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鄧小平氏の死去に関するダライ・ラマ法王の声明

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(1997/02/20)

鄧小平氏の死去は、中国にとって大きな損失です。私は、かつて1954年に中国を訪問した際、鄧氏と直接知り合いました。彼は寡黙な人でした。しかし、鄧氏は並々ならぬ勇気・忍耐力・才能・指導力を具えた改革的で偉大な中国の指導者だったのです。

国が広大で多くの問題を抱えていたとしても、確かに何らかの成功や利益を見出せるでしょう。しかしながら、鄧氏は共産党の全体主義体制の指導者だったので、たとえ彼が個人的に何か良いことをしようと望んでいたとしても、制度自体がなすべき事柄を規定してしまい、そのせいで多くの過ちを犯さざるを得なかったのです。鄧氏は、中国の経済改革に努力する一方、政治面・道義的には手をつけようとしませんでした。こうした誤りが天安門広場の悲劇、そして民主的政治体制や法による支配の欠如といった結果をもたらしていたのです。

鄧小平氏は、革命後の中国の指導者たちの中でも、チベット政策に関して最も顕著な役割を果たしました。彼は、1949年ないし1950年に始まったチベットの占領から原稿の諸政策に至るまで、中国による対チベット作戦の主要なもの全部に直接関わっています。

1979年に鄧氏が出した声明は、チベットの全面独立を除いて、他のあらゆる事柄は話し合って解決できるとしています。それで私は、鄧氏の存命中にチベット問題を解決できるだろうと希望を抱くようになりました。中国に総体的な変化が訪れ、またチベット問題に対してもっ現実的な態度が芽生えてきた点に、私はとても勇気づけられたのです。それ以来、チベットの将来に関する真摯な交渉の席へ着いてくれるよう、私は中国政府に対して常に誠意をもって働きかけて参りました。過去18年間に渡り、鄧小平氏の声明の趣旨に沿った枠組みの範囲内でチベット問題を交渉により解決するため、私は数々の提案や働きかけを行ってきたのです。しかし残念ながら、中国政府はそれらに対して前向きな反応を示してくれませんでした。我が方では、北京から前向きの兆候が得られ次第、いついかなる場所においても前提条件なしで直ちに交渉へ入る用意があります。

鄧小平氏の存命中に、チベット問題に関する本格的な交渉を実現できなかった点は、極めて遺憾です。しかし鄧氏亡き後にも、チベット人、中国人双方にとって新たな機会が訪れ、課題に取り組んでゆく道が開けるはずです。和解と妥協の精神に基づいてチベット問題を交渉により解決する英知を、中国の指導部が発揮してくださるよう、私は切に希望しております。安定の実現は、全当事者間における相互の信頼・同意、そして利益にかかっており、武力の行使によっては決してもたらされません。