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ダライ・ラマ法王のメッセージ エディンバラ異教徒間協会に届けられたメッセージより

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(2005年6月28日)

いかなる個人やコミュニティー・国家といった集団であっても、孤立しながら存在することは明らかに不可能なことです。このことは、私たちが相互依存している世界に生きていることを物語っています。単に抽象的な概念としてではなく、政治、経済、環境といった側面からみてもこれが現実なのです。私たちの全ての行為は、他者、そして新たに出現しつつあるグローバルな国際社会に、大きな影響を与えているという事実を認識しなければなりません。

私たちは毎日、飢餓、貧困、栄養失調による死、予防や治療が可能な病気による死、同様にはっと息を呑むような悲惨な事件をニュースで見たり新聞で読んだりしています。その度にこれらの事件が、私たち自身が選択した目標そのものの誤りによって生じたものか、動機の誤りによっても生じたものか、あるいはそれら両方によってもたらされたものかについて自分自身に問い直さなければなりません。社会の不調和、健康障害、災害・戦争といったものが生じるところならどこでも、明らかに貧困が起因しているのです。私たちの中でそのような物事への関わりが可能な人はすべて、国内部や国同士の間に存在する富の不均衡を無くすことによって貧困を根絶し、富める者と貧しい者との間にある格差をさらに広げようとする現在の傾向を阻止するため、あらゆる努力を行う責任を負っています。

飢餓、貧困、不平等といった問題の大半は唐突には生まれません。それらは原因と条件によって生じるものであり、その多くはコントロールすることが可能です。それが堅固で建設的なリーダーシップが重要になってくる理由です。この貧困の問題の改善にむけて有効な効果を得る為に、リーダーは問題との関わり方や戦略・行動を明らかにする必要があります。そこで私は、スコットランドで開かれるG8サミットや、「貧困を過去のものにキャンペーン」(註)のテーマを積極的に支援するため、G8サミットのリーダー達や彼等のアドバイザーに対して、考え、決定事項、そして彼らのとる行動の結果について熟考し、これらを現実社会に具体的に反映するよう求めます。現在、そして将来において、G8サミットのリーダー達は、全ての人類、そしてこの地球のために貢献するでしょうか。

相互依存によって成り立つ社会は慈悲深い社会でなければならず、目標の選択やその過程においても慈悲深くなければなりません。「自分」自身、「自分の」家族、「自分の」社会、そして「自分の」国のことだけを考えるのではなく、人類全体を一つの家族としてとらえ、これを構成するあらゆる個人や社会に対しても同様に責任を感じるべきです。私は皆さんに対して、病める人に対する慈悲の心を持つだけでなく、必要に応じて他者と分かち合う行為に積極的に関わることを求めます。世界では変化を求める素晴らしい欲求が生まれつつあります。すなわち、倫理的・精神的価値に新たな関わりを持って生まれる変化、対話と非暴力によって対立紛争を平和的に解決するような変化、そして人としての責任と同様、人としての権利、尊厳を是認するような変化です。私たちは、地球環境や経済的な仕組みに対する配慮を早急に教育・促進するような変化や、地上の全ての国家に対して核兵器をはじめとする大量破壊武器の永久撤廃に向けて協調して働きかけるような変化、そして平和・慈悲・尊敬・あたたかい心をより一層推進するような変化を必要としています。人々の意識の高まりという前提条件のもと、これらの変化の目的は果たされると信じています。

もしG8のリーダーや政府が、世界の貧困を縮小する為の具体的なステップに向けて早い段階で踏み出すなら、G8サミットと「貧困を過去のものにキャンペーン」は歴史上の転機と成り得るでしょう。これらが成功すれば皆が恩恵を被るでしょうし、失敗すれば私たちすべてを傷つけることになるでしょう。繁栄や自由の獲得といった目標の中に、世界中の存在のよりよいあり方や次の世代についても考慮されるよう、展望を共に広げましょう。

2005年6月28日
ダライ・ラマ