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ダライ・ラマ法王のメッセージ:アースデイに寄せて

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2020年4月22日
グローバル・ウォーター2020(Global Water 2020)の依頼により寄稿

アースデイ(地球の日)50周年を迎えた今日、私たちの地球は、人類の健康と幸せを脅かす最大規模の困難に直面しています。そしてこのような困難において、私たちは思いやりと助け合いの大切さにあらためて気づかされることとなりました。新型コロナウイルスは人種や文化、性別に関係なしに私たち全員を脅かしているのですから、私たちもひとつの地球家族としてこの問題に対処し、すべての人たちに必要不可欠な物資を提供していく必要があります。

好むと好まざるにかかわらず、私たちは地球家族の一員としてこの地球に生まれました。裕福な人も貧しい人も、学歴のある人もない人も、どの国に属していても、究極的に私たちはだれもが同じひとりの人間なのです。さらには、私たちのだれもが幸せを求め、苦しみから逃れる権利を持っています。この点においてだれもが平等であることに気づくと、自然に他者への共感や親近感が湧いてきます。そのようにして育まれた他者への思いを、私は普遍的責任感と呼んでいます。それは、他の人たちが直面している問題を克服する助けになりたいという心からの願いなのです。

今、母なる地球は、私たちに普遍的な責任感という教訓を与えてくれています。この青い地球は素晴らしい棲み家です。地球の生命は私たちの生命であり、地球の未来は私たちの未来でもあります。実際、地球は私たち全員の母親のような存在であり、私たちもその子どもとして地球に依存しています。目の前に立ちはだかる地球規模の問題に対しては、私たち全員が心をひとつにして取り組むことが大切です。

私が環境問題に取り組むことの大切さを知ったのは、1959年にチベットを離れたときのことでした。チベットでは、自然は常に清らかなものでした。たとえば、せせらぎを見つけるたびに、これは飲んでも安全な水かどうかなどと考える必要はなかったのです。残念ながら、きれいな飲み水を手に入れることができるかどうかというただそれだけのことが、今、世界中で大きな問題となっています。

私たちは、世界中の病人や勇気ある医療従事者たちが、清潔な水と適切な衛生環境という根本的に不可欠のものを手に入れて、制御不可能な病気の感染を予防できるようにしなければなりません。衛生的な環境は、効果的な医療の土台のひとつだからです。

適切な設備とスタッフを備えた医療施設を持続的に利用できることは、現在地球を脅かしている新型コロナウイルスの問題を乗り越えるうえで大きな助けとなります。こうした施設は、今後の公衆衛生上の危機に対する強力な防御ともなるはずです。これは、国連の持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)においても、地球規模の健康のために取り組むべき課題として明確に示されています。

新型コロナウイルスによる危機に対しては、心をひとつにして協力し、差し迫った必要物資の要請に応えていくことが不可欠です。とりわけ、恵まれない環境にある世界中の兄弟姉妹に対してはなおさらです。これからの日々において、私たち一人ひとりができる限りのことをして、より幸せで、より健やかな社会を築くことができることを願っています。

 

ダライ・ラマ
2020年4月22日