チベット問題解決の中道政策とその他の関連資料

ダライ・ラマ法王の中道政策、中国人有識者間で多大な支持

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ダライ・ラマ法王が提唱する中道政策の詳細が明らかになると、チベットと中国の未来を懸念する、責任ある立場にある多くの中国人有識者たちが、中道政策は中国・チベット双方の現実に合致し、双方にとって有益であると確信した。この確信によって中国人有識者たちはチベット問題との連帯を表明し、チベット問題の解決に向けて中道政策を支持するようになり、現在も中道政策を支持し続けている。

(1)特に著名な中国人有識者たちの論説を紹介

以下に、有識者たちの代表的な見解として、特に著名な中国人有識者たちの論説を紹介する。

  1. 元中国社会科学院マルクス・レーニン主義毛沢東思想研究所所長、経済学者として著名な蘇紹智(Su Shaozhi)氏は次のように述べている。「ダライ・ラマがストラスブールの欧州議会で演説を行なった1988年、私はオックスフォード大学にいた。私の見解におけるチベットは、独自の民族・宗教・文化・伝統を持つ、じつに特別な地域である。したがって、このようなチベット社会の特色を、かつて鄧小平が「一国二制度」と提起したように「ワン・チャイナ(ひとつの中国)」という枠組みの下に保護していくことができるならば、これは中国にとっても実際的かつ前進となる」「1999年、私はワシントンD.C.で友人と共にダライ・ラマにお目にかかった。その際、ダライ・ラマのストラスブールでの演説に話が及んだので、私は、ダライ・ラマがチベットの独立ではなく自治を求めておられることへの称賛の念をお伝えした。チベット問題を早急に解決するには、ダライ・ラマの意図が中国人に正しく理解され、中道政策が実現されるよう、責任あるメディア関係者と正しい認識を持つ人たちがあらゆる手を尽くしていかねばならない。そうしていくことは、チベット人の幸福のためであるのみならず、中国人の福利のためでもあるのだ」。北京に住んでいた蘇紹智氏は、当時の中国共産党統一戦線工作部(United Front Work Department)のリーダーたちにダライ・ラマの中道政策を支持するよう提案した。
  2. 中国人の天文物理学者で、スリー・ボイス・オブ・フリーダム・イン・チャイナ(Three Voices of Freedom in China)のメンバーである方励之(Fang Lizhi)氏は、1992年3月にコロンビア大学で開催された中国・チベット問題に関する会議においてダライ・ラマ法王と会した。その席で方励之氏は、チベット問題とチベット人の権利に関するダライ・ラマ法王の思想に対する尊敬の念を表明した。
  3. 趙紫陽(Zhao Ziyang)前中国共産党総書記の側近であり、中国社会科学院政治学前研究所所長を務めた政治学者の厳家其(Yan Jiaqi)氏は『連邦中国構想(Towards a Federated China: An Idea in 1992)』というタイトルの本を書いている。本書にはチベットに関する章があり、厳家其氏は「チベットは中国から分離することなく、連邦中国に加わるべきである」との見解を表明している。厳家其氏はまた、「このような見解はダライ・ラマの『五項目和平プラン』と『ストラスブール提案』に基づくものである」と明言している。同様に1995年、『連邦制度とチベットの未来(Federalism and the Future of Tibet)』と題した記事では、チベットについての見解をさらに広げている。厳家其氏は今日、ダライ・ラマ法王の中道政策の最も熱心な支持者として広く知られている。
  4. 中国共産党上級党員で、北京在住の法律の専門家である于浩成(Yu Haocheng)氏は、1997年10月、『チベット問題解決の最善策は連邦化にあり(Federalism is the Best Way to Resolve the Issue of Tibet)』と題する記事を発表している。于浩成氏はこの記事の中で、「独立ではなく自治を求めているダライ・ラマの提案は、いわば連邦化を求めているのに近い。統一を求めているのでも分離を求めているのでもないダライ・ラマの考えは、チベット問題を解決する最善の方法である」と書いている。
  5. 民主活動家の徐文立(Xu Wenli)氏は10年間の服役後釈放されたが、1998年2月4日に発表した記事『中国は、チベット問題解決に向けてのダライ・ラマの呼びかけに積極的に応えるべきである(China Should Respond Positively to the Dalai Lama’s Appeal to Resolve the Issue of Tibet)』の中でダライ・ラマの中道政策を支持し民主化運動を続けたとして、さらに13年の刑務所入りを課された。
  6. 1997年、英国ロンドン大学で開催された中国・チベット会議において、チベット人参加者がダライ・ラマ法王の中道政策の詳細を中国人参加者に説明すると、中国共産党の歴史専門家であるSi Malu氏は、「チベットの独立を求めていないのならば、ダライ・ラマは民主中国の大統領に任命されるべきだ」と提言。このことは、後にSi Malu氏自身の記事の中で述べられた。
