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ダライ・ラマ法王のノーベル平和賞受賞26周年記念日における内閣(カシャック)の声明

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2015年12月10日

 

本日は、ダライ・ラマ法王がノーベル平和賞を受賞されてから26周年を迎えたことをお祝いするためにここに集まりました。われわれの最も尊き指導者である偉大なるダライ・ラマ14世法王に、内閣(カシャック)より、心からの感謝と敬意の念を捧げます。また世界中におられるチベット人の皆さん、チベット人を支援してくださる世界中の皆様に心よりご挨拶を申し上げます。

ダライ・ラマ法王は、非暴力と対話によってチベット問題はもとより世界中の問題を解決すること、異なる宗教間の調和を育むこと、人間の心のよき本質を高めること、そして環境問題に取り組むことを提唱してこられました。そしてこのような素晴らしい取り組みが認められて、1989年にノーベル平和賞を受賞されました。

以来、ダライ・ラマ法王は20年以上にわたって50カ国を超える国々を訪問して講演を行なわれ、さらに100冊を超える本を出版されるなどして、思いやりや非暴力、普遍的責任や世俗的倫理の必要性を説いてこられました。そのご活動は世界中の人々の励みとなり、こんにちでは150を超える名誉賞がダライ・ラマ法王に贈られています。

ダライ・ラマ法王が構想された中道のアプローチが中央チベット政権の正式な政策であることは現在も変わりません。中道のアプローチは中国人とチベット人の双方を長期的に利することを目的とした政策であり、中国人有識者はもとより世界中の政府や有識者、専門家の皆様から絶大な支持をいただいています。各国政府の中でも、とりわけ米国政府は中道のアプローチを強く支持する声明を出してくださっています。オバマ大統領は首脳会談において、習近平国家主席に対し、ダライ・ラマ法王あるいは法王の特使との対話に入るよう強く求めてくださいました。チベット問題を解決するには対話が必要不可欠であることを明確に伝えてくださったことは、われわれにとって大きな励みです。このようなご支援に、内閣はチベット人を代表して感謝の念を表明いたします。

ナンシー・ペロシ氏が率いる米国議員によるチベット訪問団もまた、中国当局に対し、対話に入るよう強く求めるとともにチベット本土における人権の現状について懸念を表明されました。また訪問団は、ダライ・ラマ法王が米国議会ならびにアメリカ社会において称賛を博されていることも中国政府に伝えてくださいました。同様に、訪問団の一員であるジム・マクガバン議員も、「訪問団と中国の役人との間に激しい口論が生じたので、“チベット問題においてダライ・ラマ法王は解決への道であり、中国が主張するような問題の種ではない”と伝えた」と述べておられます。

欧州連合(EU)の中国・チベット訪問団もまた、チベットにおける人権の現状について懸念を表明するとともにチベット問題の解決に向けて対話が必要であることを表明してくださいました。さらにドイツ連邦政府の人権政策と人道支援の担当委員であるクリストフ・シュトレッサー氏は、チベットを訪問した際に中国政府が偽りの現実を見せたとして強く非難しておられます。内閣は、米国議会ならびにEUの代表団の皆様がチベット人の人権を擁護してくださり、チベット問題の解決に向けて対話を支持してくださっていることに、心より感謝を申し上げます。

また、このほど習近平国家主席と台湾の馬英九総統がシンガポールで会見を持たれたことは、中華人民共和国・台湾間問題の平和的解決につながるのではないかと見守っています。

本日は世界人権デーでもあり、1948年に世界人権宣言が宣言されてから67周年を迎えました。しかしながら、チベット本土のチベット人の人権の状況は今なお悪化し続けており、お祝いできるようなことはひとつもありません。中国政府は白書の中で「チベットが黄金時代を迎えた」と述べていますが、実際は、経済的利得も基本的人権に基づく自由もチベット人には与えられていません。本土のチベット人は今も中国政府の独裁支配の下にあり、政治的抑圧、経済的差別、社会的差別、文化的同化、環境破壊に苦しみ続けているのです。2009年以降、142人のチベット人が焼身抗議をしているのは、明らかに、中国政府の抑圧政策や基本的人権に基づく自由の否認に対する抗議です。いわゆるチベット自治区の党書記である陳全国氏は先日、「 “ダライ・ラマ一派”を信奉し、隠れて宗教の教えを実践している党員と幹部を見つけだして厳罰に処さねばならない」と述べました。同様に、中国の国政助言機関である全国政治協商会議・民族宗教委員会の朱維群主任もまた、共産党員の宗教活動の禁止を明言しておきながら、「ダライ・ラマ法王の転生者を認定する権利は中国政府にある」と発言しています。理性があるならば、このような荒唐無稽な発言を受け入れる人はいないでしょう。次のダライ・ラマを選ぶ権利は、歴史に基づいても宗教に基づいても、現ダライ・ラマのみにあるのです。中国政府が腕力やお金を使ってチベット人の気持ちを変えようとしたところで、ダライ・ラマ法王が次のダライ・ラマを指名されるべきであるというチベット人の信念が揺らぐことはありません。

