆる宗教活動を弾圧され、「愛国再教育」キャンペーン強化の為に「工作隊」を増員し、彼らを辺境地区の寺院・尼僧院へ送り込み、四つの寺院を閉鎖へ追い込み、仏教教育は困難となり、僧侶を寺院から追放した。147名の尼僧を含む僧侶862名が追放され、96年に「厳打」(断固たる取締)キャンペーン(Strike Hard campaign)が始って以来、合計12,272名が寺院から追放されたとTCHRDは報告している。

TCHRD代表ロプサン・ニャンダックは、「厳打」キャンペーンはダライ・ラマへの忠誠心を取り除くことを主たる目的としていると言う。 2000年に強化された信教の弾圧は結果として一般市民にも及び、特に政府関係者が対象となった。政策として各家庭へ侵入し、仏教祭壇、ダライ・ラマの写真等を保持していないかを調べる。そして、愛国心を強いるため極めて厳しいテストを受けさせ、職務遂行にあたり嫌がらせを行ったりしている。伝統的仏教儀式、特にダライ・ラマの誕生日などの祝い事は厳重に小規模化または禁止となっている。

チベットにはわかっているだけで、451名の政治囚がおり、言論の自由はなく2000年、政治的活動、平和的抗議、ダライ・ラマの写真や説法テープの所持又は、チベット人をネパールに誘導したとして26名の逮捕者が出た。 また、チベット亡命政権の教育機関と何らかの関係を持ったとしても拘留される可能性があり、インドから戻って来た者は、厳重に取り調べを受ける対象となっている。

刑務所内での拷問・虐待は大きな問題であると報告しているが、中国中央政府はその劣悪な状況を否定している。2000年には二名の政治囚の死亡が確認され、22名の政治囚が刑期を延長された。1998年のダブチ刑務所内での抗議に関する広範に亘る情報が元囚人により報告されている。 女性、子供への権利侵害も引き続き行われており、人権保護協定批准に関係なく女性の身体に悪影響を及ぼす強制避妊手術などの虐待は止まることがなく、逆にエスカレートする一方である。チベットでは政府の後押しによりエイズ蔓延の原因となる売春も増加している。子供たちは差別化された教育制度により満足のいく教育を受けられず、成人でも差別的雇用制度により職を得る機会を拒まれており将来が危ぶまれている。

弾圧の結果としてTCHRDは2000年に延べ二千六百六十人の難民が出たことを報告。そのうち、18歳以下の子供800人、女性507人、仏教僧が642人であった。チベットから逃れてきた彼らからも情報は得られる。が、ロブサン・ニャンダックは言う。

「情報は現状チベットに関する極僅かなものでしかない」

そして、大きなニュースとして中国政府公認のカルマパ十七世のチベット脱出がある。十七世本人が述べた、「チベット本土でのチベット文化は中国政府の弾圧により絶滅の危機に瀕している」を注意深く受け止める必要がある。 TCHRDは十一項目の勧告リストの中で、中国と交わした取決めが望ましい結果を生み出していないことを強調している。ロプサン・ニャンダック所長は、こうコメントしている。 「チベット・中国の二国間対話は、他国からの批判から逃れるための手段として中央政府側により巧みに利用されている。国連がチベット及び中国国内での中央政府による人権侵害を非難し、国連加盟国が現状の政策を見直し、チベット及び中国国内の人権問題を改善できるよう取組むべきであると我々は強く訴える」