ニュース

ニュース

最新ニュース

これから開催するイベント

チベットの囚人ンガワン・チョペル ついに母親との面会が許される

Print Friendly, PDF & Email
2000年7月25日
Rutland Herald紙(米国バーモント州の有力メディア)

 

「死ぬ前にもう一度息子に会いたい!」

数年にわたる国際的な圧力で、中国は、ついに7月24日、ミドルバリー大学生がチベットの刑務所に投獄されている息子への面会を母親に認めた。米国の人権係官と米国下院議員バーモント州代表団は、この1歩を称えたが、中国がさらに進めて、ンガワン・チョペルを医療目的に仮釈放すべきと発言。チョペルは、拘置所で、肝炎、気管支炎、及び肺に伝染病を患っている。

「我々は、この中国の対応の進展を歓迎し、訪問がうまくいくことを希望する」と米国国務省係官は述べた。しかし、同係官は「合衆国は、健康がすぐれないと言われているンガワン・チョペルをすぐに中国が解放すべきと信じている」と続けた。

チョペルの母親ソナム・ディキとチョペルの叔父ツェリン・ワンドゥは、7月25日、在ニューデリーの中国大使館からようやく待望の渡航書類を受け取った。彼らは、7月25日、ネパールまでバスで行き、ラサまで飛行機で渡り、チベットに1週間滞在する予定である。

母親と叔父の二人は、1995年の夏のチョペルの逮捕以来、面会が許された最初の人物となる。ミドルバリー大学でフルブライト奨学生であったチョペルは、祖国チベットを伝統音楽と舞踊をビデオに撮るために旅行中、スパイ容疑で拘留され18年の禁固刑を受けた。事件は、チョペルの釈放を求めるアムネスティ・インターナショナルなどの団体による国際的な世論による猛攻撃によって浮上。数年にわたって、米国下院議員バーモント州代表団や米国高官らは、中国に対して、母親ディキに息子面会のためビザを発給するよう尽力してきた。なぜなら、親類肉親が囚人の面会ができることは中国の法律で定められているからである。

ずっと交渉は足踏みしていたかに見えていた。ジェームズ・ジェフォード上院議員の立法担当シニアアシスタント、ローリー・シュルツ・ハイムの弁によると、ついに2ヶ月前(今年5月)、米中間の永続的かつ正常な貿易関係についての会議の折、駐米中国大使がディキに息子面会を許可した。ワシントン、北京、ニューデリー、ラサのオフィスが、数週間をかけて渡航の細かい業務を解決してきた。シュルツ・ハイムはこの結果を大変喜んでいる。

「一チベット人が、チベットの刑務所にいる家族に面会出来る例はこれが初めてと思う」とシュルツ・ハイム。

以前中国との正常な貿易関係をサポートしたことがあるジェフォード上院議員だが、今年はチョペルの件で中国との恒久的な貿易関係を築くことに反対し、チベット問題について議会で演説すると中国に警告している。シュルツ・ハイムが語るところによると、この警告で中国はビザを出すことになったらしい。しかし、他の関係者らは、、バーモント州の代表団や外交官ら全員による何ヶ月もの長期間にわたったハードな折衝の賜物と言っている。

とにかく、母親のディキは息子に会えることに興奮しているとのことだ。ディキは、息子に、寒さをしのぐ衣服、ビタミン剤、食べ物などを持参する計画をたてている。しかし、ディキはどのような書簡であれチベットに持っていくことは許されず、弟以外は肉親の同行が許可が下りなかった。

チョペルを支援している人々の希望、それは、たくさんの人々が心配していることをチョペル自身が知ること、またチョペルの家族が彼の健康状態がどうなのかもっと把握できるようになることである。

「彼らが持ってくるデータは、医療目的仮釈放を支援する上で次のステップの大きな糧になるだろう」とシュルツ・ハイム。

中国の役人は、ディキが弟と共にラサの出入が許可される正確な期日をディキに教え、飛行機の予約、ラサでの宿泊の手続きなども行ってくれたらしい。報告によれば、チョペルはラサの東650キロに位置するポオ・タモ刑務所にここ2年拘留されている。中国の役人が息子に会う為にはポオ・タモまで行かなければならないとディキに言っていないところをみると、欧米のオブザーバーたちは、チョペルが面会のために刑務所を移動するのではとの見方を強めている。たったひとつの短い面会しか許されないのか、それとも数日間にわたって面会が可能なのか、中国当局は明らかにしていない。

腰の曲がった60代半ばの女性ディキは、30年以上前にチベット難民として徒歩でインドに亡命してきた。故国チベットへの初の帰還がどうなるかとても気をもんでいたという。5年以上前から、「死ぬ前にもう1度息子に会いたい」とディキは息子の釈放を求めるキャンペーンのため世界中をまわった。

「ディキは息子に会えて喜ぶことだろう。それが彼女にとって救いになることを望む」とミドルバリー大学時代からのチョペルの友人、ジョン・バーローは語る。バーローは、現在、バーモント・ソナム・ディキ基金の会長でもある。彼曰く・・・
「再会がそれほど困難なものにならなければいいが」

バーローが管理している基金が、今回の全ての旅費およそ4000ドルを賄う。最初、ディキは基金からの援助を断ったが、今回の旅費の費用として感謝して受け取った。

ワシントンにある「インターナショナル・キャンペーン・フォア・チベット」の政治担当ディレクターのメリー・ベス・マッケィは、こう注意を促す。

「この訪問は大変重要ではあるが、これで一見落着と決めてはならない」

「確かに結果を得ることができた、しかし、全ての背景に横たわっている状況は深刻で先が全く見えない。ンガワンを釈放出来た時にこそようやく、私たち自身が結果に心から満足できるというものだ。中国がディキに息子に会うことを認めたとしても、釈放には至らないだろう。中国が彼を釈放するようなことがあれば、それは素晴らしいことだ。しかし、そんなことが起きるとは、どうしても考えられない」とマッケィ。

「母親の面会でチョペルに元気が出れば」と前述のチョペルの学友、バーローは語る。 「チョペルは確かな信頼を持つことができるだろう。チョペルは、今回の面会に際して相当な数の動員が行われること、また彼自身がチベットの人里離れた刑務所の忘れられた存在でないこと、私たちが彼の釈放のためにずっと一生懸命やってきたこと、こうしたことを理解するだろう」

米国下院議員バーモンド州代表団は、これからも活動を続けることを誓った。また、面会が果たして質の高いものであるかどうか綿密に見届けるとも述べた。

「完全な報告があるかどうか心配してディキの帰りを待つことになるだろう」
「私はンガワンが釈放されるまで活動をやめない」(ジェフォード上院議員)

「中国と米国がより良い関係を築くなら、中国政府はンガワン・チョペルの釈放のために前進することになるだろう。中国は、もはや我々には脅威の対象ではない。彼らは、いかに自国の文化を保護しているか記録映画でも作って喧伝するくらいしかない」(パトリック・リー上院議員)

「このチョペルの事件はとんでもない人権侵害」「我々は中国に対して圧力をかけ続けなければならない。楽観的には、今回の件は難関突破と言える」(バーナード・サンダー下院議員)

ワシントンの中国大使館報道担当事務所にコメントを求めたが、回答が寄せられなかった。