われわれ内閣は、パンチェン・ラマやチャデル・リンポチェをはじめ、政治犯として囚われの身にある何千ものチベット人を釈放するよう中国政府に求めています。また同時に、国際社会にも支援を呼びかけています。また内閣は、中国人でノーベル平和賞受賞者の劉暁波氏の釈放も求めています。チベットの環境を保護することもまた、最重要課題のひとつです。ダライ・ラマ法王は、世界気候変動会議(COP 21)に世界各国のリーダーが出席するのに合わせ、チベットの環境を守ることの重要性をチベットの最高宗教指導者という立場から切に呼びかけられました。その中で法王は、「この青い地球は私たちの唯一の家であり、チベットはその屋根である。チベットは南極と北極に次いで重要な第三の極である。よって、地球全体の健康と持続性を維持するには、チベット高原の環境を保護する必要がある」と伝えておられます。チベットでは大規模な森林伐採や何億ドルにも相当する鉱物資源の搾取、非科学的な方法による河川のせき止めなどによって甚大な環境破壊が起きており、とりわけ氷河の急速な融解はアジアに深刻な影響をもたらしています。チベット亡命政権の環境代表団は、パリで開かれた気候変動会議においてチベットの環境問題を広く認識してもらうよう呼びかけるとともに、さまざまな非政府組織(NGO)と意見交換を行ないました。COP21の開催に伴い、チベット人と支援者の方々によるキャンペーンが世界中で開催されました。参加してくださった皆様に、内閣よりお礼を申し上げます。

私たちのだれもが承知しているように、チベット人の民主主義はダライ・ラマ法王からの贈り物です。2011年に法王が政治的最高指導者としての権限を委譲されて以来、今年のシキョン(政治的最高指導者)ならびにチベット亡命政権議会選挙の重要性が高まっています。亡命社会の民主化が完成するにつれて、亡命チベット人が民主的プロセスに関わる機会も増えてきました。言論の自由は人間の権利であり、ソーシャルメディアはそのための方法のひとつです。とはいえ、言論の自由もソーシャルメディアも、心をひとつにしてチベット問題に取り組むために責任を持って活用しなければなりません。全般的に亡命チベット人は言論の自由や民主的な権利において十分に発達しています。しかしながら、このようなダライ・ラマ法王のはかり知れないご尽力にもかかわらず、そしてこれほどチベット人がダライ・ラマ法王に恭敬の念を抱いているにもかかわらず、根拠のない主張をする人がわずかながら存在します。内閣は、その少数の人たちは間違っていることを断言しておきたいと思います。

ご周知のように、2014年はダライ・ラマ法王への感謝の年でした。そして2015年は、われわれの最も尊き指導者である法王が80歳になられた年として、中央チベット政権はもとよりチベット人が皆でお祝いをしました。チベットの政治的大義、そしてチベット本土を離れてチベット文化を復活させるというダライ・ラマ法王がなされた功績は、チベットの人々の記憶と歴史に永遠に刻まれるでしょう。チベット人を代表して、内閣は衷心よりダライ・ラマ法王に感謝と尊敬の念を捧げます。

インドの中央政府ならびに州政府をはじめ、インドの皆様が何十年にもわたって亡命チベット人をきわめて寛大に支えてくださっていることも、内閣は決して忘れません。この場を借りて、インドの皆様に心からの感謝の念を捧げます。とりわけ、ダライ・ラマ法王と中央チベット政権をダラムサラという美しい丘の街に受け入れてくださっているヒマーチャル・プラデーシュ州政府と住民の皆様には深く感謝しています。国際ヒマラヤフェスティバルに参加する機会をいただいたことも、ありがたく思っています。また、チベット人と心をひとつにして支援してくださる、世界各国の政府や議会、指導者の皆様、チベット支援グループや非政府組織(NGO)の皆様に感謝を申し上げます。

最後に、われわれチベット人の最も尊き指導者である偉大なるダライ・ラマ14世法王に、ご健康とご長寿をお祈り申し上げます。ダライ・ラマ法王のすべての願いが速やかに成就され、人類に平和と幸せがもたらされますように。そして、チベット内外にいるチベット人が共に暮らせる日が一日も早く来ますように。

2015年12月10日

中央チベット政権
内閣


(翻訳:小池美和)