  7. 著名な中国人作家である王力雄(Wang Lixiong)氏は、2000年、有名な記事『チベット問題解決の鍵はダライ・ラマ(The Dalai Lama is the Key to Resolving the Tibet Issue)』を北京発で発表した。王力雄氏はこの記事の中で、「独立ではなく名実伴う自治を求めるダライ・ラマ法王の中道政策こそがチベット問題解決の最善策である」と教養ある中国人に向けて紹介した。この記事により、中国内外の多くの教養ある中国人がダライ・ラマ法王の意図を理解するところとなり、中道政策が支持されるようになった。
  8. 中国人民大学教授の丁子霖(Ding Zilin)女史は、2008年3月20日、『ダライ・ラマを支持しよう(Support the Dalai Lama)』と題する記事を書いた。丁子霖女子はこの記事の中で、「チベット問題の解決にあたっては、私はダライ・ラマの中道政策を支持している。同時に中国政府に対し、ダライ・ラマと直に、あるいはダライ・ラマの特使を通じて、ただちに事前条件なしの意味ある交渉に取り組まれるようお願いしたい」と述べている。
  9. 成都の『四川文学』誌のライターとして著名な由雲飛(Ran Yunfei)氏は、2008年3月20日、『チベット問題に関する私見(My Perspective on the Issue of Tibet)』と題する記事を書いた。由雲飛氏はこの記事の中で、「私はチベットの自治を支持しているのであり、独立を支持しているのではない。独立を求めれば、さらなる混沌を招くことになるだろう。基本的に私は、チベットが統一中国の下で名実伴う高度な自治を得ることを支持している」と述べている。
  10. 2008年3月22日、王力雄(Wang Lixiong)氏、劉暁波(Liu Xiaobo)氏、張祖樺(Zhang Zuhua)氏をはじめとする中国を代表する30人の知識人たちが『中国知識人有志のチベット情勢処理に関する十二の意見(Twelve-point Suggestions for Dealing with the Tibetan Situation)』と題する請願を発表し、「われわれは、ダライ・ラマの平和的解決に向けての呼びかけを支持する」と述べた。この請願の発表から8日間で303名が署名をしたが、内214名が教師、弁護士、ジャーナリスト、作家、芸術家など様々な分野で中国を代表している人々であった。後にメディアの取材に答えた人たちは、署名した理由について次のように語っている。「ダライ・ラマ法王は独立を主張しておられるのではない。したがって、われわれがダライ・ラマ法王を支持するのも違法ではない。これが請願書に署名した理由だ」
  11. 中国社会科学院の研究員で憲法専門家の張博樹(Zhang Boshu)氏は、2008年4月22日に『チベット問題解決のための基本策(The Basic Way to Resolve the Tibet Issue)』と題する記事を発表し有名になった。
    張博樹氏は、「独立の代わりに名実伴う真の自治を求めていく中道政策の下であるならば、対話の道を歩むことでチベット問題を解決できるはずだ」と書いている。張博樹氏の見解は高く評価され、中国本土の多くの有識者たちの支持を得ている。
  12. かつて趙紫陽(Zhao Ziyang)総書記の秘書として仕えた中国共産党上級幹部の鮑トン(Bao Tong)氏は、『外務省報道官へのアドバイス』と題する記事の中で次のように述べている。「ダライ・ラマは独立を求めていない。となれば、ダライ・ラマの見解のどこが正しくないというのか。ダライ・ラマが、中国という枠組みの範囲内で法的に許容可能な自治を望んでいることは明らかである」
  13. 2008年に成都の法廷で行なわれた作家の陳道軍(Cheng Daojun)氏の裁判において、北京に拠点を置く弁護士の朱久虎(Zhu Jiuhu)氏は、ダライ・ラマ法王の中国の人々への呼びかけを引用して次のように述べている。「ダライ・ラマ法王は中国からチベットを分離しようとしているのではない。ダライ・ラマ法王はチベットの名実伴う自治を求めているだけだ。これ(ダライ・ラマの努力)を支持することは合法であるのみならず理に適っている」
  14. 2009年2月16日、北京を拠点に活躍していた弁護士の李建強(Liu Jianqiang)氏は、『十七条協定とダライ・ラマの中道政策』と題する記事を書いた。この記事の中で、李建強氏はダライ・ラマ法王の見解を高く評価し、「現在の状況において、ダライ・ラマ法王の中道政策はチベット問題を平和的かつ実際的に解決できる素晴らしい方法である」と述べている。
  15. 中国・貴州省に拠点を置くNGO(非政府組織)人権擁護団体は2010年1月5日、チベット問題に関する公式声明を発表し、「チベット内外で暮らす幅広い分野のたくさんの人々が、人権ならびに自由・民主化・法治を望んでおり、ダライ・ラマの中道政策に盛り込まれている名実伴う自治、平和、非暴力に敬意を表すとともに、これを支持している。われわれは、ダライ・ラマの見解こそがチベット問題を解決する唯一の方法であると考えている」と伝えた。
  16. 2010年4月30日、台湾の馬英九(Ma Ying-jeou)総統は、米国のニュース報道チャンネルCNNの質問に答え、チベットの自治、ならびにダライ・ラマ法王と中国政府の対話を支持する意を表明するとともに「チベット問題を解決するにはこれが唯一の方法だ」と述べた。

