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中国の形骸化した外交政策に対する取組み

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2001年10月30日
CNN中国

胡錦涛副主席が、ヨーロッパ五か国へ鳴り物入りの訪問を行ったとき、中国の外交政策に関して、2つの根本的な質問が寄せられた。

第一に、来年の10月に 開かれる第16回党大会で、胡錦涛副主席、および彼が属する第四世代のグループに政治的権限が譲られることが決定されているが、巧みな外交的手腕を発揮することが、彼らにできるのだろうか?

第ニに、胡錦涛副主席、およびその閣僚たちは、”アジアの超大国” として頭角を現し始めた中国にふさわしい外交政策を、どれだけ効果的に実現できるのだろうか?

胡錦涛副主席の、西欧諸国への遅すぎる訪問は、2年後には、トップレベルの外交政策決定を行う者がこぞって引退するために生じる、空白期間を浮き彫りにする結果となった。

中国国家の最高外交機関である、共産党の LGFA (Leading Group on Foreign Affairs : 外交政策指導グループ)の指導者である 江沢民は、第16 回党大会でそのポストから退くことが決定されている。

中国の現代政策の父とも呼ばれる、銭其シン副総理、前外相も、退陣の予定が伝えられている。

唐家セン外相もまた、2003年 3月に新国務院が発足した時点で退陣するとされている。

唐家セン外相の後任の、最有力候補と見なされているのは、アメリカ合衆国の政情に詳しい、李肇星 (りちょうせい) 副外相、および楊潔虎 (ようけつち) 駐米大使である。

しかし、現在の中国では、政策決定権は、通常、外相の手に委ねられる。また、李肇星副外相、楊潔虎駐米大使にしても、大臣のポストに就くとはいえ、最高指導者はおろか、新国務院の一員としての権限が与えられることはないであろう。

経験不足

胡錦涛副主席は、早ければ来年の10月には、LGFA の指導者として、江沢民の後を引き継ぐことが予想されている。しかし、ここで問題となるのは、胡錦涛副主席には、党の役人としての経験しかないということである。中国政府の伝統的な規則では、国家主席、および副主席が外交を担当することになるが、胡錦涛副主席には、外交政策立案の経験はほとんどない。胡錦涛副主席は、1988年初頭に日本を訪問した以外、今回のヨーロッパ訪問まで主要な国家を訪問したことがないのだ。胡錦涛副主席が、1999年以降、中央軍事委員会の、3人の副議長の一人であるにしても、軍事、および安全保障の分野に関する彼の活動は、限定的なものである。また、胡錦涛副主席が、頼みの綱とする第四世代のメンバーの中に、外交の専門家が存在するとは考えられない。これは、首相の最有力候補である温家宝 (おんかほう) 副総理でさえ、外交、または国家安全保障を担当したことがないことからも明らかである。北京の外交筋の話は、次のとおりである。 1999年当時、江沢民は、胡錦涛は外交、および軍事政策に関し、より重要な役割りを果たす時がきた、と内輪の席で述べた。

厳しい試練

しかし、このことは実現しなかったため、江沢民が、退任後も外交、および安全保障政策に大きな影響力を持つことができるよう、要職から意図的に離れなかったのではないか、という憶測が流れたものだ。しかし、江沢民の支援の有無にかかわらず、胡錦涛副主席が率いる内閣が、これからのあやうい政局において厳しい試練に立ち向かうことになるのは間違いないであろう。第四世代グループの指導者たちが直面する問題の1つは、天安門広場での弾圧後、鄧小平により打ち出された、できるだけ控えめにし、(世界情勢で) イニシアチブをとろうとしてはならないという政策をどのように修正するか、ということである。鄧小平は、中国政府は、アメリカ合衆国との関係において特に、協力を求め、問題 (の原因となるようなこと) を回避すべきだとの立場を主張した。しかし、このような消極的なやり方は10年も前に決定されたものである。さらに言うならば、このような政策は、“われらが偉大なる上海”と公式に呼ばれた場所で最近開催された APEC フォーラムで、江沢民ら指導者たちが躍起になって示そうとした、台頭しつつある超大国としての中国のイメージとはかけ離れてしまっている。実際、江沢民は、1990年後半以降、“超大国外交” を掲げてきた。この外交政策の要点は、中国が世界規模で、アメリカ、EU、およびロシアなどの主要国家と同等な役割りを積極的に果たすべきである、ということである。しかし、問題なのは、中国政府の、特にアメリカに対する外交政策が、問題回避と自国の権利の主張という両局面の間で揺れ動いているということだ。このような一貫性のない中国の外交政策は、世界各国に、決断力のなさ、そうでなければ、影響力の乏しさ、といった印象を与えるものである。中国政府が示すあいまいな態度は、9月11日の米国同時多発テロへの対応にも表れている。ジョージ W ブッシュ大統領の、世界規模の反テロリズム キャンペーンへの参加呼びかけに対し、江沢民、および彼の顧問たちの意見は、参加、不参加の両極端に分かれた。

危険な兆候

江沢民は、アメリカが支援を必要としている今こそ、協力体制を推進することで、両国の関係がより進展するであろうことは、理解しているはずだ。特に、初期の段階では、中国政府の首脳陣の間でも、アメリカ政府に対する包括的な協力体制を支持する声が高かった。しかし、同時に、中国政府の指導者たちは、危険な兆候もその視野に入れている。つまり、アメリカが、オサマ ビン ラディンに対する反テロリズム キャンペーンを口実に、アフガニスタン、および中央アジアに半永久的な拠点を築くことをおそれているのである。結局、江沢民は、不本意ながらも大勢を黙認するという主体性のない方針に傾いたのだが、これは、何の成果をもたらすものではない。第一に、中国政府が、ロシアのように、アメリカ政府主導の反テロリスト運動を積極的に支援する態度を示していない以上、アメリカは、中国に対し、台湾、あるいはその他の地域に関して協力する義務はないとの立場を取っている。実際、ワシントンは先週、台湾に 5千万ドル相当の対戦車ミサイルを輸出することを発表した。また、コリン パウエル国務長官は、アメリカ政府は引き続き、中国の人権問題を監視することを明言している。

ナショナリズムの台頭

第二に、中国政府が、アメリカが示唆したアフガニスタンへの攻撃の長期化に異を唱えなかったことにより、アラブ諸国やアジアのイスラム諸国による中国への信頼が損なわれる可能性が出てきた。さらに、中国国内のナショナリズムに基づく反米感情が、高まりを見せ始めている。

中国のメディアには、死亡、または負傷したアフガニスタンの民間人の映像使用を抑制するよう、報道規制が適用されているが、アメリカによる都市部への攻撃は、激しさを増す一方である。

1989年以来、政治的権力を握ってきた江沢民が、軍部やほかの部門に属する強硬路線派やナショナリストたちを掌握することは、さほど難しくはないであろう。しかし、ナショナリストだけではなくタカ派と目されている人間たちと、駆け引きを行わなければならなくなる胡錦涛副主席、温家宝副総理などの第四世代の指導者たちにとって、このような作業は、たやすいものではないはずである。かといって、“超大国”外交政策の積極的な推進は、アメリカだけではなく、日本や東南アジア諸国の反発を招きかねない。実際、このような中国の政策は、中国の脅威として懸念されているのである。

胡錦涛副主席には、今回のヨーロッパ訪問、そして現在調整中の諸外国への訪問で、 成熟した国家であれば当然備わっている判断力に基づき、中国の味方、そして敵の存在を明らかにすることが、強く求められているのである。