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活仏出国で国際的関心拡大に警戒感−中国

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2000年1月8日
毎日新聞

チベット仏教カギュ派の最高位にあるカルマパ17世(14)がインドへ出国したことについて、中国当局は国際的関心が拡大することへの警戒感を強めている。欧米諸国と人権問題で隔たりがある中国は、カルマパ17世の出国が「チベット仏教への介入、弾圧」と結び付けられることを懸念しているのは間違いない。北大西洋条約機構(NATO)軍による在ユーゴスラビア中国大使館誤爆事件後、欧米との関係改善を進めている時期だけに、対応に苦慮しそうだ。

中国政府はカルマパ17世の亡命説を否定した前日の説明以降、8日午前現在、静観の構えを続けている。当面はチベット自治区、青海省などチベット仏教信仰地域での締め付け強化などが予想されるが、出国先のインドで表立った反応がなければ、事態拡大を避けたい意向だ。中国自身が承認した活仏の出国は、その正統性をも損なうからだ。

一方、「チベット問題は外国勢力の干渉」(外務省報道官)により複雑化しているとの認識があり、欧米の有力マスコミがこぞって報道したことに神経をとがらせているのは事実だ。

昨年秋、欧州を歴訪した江沢民国家主席は、チベット統治に反対するデモに遭遇。外務省報道官は「抗議参加者の中に中国人はいない。鼻の高い者たちばかりだ」と国外の支援組識を非難した。先月に北京で行なった第2回中国・欧州連合(EU)首脳会議でも、チベット仏教の指導者、ダライ・ラマ14世との対話再開の呼びかけがEU側からあったが、「チベット問題は内政問題」との立場は崩さなかった。

中国は、4月に日本訪問を予定するなどダライ・ラマ14世の国際活動を苦々しく見ているが、カルマパ17世の出国は格好の対中攻撃材料を与えると警戒するわけだ。中国のチベット支配を嫌って出国したことが判明する局面になれば、欧米を中心とした「反中」行動の高揚は確実で、中国当局は難しい対応を迫られる。