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これから開催するイベント

ワンダー氏、学園祭に招かれる

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1999年11月21日宇都宮・23日東京

11月21日は宇都宮大学(写真右)、23日は成蹊大学でダライ・ラマ法王日本代表部事務所のワンダー氏が講演を行った。

主催したのは音楽や旅行などからチベットに興味を持った学生たちである。宇都宮大学においてはStudents for a Free Tibet(SFT)が1999年8月に設立された。
SFTは1994年にアメリカで設立された学生中心のチベット・サポート・グループで、現在その数は世界中で400を超えている。

講演内容を以下に抜粋してまとめた。

◆◆ 宇都宮大学 ◆◆

SFTが日本でできたのは、宇都宮大学が第1号。皆さんが活動しているのはチベットのためだけではなく、世界のため。今の世の中は五感のうち目を中心とした文化。目で見る、楽しむ。人間にとって1番大切なのは、心。チベットの文化でいうと、抽象的なもの(例えば、平和、理想、正義、善、夢、希望、動機、慈悲、愛情、知恵)が1番大切。これらを研究し、理解することが大切。それを大切にするのは、この世に人間しかいない。今我々の目に映るのは、全てそれらが基になっている。動機を持って、考えて、何かを作り出す。最初の動機が良ければ、必ず良い結果が生まれる。SFTを始めたのはすごくいい動機。日本の若者にチベットの現状を伝えるため、これからもぜひがんばって。

チベットは世界の屋根と呼ばれ、そこが汚れるとその下の国々に影響が出る。暴力で押え込むことは、本来の人間のやり方ではない。「チベット人の言っていることは理想で、現実は難しい」と言う人もいる。しかし、今の現実は理想を追って出来たもの。現在の民族紛争は理想を追ったもの。それは動機が良くなかったから、こうした結果となっている。人間は脳を使って問題を解決していかなくてはならない。人が人を殺すということは、まず考えられない。そういう考えがチベットでは生きている。心(マインド)は実際にあるけど、形も色も重さもない。どんな現象でも多くの原因が存在する。そう考えると、物事を深く理解することが出来る。全ての生物に共通なのは幸福。それには慈悲(思いやり)が必要。自分が幸福を求めるためには、誰かを傷つけてはいけない。だから、共存が必要。我々は一人一人価値があるから。チベットのそうした考えが今後世界を平和にしていけると思う。だから、その文化をぜひ守っていきたい。それを皆さんが支援してくれるのはとても良いこと。21世紀は非暴力で平和な社会をつくっていきたい。それには物質的な発展以上に精神的な向上が必要。

◆◆ 成蹊大学 ◆◆

チベットは今中国の中にある。日本と同じように長い歴史と文化を持っている。人間の一番の目的は平和的にお互いに思いやりを持って、戦争、武器のない世界を作っていくこと。だから、チベットには軍隊がないし、チベット人は戦うことを好まない。中国や他の国は「軍隊がないから、だらしがない」と言うかもしれない。破壊には知識もエネルギーもいらないが、何かのために創り出すというのはすごく難しい。それが出来るのは人間だけ。誰かのために良いものをつくるには、智慧(知識)と慈悲(思いやり)とエネルギーが必要。

中国は「チベットが他の国よりも遅れ、野蛮である」と主張している。そして、「平和的に解放」しようとした。1959年チベットの人口は600万、中国の“平和的解放”によって、1983年の統計によると120万人が殺された。現在チベット人が600万に対し、中国人は750万。中国から大量に移住してきて、チベットの文化と民族が消えていっている。今現在ダライ・ラマ法王は独立ではなく自治を求めている。その自治とは外交と防衛を中国に、文化・宗教・経済・環境はチベット人に任せてほしいということ。生きる自由を与えてくれたら、後は何もいらない。16年前から中国との対話を求めているが、反応はいまだにない。

いまだにチベット内ではダライ・ラマの写真を保持したり、「チベット独立万歳!ダライ・ラマ万歳!」と叫ぶだけで、逮捕される。刑務所の中では再教育が行われ、「チベットは中国の一部だ」と強制的に言わされている。我々は1959年から40年間闘い続けてきた。1、2年以内にすぐに国へ帰れるだろうと思っていた。世界には国連があり、彼らが助けてくれることを期待していた。しかし、中国は大きく、チベットは小さい国だから、誰も相手にしてくれなかった。その後徐々にチベット人の声を聞いて、そこには真理があると理解を示してくれるようになった。特に最近では、Students for a Free Tibet(SFT)の活動が盛ん。若い人は正義に敏感で、過去を振り返っても革命を起こすのはいつも若者。

私は1959年に母と弟と別れ亡命した。途中、中国軍機がやってきて、木の下に急いで隠れたのを憶えている。それが、唯一間近で見た中国軍。その他の戦闘は一度も見たことがない。母と弟は私の2日後に出発したが、途中で捕らえられ、チベットに戻されてしまった。母は文化大革命の時に亡くなったので、とうとう母には一度も会えなかった。弟とは1987年にチベットで再会。今私の妻と子供はカナダにいるが、一人でも日本という自由な世界にいるので、何も問題はない。私のやるべきことは、こうして皆さんに話をすること。なぜなら、チベット内の人たちにはできないことだから。

◆◆ 講演後の学生の感想 ◆◆

「今まで資料でしか知ることができなかったので、実際に話を聞いて実感が伝わってきた。今後も手伝えることがあったら、やっていきたいという決意が強くなった」「展示ブースには興味がある人は来てくれるけど、まだまだ関心は少ない。声をかけても、逃げていく人もいた。特に年配の人。だから、SFTのような学生の方が伝わるのかなと思った」(SFT宇都宮メンバー)

「1999年の夏にインド・ダラムサラを旅行し、チベット文化に触れ、その後本を読み初めて現状を知った。帰国してフリーチベットの活動をしている友達と一緒に、学生の間で知識が広まればいいなと思い、学祭でやることに決めた。実際、話を聞いてくれる人は少なかった。もっともっと根本の問題から広めていかなければいけない。もう少し、侵略当時や、占領下のチベットの様子、中国とチベットの歴史について知りたかった」(成蹊大学音楽鑑賞会部長)

(取材/LT)