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ダライ・ラマ法王2009年来日レポート:3日目

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2009年11月 チベットハウスジャパン

2009年11月2日:四国入り


日本滞在3日目、ダライ・ラマ法王は東京から四国の高松に向かわれた。青空と雨雲が混ざる、いわゆる「狐の嫁入り行列」が見られそうな日であった。四国は、9世紀の僧侶、日本真言宗開祖の空海(諡号の弘法大師は仏教を広めた偉大な先生の意)の業績を称え、そのゆかりの札所88箇所を訪ねて歩く八十八箇所巡りで有名である。ダライ・ラマ法王はまず、弘法大師ゆかりの善通寺を訪ねられた。善通寺は、804年に唐に渡った弘法大師が、帰国の後6年かけて建立した寺である。弘法大師は留学先の唐から多数の教典や曼荼羅、印相などとともに、チベット仏教とも接点の多い密教を持ち帰った。善通寺は真言密教の総本山である。

善通寺では法主である樫原禅澄師がダライ・ラマ法王をお迎えになり、本堂の一つで読経が行われた。ダライ・ラマ法王は樫原禅澄師と寺や歴史について、殊に本尊の薬師如来について歓談された。法王もいろいろお話しになったが、中でも特にチベット仏教の問答修行について説明をされた。
「私は最近、この伝統に再注目するようチベット人に強く勧めています。もちろん最初はこの弁証法の対象は仏教に関することにとどまるでしょう。しかし少しずつ、少しずつ、仏教以外のことにも話題が広がっていけばいいと思っています。例えば現代科学といった分野にも。」

手の込んだ素晴らしい寺の昼食をいただき、境内にある他の建物をごらんになった後、ダライ・ラマ法王は車で1時間ほどの萩生寺を訪問された。強い風の吹く曇り空の午後、現地に到着されたダライ・ラマ法王を大勢の人々が出迎えた。日本人、中国人、モンゴル人そして西洋人。その多くが「タシデレ!」と叫びながらチベットの国旗を振った。法王はまず、その日初めて公開されたチベット式仏塔の開眼供養に臨まれた。場所を寺の中に移し、法王は他の住職らとともに般若心経を唱えられた。その後、高野山真言宗管長の松長有慶師および四国4県の仏教会の代表とともに簡単な記者会見が行われた。

その後ダライ・ラマ法王は別室で松長管長と活発な討論をされた。法王は初めナーガルジュナと弘法大師についていくつも質問をされていたが、そのうちに、明らかに楽しまれているご様子で、管長との論理的な討論に入っていかれた。「ここにある茶碗に心があるとしよう。この茶碗に罪を犯すことはできるだろうか?」「では一房の髪に心はあるのか?」「生物とは何か?無生物とは何か?これらの物に命が宿っていたとしても、果たして心はあるのだろうか?もしそうだとすると、昼に茶碗2杯のご飯を食べていた時、私は300粒の米一つ一つを殺していたということか?そうだとすると、これから私は石を挽いて食べなくてはならなくなる!」

ダライ・ラマ法王は確かに楽しまれたご様子で、このようにくつろいで哲学的なやり取りを楽しめることは少なく、今回その機会を作ってくれた四国仏教会と松長管長に対し、大変感謝している旨を伝えられた。そして、滞在先のホテルに向かうため寺を後にされた。

ナムギャル・チュルテンの開眼供養
左から萩生寺住職斉藤友厳先生、ダライ・ラマ法王、高野山真言宗管長松長有慶師
ダライ・ラマ法王がチベットを亡命されて50年・ノーベル平和賞を授与されて20年の年に
四国を初めて巡錫された記念と世界平和を祈念して建立されたナムゲル・チュールテン
(チベット式ストゥーパ)の開眼と法王と四国主催者一行と記念写真

 


(訳者:中村貴子)