 

以上から、ダライ・ラマ法王の中道政策の真の意図が世界中の大勢の中国人有識者たちの間で支持されていることがわかる。しかし、これらはほんの一握りの例に過ぎない。上記以外にも、Yang Liu教授、学者のChen Yize氏、民主活動家であり作家の劉賓雁(Liu Binyan)氏、人権活動家で作家の劉暁波(Liu Xiaobo)氏、Yujie氏、Hu Jia氏、評論家の胡平(Huping)氏、民主運動リーダーの王军涛(Wang Juntao)氏、天安門事件の学生リーダーであった沈・トン(Shen Tong)氏がチベット問題に対する支援を表明している。このような支援はすべてダライ・ラマ法王の中国・チベット双方にとって有益な中道政策の成果である。

(2)ダライ・ラマ法王の中道政策に関する中国人有識者たちの分析記事や論評記事を紹介

中国人有識者たちはダライ・ラマ法王の中道政策について多くの記事を書き、分析し、論評を寄せている。以下にその例を紹介する。

  1. 張青(Zhang Qing)氏:作家:『中道政策は民族間の敵意を癒す万能薬(The Middle-Way Approach is Panacea for Curing the Disease of Ethnic Animosity)』:2009年9月20日
  2. Weng Yanfeng氏:作家:『ダライ・ラマの中道政策は正しくかつ完璧なチベット問題の解決策である(The Dalai Lama’s Middle-Way Approach is the Right or Prefect Way of Resolving the Issue of Tibet)』:2010年2月17日
  3. Tan Mu氏:作家:『私は中道政策を高く評価する(I Appreciate the Middle-Way Approach)』
  4. 楊建利(Yang Jianli)氏:学者:『新たな中道政策の提案(I Propose a New Middle-Way)』:2009年3月10日
  5. 曹長青(Cao Changqing)氏:作家:『ダライ・ラマの中道政策(The Dalai Lama’s Middle-Way Approach)』:1997年5月19日
  6. 林保華(Lin Baohui)氏:評論家:『ダライ・ラマの中道政策の観点(A Look at the Dalai Lama’s Middle-Way Approach)』:2004年10月23日
  7. 林大軍(Lin Dajun)氏:民主主義活動家:『ダライ・ラマの中道政策と中国の民主化運動』:2010年2月11日
  8. Xu Bangtai氏:民主主義活動家:『中道政策は黄金のアドバイス(Middle-Way Approach is a Golden Advice)』

 

2009年5月5日、ニューヨークにおいて、中国人有識者、民主運動家、作家、学生など、およそ100名による署名礼状がダライ・ラマ法王に手渡された。この礼状には、「猊下は、チベット問題を平和的に解決するために、常に、平和・非暴力・中道の道を歩まれ、チベットが中国から分離しないよう望んでこられました。このことに、われわれは心の底から感謝申し上げております」と述べられていた。この礼状には、作家の陳破空(Chen Pokong)氏、于大海(Yu Dahai)氏、学者の蘇小康(Su Xiaokang)氏、楊建利(Yang Jianli)博士、法の専門家の項小吉(Xiang Xiaoji)氏らのも署名した。

同様に、2009年8月にジュネーブで開かれた中国・チベット会議には、70名を超える中国人が知識階級層の代表として世界各地から集まり、ダライ・ラマ法王の中道政策を称えるとともにこれに敬意を表して、彼らが呼ぶところの『最終文書』を出した。

要するに、ダライ・ラマ法王の中国・チベット双方にとって有益な中道政策が発表されて以来、中国人有識者たちは中道政策への支持を次々と表明してきた。近年、その数はますます増加している。我々が得た情報によると、2008年3月から今年の5月までのわずか2年間で、およそ900件ものチベット問題の解決を支持する記事が中国内外の中国人有識者たちによって書かれている。さらにこれらの記事のほとんどが、「チベット問題はダライ・ラマ法王の中道政策によって解決されるべきである」とする彼らの信念の裏付けとして書かれているのである。これは、特に知識人が中心ではあるものの、概して中国人がダライ・ラマ法王の中国・チベット双方にとって有益な中道政策の意図を年々理解し、我々チベット人との結束を表明するようになっていることの明らかな証である。

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