世界の屋根を守れ!チベット・クライメット・アクション

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緊急課題


チベット高原は環境保護にとって大変重要な役割を担っています。国連気候変動会議(COP21)で気候変動の対策に向けた国際的な合意がなされることに注目が集まる今こそ、気候変動にかかわるあらゆる討論はチベットを中心に展開されるべきなのです。

ダライ・ラマ法王の言葉通り、「この青い惑星は私たちの唯一の棲家であり、チベットはその屋根」です。

チベット高原は今まさに気候変動の影響に直面しており、それが世界の環境問題を悪化させています。チベット高原の保護はチベット民族のためだけでなく、健やかな地球とその持続にとって絶対に必要なのです。

背景


チベットと気候変動

健全な世界の環境にとってチベットは極めて重要です。平均海抜4,000メートル以上、250万平方キロメートルの面積をもつチベット高原は、最も高地に位置する世界最大の高原です。北極と南極に次いで『第三の極』であるチベット高原には、4万6千の氷河があり大量の氷が貯蔵されています。

チベットはアジアの給水塔です。多くの氷河と広大な永久凍土層をもつチベット高原は、13億の人々に水を供給するアジアの6大河川の主要な源泉です。その高度と広さ、そこに存在する氷床が、モンスーンの時期や規模を決定する要因となっています。

気候変動

チベットは、氷河と永久凍土の急激な溶解、草地の減少や砂漠化といった、気候変動に起因する問題に直面しています。中国政府がチベットの壊れやすい生態系の管理を怠ってきたために、気候変動による問題は悪化の一途をたどってきたのです。

チベット高原では気温が10年ごとに約0.3℃上昇しています。過去50年で1.3℃上昇しており、これは世界平均の3倍の値です。

さらにこの50年で、貯蔵されている氷の82%が溶け出しています。このままでいけば2050年までに氷河の2/3が失われることになる、と中国科学院は予測しています。1950年代以降、実際の氷河質量に増加はみられませんが、氷が溶け始めるシーズンは早まり、しかも以前よりも長期間続く傾向にあります。

高山の永久凍土もまた危機的状況にあり、地球環境に大きな影響を与えています。およそ1230万トンのカーボンを含むチベット高原の永久凍土は、この10年で10%が融解しました。チベットでは砂漠化も進んでいます。国連開発計画の報告書によれば、チベットの草地は年間2330平方キロメートルの規模で砂漠化しているのです。

ダムの設置により大量の水が蒸発し、河川下流の国々で相当量の川の水量が減少する事態を招いています。水の損失は気候変動を引き起こす温室ガスの放出の一因でもあります。チベットの川(日本語|チベット語、揚子江|Drichu、黄河|Machu、メコン川|Zachu、サルウィン川|Gyalmo Ngulchu、インダス川|Senge Khabab、ブラマプトラ川|Yarlung Tsanpo)は、世界でも最も人口密度の高い10の国々に流れ、そこに住む13億の人々の生活を支えています。つまり、世界の40%の人々が、チベットを源泉とする川に依存して生活しているのです。中国はチベットにあるすべての主要河川とその支流にダムを建設しました。そしてそれ以上のものがこの先も求められているのです。第12次中国五カ年計画には、水力発電計画の実施を最優先する、と明記されています。

気候変動はチベット高原に大打撃を与えました。しかしその影響をリバースさせるうえで重要な役割を果たしているのもチベット高原です。全地球的な環境の大異変を防ぐことは可能なのです。健やかなる地球とそれを持続させるために、世界はチベット高原の重要性にもっと早く気付くべきでした。

提言


COP21(国連気候変動会議)

CTA(中央チベット行政府)は国連COP21が、健全な地球とその持続のための確固とした合意に至ることを望みます。さらに私たちは、パリに会した世界のリーダーたちが健全な地球とその持続のためにチベットが重要な役割を果たすことを認識し、チベットを中心に気候変動の議論を展開することを強く求めます。

遊牧民

乾燥地帯において、遊牧民の移動がその土地の持続性を保つ鍵を握っているということは、各国政府によって認識されつつあります。残念ながら、草地に関する中国政府の政策および法律は、チベット遊牧民の自由な移動を制限しています。遊牧民は彼らの土地から大規模な定住地に追いやられています。これまでに200万人の遊牧民がそれらの措置の対象になってきました。

チベットの遊牧民は高山の草地のすぐれた管理人であり、彼らが古くから培ってきた知識や経験は、気候変動による環境問題の緩和と改善に生かされるべきです。地元住民のニーズを考慮し環境を共同管理するという基本方針に則り、遊牧民を含む地元チベット人社会が意思決定プロセスに関与するべきなのです。

中国の環境保護法

最近中国は環境保護法を可決させました。そこには自治区域もその対象となることが言及されています。さらに同法は、国民や法人、その他の団体が地元の環境の質に関してその基準を設け、環境保護活動を監督する権利を有すると規定しています。

また同法には、『重点生態系機能区域、生態環境脆弱区域を厳重に保護する』と明記されています。この法律は中国政府の責任において、チベットにおいても公正かつ厳重に試行されなければなりません。

国境を越えた調査協力

チベット高原の生態系の実態およびそれに関わる公共事業や土地利用に関する政策の評価について、独立した機関による国際的、科学的評価がなされる必要があります。チベット高原が気候変動によって引き起こされた問題の緩和と改善にとっていかに重要であるかを十分に理解するためにも絶対に必要なのです。

あなたにできること


パブリック・アクション

『世界の屋根』フォト・チャレンジに参加して、チベットのためのクライメット・アクションを支持してください。グループ、個人は問いません。腕を上げ、手で頭上に屋根の形を作り写真に撮ります。撮った写真を

I support #climateaction for #Tibet – the #RoofOfTheWorld at #COP21

のメッセージと共にツイッター、インスタグラム、Facebookでシェアしてください。

COP21に参加するリーダーの皆さま

パリに会する世界のリーダーの皆さまには、地球のための健全な環境とその持続を目指す確固とした合意に至る義務があります。中央チベット行政府は、パリに集う世界のリーダーたちがチベットの重要性を認識し、チベットを中心に世界の気候変動に関する議論を展開させることを強く求めます。

国際社会は、中国がこれまでに交わした約束を守り、気候変動に関する政策を実施するよう、中国政府の責任を問うべきです。さらに私たちは、チベット民族が自らの土地の管理人として存在できるように国際社会の支持を強く求めます。

中華人民共和国

中央チベット行政府は、中国が2030年までの温室効果ガス排出量の削減目標を定めたことを歓迎しますが、チベットの河川にさらなる巨大ダムを建設する計画は縮小されるべきだと考えます。それらのダム計画は、壊れやすいチベットの生態系に取り返しのつかない深刻なダメージを与え、中国そして近隣国の何十億という人々に影響を与えるでしょう。中国は地元チベット人の意見やニーズを考慮し、新たに制定された環境保護法を遵守しなければなりません。


世界の屋根を守れ!チベット・クライメット・アクションについてさらに知りたい方は tibet.net/COP21 をご覧ください。
  • 世界の屋根を守れ!チベット・クライメット・アクションは中央チベット行政府、情報・国際関係省の環境・開発デスクのイニシアチブで進められています。

 

(翻訳:中村たかこ)

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