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ダライ・ラマ法王によるカーチャクラ灌頂 「世界平和の祈り2011」カーラチャクラ受法報告

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文:西岡 隆

仏教の経験は浅く予備知識も乏しいまま、初めてのカーラチャクラとして7月8日出発のチベットハウス・ジャパン主催ツアーに参加しました。会場はワシントンDC中心街にあるベライゾンセンターという屋内競技場で、両国国技館でのようにステージ上に祭壇と釈迦牟尼、カーラチャクラなどの大きなタンカ、そして砂曼荼羅の壇と大きな玉座がありました。15,000人は入る会場が前半は3分の2くらいの入りだったのが、後半の本灌頂の時期になるとチベット人が多数を占めるようになり90%以上が埋まったと思います。1階のアリーナ席は1,500ドルから10,000ドルの寄付をした施主の席でざっと見て2,000人以上はいたと思います。最終日の主催者の報告では160万ドル程の余剰が出て一部は日本の震災支援にも寄付されるそうです。私たちツアー参加者は周囲の階段状の一般席ですがステージのすぐ横の恵まれた席を頂き、かなり間近に拝見できました。会場内には大きなスクリーンもいくつかありダライ・ラマ法王の表情や読経・法要の様子がよく見えました。砂曼荼羅は最初の土曜日(9日)の朝には中央部(4層の最上階部分)のみ見えたのが、2日後の月曜日には全部完成するという早さで、恐らく寝ずに作られたものと思われます。最終日の砂曼荼羅の破壇とその後の壇を花で埋める浄めの儀式の最後まで見ることができました。会場外のすぐそばの路上にチベット屋台村が出現して土産物やチベット料理を提供していました。

大体午前中が法要で午後は法話か灌頂が行われるスケジュールで、朝6時半に市内のホテルを出てセキュリティの厳しい会場に入り夕方ホテルに戻るという毎日でしたが、合間には近くのスミソニアン博物館などにも行けました。毎日午後の法話の前には各国の言語で般若心経の読経を順番に行うことが恒例となり、4日目の火曜日に日本語の順番となりました。ツアー参加者14人が行うことになり、それも壇上で法王の玉座の真ん前に座って唱えるのですが、幸い個人参加の真言宗の僧侶の方に先導して頂くことになり、一同安心してお唱えできました。

10日間の日程の前半はカマラシーラの「修習次第」とトクメー・サンポの「37の菩薩の実践」をテキストにした前行法話で、基本から始めて、止観と禅定のレベル、二諦や唯識・中観2派ほかの見解など顕教に時間の大部分をさいてから、密教の要点を説明されました。高度な内容が速い速度で飛びだすことも多くよく理解できたとは思えませんが、聞き慣れた話もよく出て、後期密教の最高峰と言われるカーラチャクラの予備知識がわずかしかない者には仏教の土台から話が進むので安心感を持つことができました。ここでも漢訳の般若心経に「五蘊も“また”空」の部分が欠けているという話をされ、日本人向けとしてだけでなく、人無我と法無我を考える上で重要な部分なのだと改めて思いました。「入菩薩行論で最も重要なのは6章と8章。中論の後でこの9章を読むと混乱するかもね」と興味深いコメントもありました。

壇上では法王と共にチャド・リンポチェなどナムギャル寺の僧侶が法要と儀軌を進め、またカルマパ17世を始め、ガルチェン・リンポチェやカトック・ゲツェ・リンポチェなど高僧方も僧伽の代表で毎日座っておられました。ガルチェン・リンポチェの新しい映画の上映が別の会場で3回あり240人収容の会場が入りきれないほどの大人気でした。ご自身も上映前に短くご挨拶され「愛が大切ですよ」といつものように話され、映画自体もリンポチェの半生と前世そして今のご様子がよくわかるすばらしいものです。来年12カ国語でDVDが出るとのことで、日本語版も期待できそうです。20年過ごした刑務所内でケンポ・ムンセルから学ばれたトンレン瞑想のアドバイスが貴重でした。

カーラチャクラ灌頂が終わった時に法王は、「少なくとも会場の参加者はそれぞれ幸福感を持つことが出来たと思う。この前向きな力が地域、そして世界への良い影響となる。」と話され、法王の驚くべき知性と一体のユーモアにあふれた暖かさを間近に感じた私たちにはその通りだと思えました。翌最終日に砂曼荼羅破壇と浄めまですべて終わってからは「未来への明確なビジョンを持ちなさい。世界をよくしようという心を持つように」と力強く話されました。法王長寿祈願の際には、ご自身もみんなのために長生きしようと決意していると話されました。

余談ですが、私たちが到着した翌日の土曜日には朝の法要が終わると法王はキャピトル・ヒル(米国会議事堂)前の芝生のオープン会場に駆けつけ、2時間近く強い日差しの中で1〜2万人の聴衆に向けてメッセージを述べられました。法王到着前にはざわついていた会場が、法王が話し始めるとピタッと静まり、誰かが雑談しようものなら周りが注意するほどみな真剣に聞き入っていました。法王はいつものように宗教には関係なく内なる平和が大切であることを論理的かつ明快に話され、世界に影響力の大きいアメリカ人、特に若い人々に向けて今世紀を争いではなく対話の時代にしようと訴えた時など会場は大きな拍手に包まれていました。質疑応答も真剣なやりとりがあり解散後も賞賛の言葉があちこちから聞かれました。

カーラチャクラ灌頂「世界平和の祈り2011」ワシントン参加ツアーメンバー

今回の参加では、マリア・リンチェンさんの丁寧で機転を利かせた通訳のおかげで複雑な灌頂の進行に何とかついて行くことができました。また愚問にも丁寧に答えてくださり、受法後に大切な修法の資料も整理して頂いて本当に助かりました。同行された法王事務所のルントックさんにもたくさんの情報を頂き、みなとても参考になりました。ツアーガイドの谷奥さんも隅々まで目を配られ安心して過ごすことができて、受法に集中することが出来ました。また14名の参加者がそれぞれ個性的ながら利他心にあふれた方ばかりで協力的に行動を共にできて、実に気持ち良く楽しい旅となりました。個人参加の方々からも貴重な情報や助言を頂きありがとうございました。参加者みんなが共にダライ・ラマ法王の弟子になることができたわけで、今後とも助け合って仏教の理解を深め利他行ができるように学んでいきたいと願っております。