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ダライ・ラマ法王の声明 〜チベット人のみなさんに向けて〜

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(2008年4月6日)

チベットにおられるチベット人のみなさんに心からのご挨拶を申し上げ、私の考えを共有させていただきたいと思います。

  1. 今年の3月10日以降、チベットのほとんどの地域で抗議行動やデモ行進が行われ、中国本土においてさえも、いくつかの都市で学生が抗議行動を行ないました。私はこれを、チベット人が長年こらえてきた心身的苦悶、宗教の自由の不在をはじめとする権利の抑圧、「チベット人は中国共産党を”活仏”として見ている」などあらゆる場面において極左的、漢優越主義的に真実がゆがめられることに対する深い憤りが爆発したものだとかんがえています。私は、平和的にチベット人の志を表明するために行なわれていたデモ行進が武力弾圧され、チベットの騒乱が生じ、多くの死者、そしてそれを上回る数の逮捕者、拘禁者、負傷者が発生していることを非常に哀しみ憂慮しています。このような抑圧や苦しみはじつに嘆かわしい悲劇であり、思いやりのある人ならだれもが涙を流すでしょう。しかしながら私は、このような悲劇的な事態に直面し、どうしようもない無力感を感じています。
  2. 私は、この度の在の危機の間に命を失ったチベット人同様、中国人にも哀悼の祈りを捧げています。
  3. この度のチベット全土における抗議行動は、「若干の”反逆分子”を除く大部分のチベット人は満足した生活と繁栄を享受している」という中華人民共和国のプロパガンダを否定してきただけでなく打ち砕いてきました。これらの抗議行動は、ウ・ツァン、カム、アムドの三地域のチベット人が同じ願いを抱いていることを明確に示す結果となりました。また、チベット問題がもはや無視しておけない問題であることを世界に知らせることにもなりました。これらの抗議行動は、「事実から真実をみつける」ことを通して問題を解決していく方法をみいだす必要があることを浮き彫りにしています。チベットの人々のためにすべてを投げ打って深い苦悶と希望を表明した人々の勇気と決意は、世界中の人々の心に届いていますし、世界中の人々がそのようなチベット人の精神を支援してくださっています。
  4. 政府職員、共産党幹部として働いているチベット人の多くがチベット人としてのアイデンティティを失うことなく、この度の危機のなかで良心と勇気を見せてくださっていることに私は深く感謝しています。政府職員、共産党幹部として働いているチベット人のみなさんには、今後は個人的な利益を追求するのではなく、チベット全体としての利益を護っていくよう、チベットの人々のほんとうの気持ちを上司に報告し、チベットの人々に無作為のガイダンスを行なっていくよう呼びかけたいと思います。
  5. 世界中の大統領、首相、外務大臣、ノーベル賞受賞者、議員、一般市民が、現在も続けられているチベットの人々に対する厳しい弾圧をただちに中止するよう明確な力強いメッセージを中国政府に送ってくださっています。このようなメッセージはすべて、中国政府が中国とチベットの双方にとって有益となる解決に到る道を歩めるよう後押ししてくれています。私たちは、そのような人々の努力を無駄にすることなく前向きな結果を生んでいくべきなのです。みなさんがそれぞれに抑えようのない怒りを感じているのは承知しています。しかし、あくまで非暴力を貫くことが大事なのです。
  6. 中国当局は、私と中央チベット政権がこの度のチベットでの暴動を煽動し、指揮していると主張していますが、これは完全に事実に反しています。私は、この件に関して、しかるべき独立した国際機関による調査を行なっていただくよう繰り返し呼びかけてきました。そのような独立した機関が真実を明らかにしてくださると私は確信しています。中華人民共和国は、自らの主張を裏づける証拠があるならば、それを世界中の人々に開示しなければなりません。ただ主張するだけでは不十分なのです。
  7. チベットの将来については、私は、中華人民共和国という枠組み内で解決を図ると決意しています。1974年以来、私は、チベットと中国の双方にとって有益となる中道のアプローチを真摯に貫いてきました。このことは世界中の人々がご存知です。中道のアプローチとは、すべてのチベット人が自治区という字義通りの権利を享受した行政機関によって統治されることであり、外交と防衛を除くすべての問題を自らの意思で決定できる国家的地域自治があることを意味します。しかしながら当初から申し上げているように、チベットの将来を最終的に決める権利は、チベットにおられるチベット人のみなさんにあります。
  8. 今年開催される五輪の開催国となることは、中国の12億人の人々にとって大きな誇りです。私は、極めて当初から北京で五輪が開催されるよう支持しておりました。その姿勢は、今も変わりません。いかなる妨害となるようなことをもチベット人はしてはならないと私は思っています。自由と人権のために立ち上がることはすべてのチベット人に認められた権利です。しかし、中国の人々の心に憎しみを生むようなことをしてはだれのためにもなりません。暴力と威嚇の上に調和ある社会が築かれることはないのですから、私たちは、心のなかに信頼と敬いの念を育むことで調和ある社会を築いていく必要があるのです。
  9. 私たちの苦しみは、中華人民共和国の指導部の一部に由来するものであり、中国の人々に由来するものではありません。ですから私たちは、誤解を招くようなことや中国の人々を傷つけるようなことをしてはなりません。このような困難な状況にありながらも、文筆家や法律家など見識ある中国人の多くが中国本土や外国から声明を出したり、記事を書いたり、支援を約束してくださるなどして私たちと団結してくださっています。私が、2008年3月28日に世界中の中国人の人々に向けて発表した声明については、みなさんもご存知かと思います。
  10. 現在のような状況がチベットで続くなら、中国軍はさらなる武力行使に踏み切り、チベットの人々をいっそう弾圧するのではないかと私は非常に憂慮しています。私は、チベットの人々に対する道義的責任から、チベット全土における弾圧をただちに中止し、軍隊と警察を撤退させるよう中華人民共和国の首脳に繰り返しお願いしてきました。それが実行されたあかつきには、私もチベット人に抗議行動を中止するよう呼びかけると申し上げてきました。
  11. チベットの外で自由な生活を送っておられるすチベット人の同胞には、チベットでの事態に対する気持ちを発言される際には最大限の注意を払うよう強く求めたいと思います。
    私たちは、たとえ間接的にでも暴力と受け取られかねないいかなる行為をもすべきではないのです。たとえ耐え切れない怒りに駆られているとしても、私たちが育んできた深く尊い価値を傷つけるようなことをしてはならないのです。私たちは非暴力の道を成就できる、と私は固く信じています。私たちは賢明であらねばなりません。これほどに先例のない愛情と支援を世界中からいただける理由はどこにあるのか、理解していなければなりません。
  12. 現在、チベットは事実上封鎖されており、外国の報道機関がチベットに入ることは禁じられています。このメッセージがチベットにおられるチベット人のみなさんに届くかは疑問です。しかし私は、このメッセージがメディアを通じて流され、口伝えに伝えられ、大多数のみなさんのもとに届くことを願っています。
  13. 最後に、チベット人のみなさんに繰り返し呼びかけたいと思います。事態がいかに厳しくとも、非暴力を実行し、非暴力の道から外れないでください。

ダライ・ラマ
インド、ダラムサラ


※チベット語の原文を英文に翻訳、さらに邦訳しました。