チベットの核

放射性廃棄物

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放射性廃棄物とは何か

放射性廃棄物とは、何百種類もの不安定な原子構造体が独自の割合で混合されたものを含む化学的廃棄物を意味する。このような不安定な原子構造体は、放射性同位体と呼ばれるが、これは種類によって寿命の長さやアルファ線、ベータ線、ガンマ線を放出する能力がさまざまである。このような放射線は、人間、動物にガンやその他の病気を発生させるが、中でも最も恐ろしいのは、放射性廃棄物が出す放射線が遺伝子に突然変異を引き起こし、その結果、奇形児が誕生してしまうということである。科学者たちは、放射性廃棄物を永久的に密封するための確実な方法を発見しておらず、現在原子力発電所で使用された燃料は乾燥した鋳型の中で保管され、絶えず冷却されなければならない。スプーン1杯のプルトニウムの粉末は、大都市の全人口の命を奪う威力がある。

チベット高原における放射性廃棄物

93年の人権世界会議でのウィーン宣言では、「毒物および危険物質の不法投棄は、人類の人権、生命、そして健康を脅かす重大な問題となりうる」という内容が明確に打ち出された。

92年に中国を含む各国が調印したバーゼル条約と、95年9月にこの条約の修正案として採択されたバーゼル法は、先進工業国から非工業国への有害廃棄物の輸出を禁止している。98年2月23日から27日にマレーシアのクチンで開催された第4回締約国会議(COP-IV)では、特定の工業国が有害廃棄物をリサイクルする取り引きによって利益を得ることがないよう、バーゼル法の現状維持が討議されたとき、中国は、本腰を入れている様子こそ見せなかったが、これを支持した。これは明るい未来への第一歩と考えることはできるが、その一方で中国がチベット高原に廃棄物を投棄してきたという事実は、どう控えめに言っても決して明るい話題ではない。

84年2月18日、「ワシントン・ポスト」は、中国が60億米ドルと引き換えに、ヨーロッパの原子炉の4千トンもの放射性廃棄物を、遠隔地であるゴビ砂漠に保管することに一応の合意を示したことを報じた。88年の秋、チベット人の間で、西欧諸国が核廃棄場としてチベットを利用するかもしれないというニュースが駆け巡った。チベット人の精神的、政治的指導者であるダライ・ラマ法王は、中国政府が海外の核廃棄物をチベットに投棄する計画があることを示す署名入りの書類が存在することを明らかにしている。

グリーンピースは、91年米国メリーランド州バルチモア市の市職員が、144万米ドルと引き換えにバルチモア市で廃棄された2万トンもの下水汚物を輸出することで、中国と一応の合意を取り付けたことを発表した。仲介役を引き受けたのは、カリフォルニア・エンタープライズと中国の有名な家電メーカー、海南(ハイナン)陽光グループ(Hainan Sunlit Group)である。海南陽光グループの言い分は、中国の輸入規則によるとこのような輸送に政府の承認は必要ない、ということであり、また、下水汚物が米国に送り返されることがないことを保証した。グリーンピースによると、重要書類にはこの輸送物が中国語で、「川の沈泥」を意味する「ヘニ」であると記載されていたそうである。そこでグリーンピースは、「都市の下水汚物は川の沈泥ではない」と抗議した。米国の都市下水処理施設で発生した汚物には、毒性のある汚染物質が慢性的に混じっている。米国のミルウォーキーでは、そのような汚染物質と筋萎縮性側索硬化症の発生との関連が報告されている。国際的な批判を受け、このチベットへの汚物輸送は中止となった。

ダライ・ラマ法王は、インドのバンガロールにある現役ジャーナリスト・カルナタカ組合が運営した 「ジャーナリストとの対話」プログラムに参加中、中国がチベットに核兵器工場を設立したという確実な情報を入手したことを明らかにした。法王はまた、「中国はチベットに50万人の兵を持つ軍隊を駐留させているが、このことは占領下のチベットの状況が一触即発であることを示している」との考えを示した。

中国国事委員会(China’s Nationalities Affairs Commission)は、91年4月18日、新華社通信を通じてある文書を公開したが、そこには、チベットにおける核兵器の配備と核廃棄物により核汚染が広がっているという主張に対し、「全く根拠のない話」という説明が書かれていた。しかし、新華社通信自体は、チベットに核廃棄物が投棄されていることを認めている。95年7月19日付の新華社通信は、海北チベット族自治州のココノール湖の湖岸近くに「20平方メートルに及ぶ放射性汚染物質用のごみ捨て場」があることを報告している。この報告によると、「軍の核施設(第九学会)により廃棄物は出たが、操業中、安全性はここ30年間完全に保たれ、環境へのいかなる悪影響もなく、基地で被爆による死亡者が出たことはない」そうである。

しかしその報告は、核廃棄物が当初、どのように保管されたのか、または現在どのように管理されているかについての詳細を明らかにしていない。代わりに、中国核国営公社(China National Nuclear Corporation)のユー・ディーリャンの言葉を引用し、次のように述べている。
「中国は、89年から93年まで、多大な費用をかけ、閉鎖された核兵器基地の環境状況の厳重管理にあたった」

93年のインターナショナル・キャンペーン・フォア・チベット発「核とチベット」 には、リシュイ(Reshui)とガンズィ(Ganzihe)近辺で病気の発生率が異常に高いという、現地のチベット人医師、タシ・ドルマの報告が掲載された。5年間住民の治療にあたったタシ医師によると,「第九学会」と呼ばれる核基地付近で放牧していた遊牧民の子供たちのうち7人がガンで死亡したそうである。

西側諸国では時代遅れと考えられている浅層処分技術も、中国で実行するのには 「充分に安全」と考えられてきた。高放射能レベル廃棄物(HLW)用地の候補について、中国政府関係者は、「中国には広大な配分地区があり、用地を見つけることは困難ではないだろう」と述べている。チベットは、「少数民族」がまばらに居住しているところで北京からも離れているため、中国人の考え方に従うと、「核廃棄物を投棄するには最適な場所」ということになってしまう。

93年11月10日付のロイター通信によると、中国は、甘粛省の西側の乾燥地帯に最初の放射性廃棄物投棄センターを建設中であるが、中国南部、南西部、東部にさらに3つの施設の建設を計画中であるという。この計画は、2000年までには1億5千トンあまりの、2050年までには12億トンもの石炭が不足するという年間予測に基づき、原子力を促進してエネルギー不足を補おうという、野心的なもくろみによるものであった。甘粛省投棄センターの容量は、当初、6万立方メートルの放射性廃棄物を投棄できるよう計画されたが、後に20万立方メートルにまで拡張された。前述の中国核国営公社のスポークスマン、ユー・ディリャンは、「建設費の見積もりは少なくとも100億元(12億5千万ドル)になるだろう」と語っている。

台湾の核専門家が、「核による分裂の緊張を和らげる」ため、北京で開催されたシンポジウムに出席したことがあった。そこで中国は、台湾で累積される放射性廃棄物の投棄場を提供しようと申し出た。97年5月28日付AFPの報道によると、台湾は、6万バレルの核廃棄物を引き取ろうという中国の申し出をはねつけた。


チベット亡命政権情報・国際関係省環境開発部(EDD)発行
「グリーンチベット」1998年ニュースレターより

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