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チベットの文化遺産保護に関する声明

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(1993/11 パリ)

チベットの主要な歴史遺産,自然景観に対して保護が加えられず、またラサ旧市外の取り壊しが続けられている事態を非常に憂慮し、私は1991年と1992年、ユネスコに実情の調査と適切な支援を要請しました。

最近中国政府の側でも、ポタラ宮を世界遺産に登録するよう、ユネスコに対し要請している旨を聞き、それは大いに喜ばしいことだと思っています。

しかしながらチベット古来の文化財や遺跡で、この40年間に亘る中国占領下に破壊を免れたものは極めて僅かしかなく、それらを全て保護してゆく必要性がある点に、留意しなければなりません。

中国側が2001年までにラサ市を現代的な社会主義の拠点都市に改造しようとして、1980年以来20年計画で推進しつつあるプランに、私は深い憂慮を禁じ得ません。既にラサ中心部で、数多くの古い建物や宗教遺跡が取り壊されています。こうした破壊は急ピッチで進められているのです。

チベットの首都たるラサの旧市街で破壊が進行している事態に鑑み、文化財建造物や歴史遺跡を注意深く保存し、保護を加える必要性が高まっています。

ラサ盆地の全域とその他の重要な歴史的文化財,自然景観について、国際会議を組織し、都市計画や環境保全の専門家の意見も取り入れた形で保護を行ってゆけばよい、と私は希望しております。これは、現在だけに関係する問題ではありません。

(中国人がチベットへ大量流入しているという)人口移動の問題とチベットの文化遺産の破壊は、チベット人が自らの祖国に於いて疎外された状況を生み出しており、それは驚くべき早さで進んでいるのです。このような開発の結果は、一種の文化的抹殺行為に等しいものといえましょう。

チベット文化を保存し、それを現代世界へ調和させてゆくという問題に包括的な解決をもたらそうとすれば、チベット問題を平和裏の交渉で解決させるという枠組みの中でしか、道を探すことはできないのです。

以前から繰り返し表明してきたように、私は中国政府との間で、内容の伴った交渉を開始する用意があります。それは、いつ、どこで開催しても構いませんが、双方とも前提条件を設定せず交渉に臨むことが肝要です。